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【ビジネスの裏側】「なぜマリオを持ってこない」任天堂に失望コメント続々…スマホゲームのどこに新機軸?

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「なぜマリオを持ってこない」任天堂に失望コメント続々…スマホゲームのどこに新機軸?

ビジネスの裏側更新

 現実の街を舞台に動き回ってプレーできるスマートフォン向けゲームが来年、配信される。アニメやゲームのキャラクター、ポケットモンスターのライセンスを管理するポケモン(東京)が開発中の「ポケモンGO(ゴー)」。衛星利用測位システム(GPS)などの位置情報を利用した新感覚ゲームだが、注目されるのは開発に参加する任天堂の存在だ。歩きスマホで過度に画面に集中するのを避けるため腕時計サイズの操作デバイスを制作したほか、新機軸として人気のマリオ版などの登場に期待がかかる。(牛島要平)

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歩きながらプレー

 9月10日、東京で開かれたポケモンの新事業戦略発表会。登壇した同社の石原恒和社長が「ポケモンGO」のPR映像を紹介すると、詰めかけた報道陣が目を見張った。

 PR映像は、プレーヤーがスマホを手に屋外を歩くと、空間にポケモンが動き回るバーチャル映像が浮かび上がり、プレーヤーはポケモンを捕まえたり、プレーヤー同士でポケモンを動かしてバトルを繰り広げたり…といった内容だ。

 実際のゲームは、プレーヤーの位置がスマホの画面に反映され、プレーヤーが歩きながら画面内のポケモンを追いかけるなどして楽しめる。従来のゲームが画面上で手を動かすだけにとどまっていたのに対して、体全体でゲームに参加できる点が魅力だ。

 ポケモンシリーズはゲームの世界でポケモンを集めて育て、友人との交換や対戦が楽しめる。石原社長は「ポケモンが現実のコミュニケーションのきっかけになっている」と指摘する。石原社長が、そんなポケモンの次の構想を練っていたところ、米グーグルから独立した米ゲーム会社「ナイアンティック」が手がけるスマホゲーム「イングレス」を知り、「ポケモンと共通する哲学」を感じた。

 「イングレス」はGPS機能を駆使し、プレーヤーの周囲にある現実の観光名所などを訪れながら、画面上で自分の陣地を広げていく陣取りゲームで、世界で累計1300万回以上ダウンロードされている。石原社長はナイアンティックに共同開発を持ちかけ、今回の「ポケモンGO」のプロジェクトが本格始動した。

岩田氏も熱意

 忘れてはならないのは開発に参加した任天堂だ。今回のプロジェクトには2年間にわたり、7月に急逝した任天堂の岩田聡前社長が加わっており、石原社長は説明会の冒頭、「本来なら、今日ここで一緒に発表したいと考えていました」としのんだ。

 その後の記者会見では、「岩田さんとはスマホとゲーム専用機の相乗効果について議論を重ねていた」とも語った。任天堂がまだ参入していないスマホ向けゲームの開発に生前の岩田氏は並々ならぬ熱意を持っていたようだ。

 「ポケモンGO」への任天堂の関与はこれだけではない。スマホの画面を見ながら歩く危険性が指摘されていることから、石原社長は任天堂に対し「スマホの画面を見続けなくても『ポケモンGO』を遊べる専用デバイスはできないか」と持ちかけた。そこで任天堂が制作したのが、腕時計サイズの「ポケモンGOプラス」。スマホ端末と連動してボタンを押すなどしてプレーできる。

 任天堂とポケモンはグーグルと共同でナイアンティックに計2千万ドル(約23億8千万円)を出資し、位置情報利用ゲームの開発に本腰を入れていることがうかがえる。

任天堂のスマホゲーム第1弾には落胆広がる

 それだけに任天堂がソーシャルゲーム大手のディー・エヌ・エー(DeNA)と資本業務提携して共同開発を進めるスマホ向けゲームにも「GPSを活用するのでは」と期待が高まっていた。

 ただ、任天堂が10月29日に東京で開いた経営方針説明会で発表した同社初のスマホ向けゲームアプリは、位置情報を使った最新型でもなく、「スーパーマリオブラザーズ」や「ゼルダの伝説」のような人気IP(知的財産)が登場するものでもなかった。

 説明会で披露されたのは「Miitomo(ミートモ)」だ。自分の似顔絵から作成したキャラクター「Mii(ミー)」が投げかけてくる質問に答えることで、友人と話題を共有できるというもの。説明会では君島達己社長が「新感覚のネタふりコミュニケーション」と紹介した。

 「Mii」は同社が平成18年に発売した据え置き型ゲーム機「Wii(ウィー)」から登場し、任天堂ファンにはおなじみ。任天堂らしさが感じられる内容ではあるが、無料通信アプリ「LINE(ライン)」などと似ている印象は拭えなかった。

 特に海外のインターネットサイトを中心に失望の声が上がった。米ゲーム情報サイト「TouchArcade(タッチアーケード)」ではツイッターの反応として、「がっかりだ」「これはゲームなのか」「任天堂はどうしたんだ」などと否定的なコメントが並んだ。

 アプリの配信が当初の「年内」から来年3月に延期されたこともあり、東京株式市場での任天堂の株価は説明会前の2万3千円台から、10月30日には1万9千円台まで急落した。24年3月期~26年3月期に3期連続の営業赤字となった任天堂は反転攻勢のためスマホ参入に舵を切っただけにファンや投資家の冷淡な反応は痛い。

 落胆の声には「なぜ楽に稼げるスーパーマリオを持ってこないのか」などもあり、“マリオ人気”の根強さを示す。

 君島社長は10月28日、大阪市内で報道陣に「(位置情報利用のゲームを)どう取り入れていくか、まだ具体的なものはない」と答えるにとどまった。

 ただ、マリオの生みの親で同社のソフト開発を指揮する宮本茂専務は「IPの活用で大きな収益を挙げる野望はある」と語る。29年3月までにスマホ向けゲームを5本程度出すとしており、GPSを活用した「マリオでGO(ゴー)」のようなスマホゲームが登場するか。任天堂の新機軸として期待されている。