産経WEST for mobile

【メガプレミアム】“疑惑のデパート”メキシコ高速鉄道が“脱線” キレた中国「金返せ!」

記事詳細

“疑惑のデパート”メキシコ高速鉄道が“脱線” キレた中国「金返せ!」

メガプレミアム更新

 メキシコの高速鉄道計画が迷走の末に事実上頓挫し、波紋を広げている。中国企業がいったん落札したが、撤回されたあげく、メキシコのペニャニエト政権に対する贈賄疑惑など大スキャンダルに発展し、世界中から批判が殺到。追い込まれたメキシコ政府は原油安と財政難を理由に計画そのものを棚上げした。しかし、高速鉄道の本格的な海外進出プロジェクトのモデルにと期待していた中国側は激怒し、補償を求める騒ぎに拡大している。

<< 下に続く >>

「豪邸」で抱き込み?

 世界のインフラ整備事情に詳しい国際金融機関幹部は「計画自体が頓挫することもあり得ると思っていたが、まさか、こんな“理屈”をつけてくるとは…」と肩をすくめる。

 メキシコ政府は1月30日、2015年予算からの歳出の2・6%削減などを柱とする財政緊縮策を発表した。発表自体は予想されていたが、市場を驚かせたのが、緊縮策に同国が鳴り物入りで導入しようとしていた高速鉄道計画の棚上げが含まれていたことだ。

 ペニャニエト政権は、原油安による財政悪化を受けた措置だとしているが、額面通りに受け取る関係者は多くはない。

 メキシコの高速鉄道計画は、メキシコ市と中部の都市ケレタロを最高時速300キロで結ぶもので、経済成長を牽引する柱として、ペニャニエト政権が各国から参画する業者を募った。

 三菱重工や川崎重工、ドイツのシーメンス、米国のゼネラル・エレクトリック(GE)など世界の名だたる企業が動いたが、昨年11月の入札には中国鉄道建設総公司が率い、中国の車両メーカーの中国南車が中心となるコンソーシアム(企業連合)のみが単独応札し、落札した。

 だが、その後、入札準備期間が短かったり不透明な手続きの実態が入札を断念した業者から暴露された。中国企業とペニャニエト政権が密約していたとする“八百長疑惑”までささやかれ、議会などメキシコ国内でも批判が高まり、とうとう政府は「入札手続きの透明性と合法性を確保する」として、異例の再入札に追い込まれた。

 ところが、スキャンダルは収束するどころか、むしろ膨らんでいく。中国企業のコンソーシアムに参加しているメキシコ企業が、ペニャニエト大統領夫人の400万ドル相当の大豪邸の名義人になっていた問題が発覚。入札をめぐっても大統領に近い業者に有利な取り計らいをしたのではと報じられた。メディアや世間の批判に耐えかねた夫人は豪邸を手放す意向を表明したが、あろうことかビデガライ財務相まで同じ企業から豪邸をプレゼントされていたことが判明したのだ。

 そこに、再入札でもやはり中国企業のコンソーシアムが受注する見通しと、メディアなどで報じられ、ペニャニエト政権への視線はいよいよ厳しくなった。

 「このまま再入札を強行すれば、国内のみならず国際的な信用も失いかねない」(前出の国際金融機関幹部)とみたペニャニエト政権が、“財政難”を理由として高速鉄道計画自体の棚上げを決断したとする見方が、市場に広がっている。

メンツつぶれた?

 だが、この決着におさまらないのが、せっかくの落札をほごにされた中国だ。しかも、プロジェクトに実際に参画する中国企業そのものより、後ろ盾となる中国政府が猛烈に怒っているようなのだ。

 中国国家発展改革委員会は直ちに、メキシコ政府の高速鉄道計画先送りについて、「遺憾だ」とコメントを発表。中国外務省の報道官も「中国企業の法的権利を守ってほしい」とメキシコ政府に注文を付けた。

 さらに、ロイター通信によると、中国鉄道建設総公司はメキシコ政府に対して、補償金の支払いを要求した。請求額は明らかになっていないが、事実上の賠償請求といえ、資金調達関連の費用や、入札に参加する際にかかったコンソーシアム参加企業の従業員のホテル代まで含まれているという。中国政府も、「落札に向けて多額の金を投じた企業への適切な対応」をメキシコ政府に求めている。

 これに対し、メキシコ政府側は補償の裏付けとなる領収書などの提出を求めているようだ。今後のメキシコ側の出方次第では、補償協議がこじれ、2国間の外交問題に発展する可能性もないとはいえない。

 一方、中国の鉄道車両大手の中国北車は2月11日、河北省にある工場を国内外の報道陣に公開。技術力の向上に取り組んでおり、今後も車両の海外輸出を増やす方針を強調した。

 中国の強みは価格競争力で、海外勢に比べて建設コストが圧倒的に低い。その一方で、中国では2011年に、浙江省を走る高速鉄道で多数の死傷者が出る死亡事故が発生。中国の技術や安全性への懸念がぬぐえないとの指摘も多い中、安全性と技術力をアピールする狙いがあるとみられる。

 中国はメキシコだけでなく、トルコでも高速鉄道事業に参画しているほか、ロシアやインドでも高速鉄道計画への協力を表明。インフラ輸出を通じて経済関係を拡大し、国際社会での存在感を高めようという思惑がみえるだけに、メキシコでのつまずきは痛手といえそうで、メンツをつぶされたいらだちもうかがえる。(2015年2月23日掲載)

■産経ニュースが日々お届けするウェブ独自コンテンツの「プレミアム」。人気のあった記事を厳選し、【メガプレミアム】として再掲します。人物の年齢や肩書き、呼称などは原則として掲載時のままとなっております。