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【「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記】変則日程必至の今季、開幕ダッシュに問われる知力と戦力

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今年2月の練習試合で選手交代を告げる阪神・矢野燿大監督。異例のシーズンは知力、戦力が問われる(撮影・水島啓輔)
今年2月の練習試合で選手交代を告げる阪神・矢野燿大監督。異例のシーズンは知力、戦力が問われる(撮影・水島啓輔)

 全てが異常日程&異常ルールの中で、阪神は試練を乗り越える「知力と戦力」が試されます。新型コロナウイルスの感染拡大でシーズン開幕を延期していたプロ野球は東京都など5都道県の緊急事態宣言が解除されるのを待って、25日にも6月19日開幕を正式発表します。しかし、移動時の感染リスクを防ぐため、開幕直後はセ・リーグは関東地区、パ・リーグは西日本地区に6球団を集結させて試合を行い、夏場には試練の9連戦を組む方向です。さらに、疲労が新型コロナウイルスの感染を招く…という危惧からベンチ入り枠を昨季までの25人から30人前後に拡大する案も急浮上しています。「2020年特別ルール」に備えて、虎は牙をむかなければなりません。

5都道県の宣言解除で…

 新型コロナウイルスの感染者数は累計で世界では500万人を超え、死者数は33万人を上回りました。現在はブラジルやペルーなど南米大陸で感染は急拡大しています。日本国内は感染者数は1万6506人、死者は814人(横浜クルーズ船を除く=全ての数字は22日時点)と、世界に比べると感染者数も死者数も比較的少ないですが、それでも多くの尊い命が失われたことには変わりはありませんね。亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、ご家族の皆様方にお悔やみ申し上げます。

 この恐ろしい感染症は日本のスポーツの世界にも大きな影響を及ぼしました。高校野球の甲子園大会はセンバツに続き、夏の全国大会も中止となりました。すでに高校総体も中止になっていて、今年が高校最終年となる3年生の選手やその家族の方々の気持ちを考えると、言葉もありません。

 プロスポーツもラグビーのトップリーグやバスケットのBリーグが中止。ゴルフのトーナメントも男女ともにずっと中止や延期。言うまでもないことですが、今年のスポーツの最大のイベントだった東京五輪も来年7月23日開幕に1年延期されていますね。

 こうした異常事態の中で、日本のプロ野球はやっとシーズン開幕への光を見いだしつつあります。日本野球機構(NPB)は22日、Jリーグと連携する「新型コロナウイルス対策連絡会議」の第8回会合を行った後、12球団代表者会議をオンライン形式で行いました。協議を終えた斉藤惇コミッショナー(80)は「(東京都など5都道県の)緊急事態宣言が解除されれば(開幕日も)お話しできるのではないか」と発言。すでに12球団で合意している6月19日の金曜日にシーズンインすることを、5都道県の解除予想日の25日にも正式発表する流れを示唆しましたね。

第2波、第3波も頭に入れて

 まさに異常事態の中で行おうとするプロ野球のシーズンイン。これまでこのコラムでは、12球団代表者会議などの議論の中身を書いてきましたが、状況の変化によって決定事項もまるで生き物のように変化していきます。6月19日開幕を想定し、6月2日~14日まで3連戦を4回、しめて12試合の練習試合を行うことは確定的です。しかし、当初は12球団が一致して実施を希望していたクライマックス・シリーズ(CS)はセ・リーグが中止を決定しました。パ・リーグは継続審議中ですが、中止も視野に入ってきました。

 「消化試合をなくしたいのでCSはぜひともやりたい」と以前は語っていたある球団首脳はこう明かしました。「シーズン120試合として、全試合を消化したい。厳しい日程でCSと通常シーズンの試合のどっちを選択するか?となれば、通常シーズンの試合数の確保となったんだ。パ・リーグも中止の流れになるのでは…」と語りましたね。

