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【経済裏読み】「タクシーより快適」世界でお騒がせの「ウーバー」が新サービス…“摩擦”回避の新戦術とは

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「タクシーより快適」世界でお騒がせの「ウーバー」が新サービス…“摩擦”回避の新戦術とは

経済裏読み更新

 スマートフォンを活用した配車サービスで世界中で話題を集めている米ウーバーが、新事業に乗り出し注目を集めている。運転手と客が自動車をシェア(共有)する名目で配車する「ライドシェア」で、日本でも大学と組み試験運行を始めた。タクシー会社の反発や当局からの風当たりが強まる中、規制と摩擦を回避したい思惑のようだが、物議を醸しそうだ。

 運転手の評価も

 「すごい体験だ。知らないおじさんが迎えに来てくれた」、「便利で、普段乗るタクシーより快適」

 ウーバーが2月から福岡市周辺で始めたライドシェアを利用した客がブログなどでつづった感想だ。

 ライドシェアの仕組みはこうだ。まず、客がスマホの衛星利用測位システム(GPS)を活用したアプリで、近くで車を走行中の(ウーバーと提携している)一般のドライバーを探す。依頼を受けたドライバーは客を迎えに行き、目的地に運ぶ。支払いは通常クレジットカードで行うが、日本ではまだ試験運行中ということで無料。その代わり、ウーバーがドライバーに報酬を支払う。

 利用可能なエリアは福岡市、春日市、志免町、糟屋町の2市2町に限られ、乗車時間は60分以内、1週間に5回までという条件はあるが、冒頭に紹介したようにおおむね好評のようだ。

 ウーバーは、やはりスマホを活用してハイヤーを配車するサービスを世界規模で展開しているが、ライドシェアはあくまで個人同士が一般の自動車を共有するという建前をとっている。ただ、ウーバーもドライバーの採用にあたって運転履歴を審査し、レストランのように5段階の星で客が評価する制度を導入するなど、サービス向上に注意を払っているとしている。

 ウーバーはすでに米国でライドシェアを始めており、日本でも試験運行の反応を見ながら、本格導入について判断する構えだ。

 高まる批判

 ウーバーは、最高経営責任者(CEO)のトラビス・カラニック氏が創業し、2010年に米サンフランシスコでサービスを始めた。スマホの普及に加え、タクシーがあまり通らない地域でも手軽に車が拾えると評判を集め、国によって配車の形態に違いもあるが、今では世界50カ国以上でサービスを展開している。日本でも平成25年から東京で試験的に配車サービスを始めている。

 ウーバーの強みはまだある。客にアプリを提供し、情報をドライバーに送るが、ウーバーはあくまで「仲介者」との立場だ。ドライバーから仲介料を受け取って収益にしているが、運輸当局に規制されるタクシー会社にはあたらないと主張している。このため国によっては低料金を売り物にしたり、逆に米国では高級車のドライバーを集めて高付加価値をアピールしたりと、機動的な営業戦略が可能になっている。

 今やウーバーは新興企業としては世界最大規模にまで成長。時価総額は約400億ドルに達している。

 だが、創業当初と違い、成長すれば摩擦も増える。まず客を奪われたタクシー会社やハイヤー会社が「実質的な“白タク”営業だ」と怒り出し、昨年6月にはロンドンやパリなど世界の大都市で大規模デモを実施し、ウーバーに抗議した。

 業界にたきつけられる格好で、当局もウーバーへの監視を強め始めた。オランダやスペインなどで営業停止処分が相次ぎ、本国の米国でもロサンゼルスの地検が、ドライバーの審査情報などの公開が不十分としてウーバーを提訴した。

 事故やトラブルが起きた場合の責任の所在や対応も、乗客にとっては気がかりなところだ。インドではドライバーが女性客をレイプする事件まで発生。これまでウーバーの味方になってきた市民からも風当たりが強まり始めている。

 経営も過渡期に

 カラニックCEOが「われわれはタクシー会社という愚か者を相手に政治運動を繰り広げてきた」と言い放つように、ウーバーはこれまで、「敵とみなすすべての人に対して攻撃的なアプローチをとる」(英紙フィナンシャル・タイムズ)姿勢を続けてきた。

 だが、狭まり始めた感もある“包囲網”にさすがに動揺も隠せないのか、ウーバーも新たな事業展開も模索し始めているようだ。

 たとえば東京では、配車にあたってタクシー会社など既存の業者と提携しているため、トラブルなどはこれまで起きていない。

 ライドシェアも新機軸のサービスで、日本では九州大学に運行データなどを提供し、都市交通の研究に役立ててもらう社会実験の形態もとるなど、イメージ向上の戦略がみてとれる。

 配車という古くからあるサービスを、インターネットやスマホなどITを駆使して“革新”してみせたウーバーの取り組みを評価する声も少なからずある。ITジャーナリストのファハド・マンジュー氏は米紙ニューヨーク・タイムズのコラムで、「さまざまな企業がウーバーのビジネスモデルをまねしようとしている」と指摘する。

 経営規模が大きくなり社会的な注目が高まれば、求められる責任も増す。ウーバーも、今後は企業としてより成熟した姿が市場から問われることは間違いなく、過渡期を迎えつつあることは確かなようだ。