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【「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記】試合開催でも赤字が増える…重荷の選手年俸どうするか

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オンラインで記者会見するプロ野球の斉藤惇コミッショナー=11日午後
オンラインで記者会見するプロ野球の斉藤惇コミッショナー=11日午後

 支配下選手枠70人→40人という強烈リストラ策も飛び交う中、阪神は巨人と同一歩調の来季148試合制の提唱です。安倍晋三首相は14日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急事態宣言について東京、大阪など8都道府県を除く39県で解除しました。それを前に、プロ野球は11日の12球団代表者会議と12日の臨時オーナー会議で延期していたシーズン開幕日について「最短6月19日の開幕を目指す」ことを決定。いよいよ6・19開幕でシーズン120試合、クライマックス・シリーズは開催という骨格が完成しました。しかし、各球団の経営が深刻な状況に直面する中で選手の年俸問題は暗中模索ですね。阪神はここでも巨人と二人三脚の姿勢なのです。

パも阪神、巨人に追随

 シーズン開幕日が延期されていた日本のプロ野球が、やっとシーズンインへのロードマップを完成させましたね。11日の12球団代表者会議と12日の臨時オーナー会議を経て、全球団は「最短6月19日の開幕を目指す」ことで合意しました。このコラムでは緊急事態宣言の期限が5月6日から31日に延期された後も、巨人と阪神、阪神と巨人という東西の人気球団が6月19日開幕に強くこだわっていることを書きました。プロ野球の黎明(れいめい)期から球界の牽引(けんいん)役だった両球団が6・19を目指すことで一致し、セ・リーグの他の4球団も追随。当初は懐疑的だったパ・リーグ6球団も最終的には阪神と巨人の6・19案に合流したのです。

 6月19日の金曜日にシーズン開幕を目指すプロ野球はその前後の日程や方針も固めました。まず6月2~14日までの2週間で3連戦を4回、しめて12試合の練習試合を行います。すでに発表されていますが、5月26日~6月14日で開催予定だったセ・パ交流戦(全108試合)は中止。オールスター戦(7月19、20日)もフレッシュオールスター戦(7月13日)も中止。12球団が一致して「消化試合をなくすために必要」というクライマックス・シリーズは試合数を削減(ファースト1試合、ファイナル4試合案)してでも実施する方針です。

 さらに野球協約には「120試合(ホーム60試合)を消化することで1シーズンと成す」との意味の条文がありますが、12球団代表者会議では「新型コロナウイルスの感染拡大という非常事態においては野球協約の思想こそ尊重するものの、さまざまな問題については臨機応変に対応する」ことも合意されました。なのでシーズンイン後の球団内クラスターや、本拠地の地域の状況に応じて試合数を120試合以下に抑えることも視野に入れながら、前に進むことも確認されました。

開幕に向けては踏み出したが…

 安倍首相は14日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急事態宣言について、北海道、千葉、埼玉、東京、神奈川、京都、大阪、兵庫の8都道府県を除く39県で解除しました。宣言が続く特定警戒都道府県についても、21日をめどに専門家の評価を受けた上で「可能であれば31日を待つことなく解除する考え」とも安倍首相は語りましたね。プロ野球の12球団のうち8球団が8都道府県を本拠地としていて、まだまだ予断を許さない状況が続いているのは確かですが、日本野球機構(NPB)と12球団はシーズン開幕に向けて大きく前に足を踏み出したのです。

 しかし、日程面の状況が進んでも、全く前に進んでいないのが選手の年俸問題です。このコラムでは「試合数減+無観客で年俸大幅削減は避けられない、選手は重大覚悟を」(4月26日アップ)、「七夕開幕も“球界の常識”通用しない世界が待つ、それでも夢と希望を与えてほしい」(5月3日アップ)で2週にわたって球団経営の危機的状況の中で選手の年俸の大幅削減案が浮上することを指摘しました。

 実は12日に行われた臨時オーナー会議は「ほぼ議論の内容はコレ。選手の年俸問題だった」とある球団首脳は漏らしました。そして「さまざまな意見が出て、12球団の思惑の違いが如実に出た。最後まで統一した答えは出なかった。経営者サイドから選手会に示す案も現時点では一つには絞れていない」という“結論”なのです。