 たとえ6・19に開幕できたとしても、新型コロナウイルス感染の第2波や第3波の到来で、シーズンが途切れることも頭に入れておかなければなりません。ならば、シーズンの消化が危機的な状況となります。まずは120試合(ホーム60試合)をやり遂げる…ことが最優先です。そうした観点からCSの中止が決まったのです。

 さらに開幕後もシーズンの日程やルールは“異常事態”を反映したものになります。まず開幕後の2週間はセ・リーグは関東地区、パ・リーグは西日本地区にそれぞれ6球団が集結して試合を行います。2020年の公式戦日程表は開幕直後は完全に練り直しです。

 6月19日の開幕となれば阪神は本拠地・甲子園球場での巨人3連戦でした。これも覆るわけです。2週間でMAX12試合として、阪神は通常は敵地の東京ドーム、神宮球場、横浜スタジアムで“ホームゲーム”も行うことになるでしょう。

 感染症の専門家チームからの「移動時の感染リスクを極力減らしてほしい」というアドバイスを受け入れる形でシーズン日程は大幅に練り直されるわけです。2週間を終えた後、今度はセ・リーグ6球団が西日本に移動して試合を行い、パ・リーグが関東へ…という方式で現在、新しい日程表が急ピッチで作成されています。

特別ルールのオンパレード

 そして、開幕日の大幅な延期の影響で、過密スケジュールも余儀なくされます。パ・リーグでは同一カード6連戦を検討中ですが、セ・パ共通でありそうなのが夏場の9連戦ですね。酷暑の夏に9連戦…。

 また、専門家チームからは「感染症は体力が落ちて、免疫力が低下すると忍び寄ってくる。いくら体力のあるプロ野球の選手といえども過度な疲労は避けるべきだ」という提言も受けています。選手個々の健康面に例年以上に配慮しなければなりません。そこで選手の過労を防ぐために「ベンチ入り枠の拡大」というプランが急浮上しているのです。現状は1軍登録枠29人→ベンチ登録枠25人ですが、ベンチ入りの選手数を30人前後に拡大するプランです。まさに「2020年版・特別日程&ルール」のオンパレードですね。

 そこで阪神です。シーズン120試合として、通常の143試合からは23試合減です。“短期決戦”の鉄則は開幕ダッシュです。これもこのコラムで書きましたが、かつて前期・後期制だった時代(2リーグ分立後は1973年~82年)のパ・リーグ各球団は、何より開幕ダッシュに神経を使っていました。開幕から出遅れると挽回のチャンスが少ないので、よーいドンで素早く上位にいなければなりません。逆転優勝は厳しいのです。

 現状の日程作成の中身を見れば、開幕後の阪神は関東地区に2週間。この期間のMAX12試合で負け越せば、苦しい展開が待ち受けます。なので矢野監督ら首脳陣は超変則日程の中で、開幕ダッシュに必ず成功しなければなりません。

 夏場の9連戦もポイントです。とにかくその時までに先発ローテーションを確立しておかなければなりません。先発の駒を夏場までに築き上げておく必要があります。いずれも矢野監督の手腕が問われるでしょうね。知力が試されます。

 また、ベンチ枠が拡大されるとなれば、一人でも多くの1軍戦力が求められます。投手の1軍登録枠を11~12人としても先発投手は“上がり”の投手が5人程度はいるでしょう。となれば投手のベンチ入りは1試合6~7人のはずです。あとの22~23人は野手となるのです。ベンチ枠25人ならば18~19人ですから、野手は例年よりも4~5人多くベンチに入る計算になります。となれば、どれだけ野手で使える選手が多いか…が試合の行方に大きく影響します。試合の行方に影響する…ということはシーズンの行方を決めるということですね。総合的な戦力の厚みが問われます。

 シーズンインまであと3週間と少し…。矢野阪神はこれらの課題を乗り越えるべく、チームを急ピッチで整えなければなりません。知力と戦力が例年以上に問われるシーズンとなりますね。

【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) 1990(平成2年)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。

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