産経WEST for mobile

【大阪から世界を読む】「立ち小便」を放水で撃退、6億2000万人がトイレのない“IT・経済大国インド”の実態…疾病、性犯罪の温床にも

記事詳細

【大阪から世界を読む】「立ち小便」を放水で撃退、6億2000万人がトイレのない“IT・経済大国インド”の実態…疾病、性犯罪の温床にも

更新

 IT産業を中心に経済成長を続け、「経済大国」への道を歩むインドだが、実は国民の半数が自宅で排尿・排便ができない「トイレ難民」だという。その数は実に約6億2千万人。そこで街中で立ち小便する男たちに対し、放水を浴びせる団体が登場した。国連児童基金(ユニセフ)は「うんちは屋内で」と題したキャンペーンを展開。さらに屋外トイレでは男女が隣り合わせで用を足すこともあり、レイプの温床となっているとの指摘され、先の総選挙でもトイレ不足が話題となったという。

(大谷卓)

線路脇で、街中で立ちション、排便は当たり前…

 「何よりもまずトイレを、寺院建設はその後で」

 英フィナンシャル・タイムズやハフィントン・ポスト(いずれも電子版)によると、5月16日開票のインド総選挙で勝利したインド人民党(BJP)の首相候補だったナレンドラ・モディ氏(現首相)はある会議の席上、こう述べたとされる。

 BJPは、ヒンズー教至上主義との関係が強い政党だが、その政党の首相候補をしてこう述べさせるほど、インドのトイレ事情は劣悪だ。世界銀行によると、インドでは全世帯の53%が屋外で排泄行為をしている。

 米CNN(電子版)は、インド政府の国勢調査のデータとして、国民の53・2%が携帯電話を持っている一方で、トイレ付の家に住んでいる人は46・9%に止まると指摘。3千人規模のスラム街の小さな家には、衛星テレビや冷蔵庫などがあるにもかかわらず、トイレがある家は1軒もないと皮肉っている。

 自宅にトイレがない人はどうするのか。

 CNNによると、首都ニューデリーのスラム街では、住民が毎朝、線路脇に集まり、用を足す。列車の通過に動じることなく、排尿、排便を平然と済ます。だから街中で立ち小便をしたり、しゃがみ込んで排便したりする様子は日常的にみられる。

 そうした現状に立ち上がったのが、「クリーン・インディアン」という団体。黄色い車体に立ち小便禁止のマークをつけたタンク車で街中を巡回。排尿する男を見つけると、すぐに放水し、撃退している。

 動画投稿サイト「You Tube」で流されている映像によると、壁際で立ち小便をしている男たちを車からの放水で“退治”。男たちはあまりの水勢にひっくり返ったり、うずくまったり。びしょ濡れになりながら、必死にズボンを上げようとする男もいた。

肝炎、ポリオ…そしてレイプ被害

 立ち小便撃退の放水はさておき、劣悪なトイレ環境はインド国内で様々な問題を巻き起こしている。

 ユニセフなどによると、トイレのない学校に通っている児童・生徒は約2800万人。屋外のトイレなど劣悪な衛生環境は、A型肝炎やポリオ(小児まひ)などの原因となっているほか、子供たちの4割が栄養失調に陥っている要因だとされる。

 健康面だけでない。犯罪の温床になっているとの指摘もある。ハフィントン・ポストがその実態を伝えている。

 ニューデリー北西部にあるブホールスワに住むヘルマさんは、村にある2つの共同トイレの利用者だ。トイレは一日1千人が利用する。女性たちは最も安全な時間帯である早朝、集団でトイレを利用しにくるが、それでも被害に遭う女性は少なくない。

 共同トイレを利用する女性たちは普段からからかわれ、建設作業員らに拉致され、性的暴行を受けることもあるという。

 また、住民300人に1つの共同トイレがあるニューデリー郊外の村に済む若い女性は「男たちはトイレの周辺に群がり、手を伸ばしてきて触ったりする」と話している。

 このほか、男女が隣り合わせで用を足すようなトイレや、屋根が低く、ほとんど丸見えのようなトイレがあるといい、犯罪の温床になっているとの指摘がある。

「うんちは屋内で」

 こうした事態に対する取り組みも始まっている。

 ユニセフ・インド支部は「プー・パーティ」というビデオを制作。「排便は屋内トイレで」というキャンペーンを行い始めた。「プー」はうんちの意味で、ビデオでは道路や公共の建造物などを占拠するうんちと、市民グループが対決するストーリーだ。「トイレで排便しよう」というフレーズが繰り返し歌われ、防止を喚起している。

 インド国内で下水処理施設がある都市は多くなく、あるNGOは、低価格の水洗トイレを開発、1970年以降、貧しい地域を中心に提供している。

 日本では平成24年11月に大阪府交野市の空き地で、維新の会の大阪府議のポスターに向かって男が立ち小便をしているのを、たまたま通りかかったこの府議が発見。交野署に通報される騒ぎになった。

 また立ち小便をめぐっては、プロ野球の阪急ブレーブスで活躍したある有名選手が国民栄誉賞を打診され、「そんなんもろうたら立ちション(小便)もできんようになる」と断ったという「逸話」もある。

 いずれにしろ、立ち小便は非衛生的で、しかも犯罪に問われる行為。インドで、立ち小便をする男たちに放水を続ける団体「クリーン・インディア」は、不届きな男たちに対しこう掲げているという。

 「お前たちが立ち小便をやめれば、我々も放水をやめる」

ランキング