 実際、臨時オーナー会議終了後、記者会見を行った議長役のDeNA・南場智子オーナー(58)は「プロ野球は、かつてない危機的ともいえる状況です。(球団の)減収のインパクトは大きい。(球団は)親会社の補填(ほてん)で成り立つのではなく、経営基盤の充実というのは大変に重要な問題」と苦悩をにじませて、選手の年俸削減の問題が議題で出たのか?という質問に「現在の状況が苦しいというのは皆さん、共有している。その中の一つの要素として話題には上がった」と話しました。

 議論はしたが、結論は出ない…。空転した議論の中身をやんわりと明らかにしたと言えばいいでしょうかね。

試合開催でも赤字が増える?

 シーズンの試合数が143→120としても23試合減。その後は無観客試合を続け、ある程度の時期から間引き入場に移ります。それも収容人員の20~30%の入場者数です。マツダスタジアムなら3万3千人なので20%となると6千600人です。入場者収入は壊滅的な数字で、テレビの放映料もバブル期とは比べ物にならないほどの金額ですね。場内販売も縮小され、むしろ球場を開けることによる人員配置の人件費やナイターの照明代、そもそも自前の球場でなければ球場使用料などが球団経営を圧迫します。つまり試合を消化しても球団は赤字の金額が増え続ける…という最悪パターンですね。

 これに選手の年俸が覆いかぶさるわけです。今年のプロ野球の12球団の年俸総額は401億3210万円です。1位はソフトバンクの65億2680万円、2位は巨人で43億3070万円です。阪神は4位の32億620万円。12位のロッテでも24億7590万円ですね。12球団を平均すると約33億円の年俸を各球団は支払っているわけです。

 かつてプロ野球の各球団は独立独歩で経営していたわけではありません。むしろ球団経営が黒字の球団の方が珍しかった時代があります。球団の赤字をオーナー会社が宣伝広告費として補填するケースが多かったのです。しかし、ここ数年はパ・リーグのフランチャイズ化が確立したこともあって赤字経営の球団はほとんどなかったのです。

 しかし新型コロナウイルスの感染拡大で球団経営は破滅的な状況。さらに親会社も影響を受け、DeNAは2020年3月期決算で純損益が491億円の赤字。通期の赤字は05年2月の上場以来、初めてです。阪神タイガースの親会社である阪急阪神HDも19年度(20年3月期)決算で減収減益を発表しました。つまり球団の親会社も新型コロナウイルスの影響をモロに受けているのです。

 当然ながら球団経営の“重荷”となってくる選手の年俸の削減案が浮上するのは自明の理です。そして、注目すべきは選手の年俸問題についても、12球団代表者会議と臨時オーナー会議の中で巨人と阪神、阪神と巨人は同一歩調を取っていることです。

 その案は「今季の年俸はそのまま支払い続け、オフの契約更改も通常の査定で増減を決める。今季の減収減益を取り返す意味で、来季以降のシーズン試合数を143から148試合以上に増やす」というものでした。つまり、赤字分を来季以降の試合数増で取り返す案なのです。

 しかし、球界全体では巨人と阪神の案に難色を示す球団が多数あります。今季だけでも50億円から60億円となる球団の赤字をオーナー会社が受け止められない…という経営基盤の差があるからです。臨時オーナー会議では「選手会と年俸削減で交渉すべきだ」という声が噴出し、「このままでは球団経営を続けられない。来季の支配下選手を70人から40人に削減することも視野に入れるべきだ」という強烈なリストラ案を提案する球団もあったといいます。

 まさに百花繚乱(ひゃっかりょうらん)の議論の先行きは不鮮明です。ただし、選手会は経営者側の回答を待ち構えています。阪神と巨人、巨人と阪神が率先して実現する6月19日のシーズン開幕。その先の年俸問題でもTGの意向が12球団の統一見解になるのでしょうか。事態は混沌(こんとん)としています。そして、年俸問題を解くキーパーソンは阪神球団に存在するのかもしれません…。

【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) 1990(平成2年)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘、星野仙一監督招聘を連続スクープ。

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