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【ベテラン記者のデイリーコラム・平松澄子の麗しの歌劇】月組娘役トップ・愛希れいか 華麗なる転身 「ミー&マイガール」でヒロインのサリーに挑戦

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【ベテラン記者のデイリーコラム・平松澄子の麗しの歌劇】月組娘役トップ・愛希れいか 華麗なる転身 「ミー&マイガール」でヒロインのサリーに挑戦

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娘役→男役→娘役

 ロンドン・ミュージカルの名作「ME AND MY GIRL(ミー&マイガール)」が、宝塚歌劇団月組の選抜メンバーにより5月4~20日、大阪市北区の梅田芸術劇場メインホールで上演される。ロンドン初演は1937年と古いが、日本では87年に宝塚が月組で初演して以来、再演を重ねている人気作で、今回で7度目になる。トップスター・龍真咲が演じる主人公ビルの恋人、サリー役は娘役トップの愛希れいか。男役から転向して次々にヒロインの大役に挑んでいるが、「サリーはあこがれの役。ハッピーなミュージカルで、何度も見た大好きな作品です」と喜んでいる。

 愛希は福井県坂井市出身。3歳ごろからクラシックバレエを習っており、宝塚歌劇を初めて見たのは小学校低学年のとき、宙組の「エクスカリバー~美しき騎士たち~」だったという。「地元に来た公演を母と見たんです。そのときから好きになったんですが、高校受験のときに宝塚も受験できることを知って、チャレンジしました」と、1回で合格した。

 2007年に宝塚音楽学校入学。1年目の予科生は娘役だったが、2年目の本科生では男役に転向した。「入学したときは背が低かったんですが、本科生になると背も伸びたので、男役に挑戦してみたくなったんです。自分でも何でそんな気持ちになったのか、今振り返ってもわからないんですが、音楽学校時代でしか経験できないことだと思って転向しました」

 歌劇団には09年に男役として入団。月組に配属され、2年目には「THE SCARLET PIMPERNEL」のルイ王太子役に抜擢されるが、次の「ジプシー男爵」では初めて娘役のヴォルガを演じた。「真咲さんの恋人役だったんです。それまで周囲から娘役転向をすすめられたこともあったんですが、私はそんな気はなかった。でも、真咲さんだけは“絶対に娘役の方がいい”とはっきり言ってくださったんです。その言葉が大きかったですね」

 再び、11年5月30日付で娘役に転向する。「すっごく悩んだんです。予科生のときすら大変だったことを、もう一度やるなんて。でも、私が理想とする、背がスラッと高くて、ダンスがうまくて、大らかな男役像とは、自分があまりにかけ離れていた。逆に娘役での夢がどんどんふくらんで、舞台人として役の幅を広げるうえでも、娘役の方がいいのではと決断しました。真咲さんには真っ先に報告したんです」

異例のスピード出世

 それからは、まさにトントン拍子。同年8月に「アルジェの男」新人公演のサビーヌ役で初ヒロインをつとめる。「それまでセリフも歌も、ほとんど経験がなかったので、ただただ驚きました。あこがれの蒼乃さん(夕妃=当時の月組娘役トップ)の役だったのはうれしかったけれど、不安でしようがなかった。相手役の紫門(ゆりや)さんに助けていただいてばかりでしたね」。続いて11月の宝塚バウホール公演「アリスの恋人」でも初ヒロインに抜擢される。「この公演も無我夢中で、主演の明日海(りお)さんにお世話のかけっぱなし。でも、だんだん頑張ろうって気持ちになってきました」

 そしてついに昨年4月23日付で、龍の相手役として月組の娘役トップに就任するという、異例のスピード出世を果たした。トップのお披露目公演がまた、フランス・ミュージカル「ロミオとジュリエット」のジュリエット役という大役のうえ、主演のロミオ役は龍と明日海の役替わりだった。

 「予測できない事態が次々に起きて、驚きがずっと続いている感じ。いつでも相手役さんに助けられて、なんとか舞台に立つことができたんです」。まれに見る幸運は、すさまじいプレッシャーとの引き替えだったようだが、若さと成長力で乗り切り、評価を高めていく。

ちょっとしたことがすべて違う

 全国ツアー公演「愛するには短すぎて」「Heat on Beat!」を経て、今年の1~3月には宝塚を代表する大ヒット作「ベルサイユのばら-オスカルとアンドレ編-」でロザリー役を演じた。この作品は龍と明日海がタイトルロールを役替わりで演じたため、娘役の出番は少なかったが、また違った苦労があったそうだ。「あまりにもできなくって。舞台に出ていない間の気持ちを、次の出番につなげていくのが難しかった。娘役への転向の大変さは、何がってわからないぐらい、ちょっとしたことがすべて違っていて、いちいち立ち止まって考えてしまいます」

 そして今度は、これまた大ヒット作「ミー&マイガール」のヒロイン、サリー役である。「マイ・フェア・レディ」の男性版ともいわれる作品。1930年代のロンドンを舞台に、下町のランベスで育った名門貴族の青年ビルが、跡継ぎとして一人前の紳士になるまでを、恋人サリーとの恋模様をからめて描くロマンチック・コメディー。サリーは明るく心優しい下町の娘で、身分違いとわかったビルとの仲をあきらめて身を引くが、アッと驚く粋なラストでハッピーエンドを迎える。「ランベス・ウォーク」では客席を巻き込んでのパフォーマンスも楽しい。

 「私の1期上の先輩の初舞台が“ミー&マイ”だったので、何度も何度も見ました。どんな役でもいいから出演したかったので、すごくうれしいです。これまで悲劇の作品が多かったので、パッピーなミュージカルで、真咲さんと近い距離で恋人のお芝居をさせていただけるのもうれしい。サリー役は私に合っていると言われるんですが、いい意味でみなさんのイメージを裏切るような表現をしたいと思っています」と意欲的に取り組んでいる。将来の抱負は「伝統を大切にしつつ、自分らしさの可能性をいろんな方向に広げていきたい」と語った。

平松澄子平松澄子
産経新聞大阪文化部編集委員。夕刊フジ大阪編集部、産経新聞東京文化部などを経て、宝塚歌劇団、OSK日本歌劇団、劇団四季など主にミュージカルを中心にした舞台取材を行っている。

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