PR

甲子園中止でも地方大会は…「最後の夏」球児の思い届くか

PR

大阪・履正社の初優勝で幕を閉じた昨夏の甲子園大会=令和元年8月、兵庫県西宮市(桐原正道撮影)
大阪・履正社の初優勝で幕を閉じた昨夏の甲子園大会=令和元年8月、兵庫県西宮市(桐原正道撮影)

 新型コロナウイルスの感染拡大が、球児たちが憧れの聖地に立つ機会をまたも奪ってしまうかもしれない。甲子園球場(兵庫県西宮市)で8月10日開幕予定の全国高校野球選手権大会が、中止される可能性が高まっている。日本高野連は20日に運営委員会を開いて協議するが、春の選抜に続いて夏の選手権も中止となれば、戦時中の中断を除けば初めての事態だ。「最後の夏」に懸けてきた3年生は、このままグラウンドでプレーすることなく高校野球を終えてしまうのだろうか。  (高校野球取材班)

迫るタイムリミット

 「各都道府県が休校措置の解除、部活動の開始、対外試合の取り扱いなど今後どのような対応がなされるかを含め、情報収集に努めたいと思います」。政府が緊急事態宣言を39県で解除したことを受け、日本高野連の小倉好正事務局長は14日、こうコメントを発表した。

 コメントからは状況を静観しながら開催への機運を探る構えにもみえるが、外堀は埋まりつつある。

 4月26日には、同時期に開催予定だった全国高校総合体育大会(インターハイ)の中止が早々に決定。全国大会は参加する生徒の移動や長期の宿泊を伴い、感染リスクが高い。しかも甲子園球場がある兵庫県は、いまだ緊急事態宣言が解除されていない8都道府県の一つだ。

 平成7年の選抜大会は阪神大震災のわずか2カ月後に開催された。その際の日本高野連事務局長だった田名部和裕氏は「25年前は震災発生から2カ月がたち、世間の人たちに明るい話題への渇望感が起こってきたのが開催への後押しになったと思う」と振り返る。

 だが今夏の場合、授業が満足に行えていない状況で部活動を優先すれば、世間からの批判は避けられない。さらに、開幕までに49代表校が出そろうには、7月中旬には全地方大会が始まっている必要があり、タイムリミットは着々と迫る。ある高野連関係者は「感染を押さえ込む観点からすれば、まだレッドゾーン。球児にはかわいそうだが、全国大会の開催が難しいのは当たり前だろう」と指摘する。

3年生の活躍の場は

 「中止ならショックだ」。昨夏の甲子園で16強入りした敦賀気比(福井)の中野洋一郎部長は、こう肩を落とす。寮で生活する部員は全体練習の自粛中も帰省せず、甲子園を目指してできる範囲で準備を進めてきた。「3年生にとって最後の夏。昨年の甲子園でも投げた3年生の笠島、松村、岩田に力があるので、甲子園で上位を目指していた」

 今春の選抜大会が史上初の中止となっただけに、有力校が今夏に懸ける思いは強い。「最後の夏」となる3年生はなおさらだ。今春の選抜大会出場校に選ばれていた広島新庄の宇多村聡監督も「甲子園を目指して一生懸命練習してきた。その成果が発揮できない可能性があると思うと、残念で仕方ない」と落胆を隠せない。

 甲子園で春夏4度の優勝を誇る龍谷大平安(京都)の三条場裕之部長は「試合をすればベンチに部員18人が入ることになり、感染リスクは拭えない。甲子園大会の開催は無理だろうと思っていた」としながらも「最後に3年生が活躍できる場を用意してあげたい」と願った。

地方大会を8月に

 ただ、甲子園大会とは違い、地方大会は都道府県高野連が主催する。夏の甲子園が中止となり、全国への切符を懸けた予選という形ではなくなっても、開催することは可能だ。しかも皮肉なことに、8月10日の甲子園開幕までに優勝校を決めるという制約がなくなれば、日程的には余裕ができる。

 例年、全国で最も早く地方大会を始める沖縄県高野連は、開幕を当初予定の6月20日から延期することを決めた。岩崎勝久会長は「スタンドで応援する親の前で野球をさせてあげたい。甲子園大会がなくなるのなら、沖縄大会を8月上旬までずらすことも考えている」と話す。

 もちろん、地域差はある。全国で唯一、新型コロナウイルスの感染者が出ていない岩手県では5月7日に学校が再開され、部活動も行われている。県高野連の大原茂樹理事長は「岩手大会の中止は考えていない。感染防止のためこれまでの運営スタイルを見直した上で、なんとか7月に実施できるようにしたい」と無観客で開催する方針を示した。

 一方、感染者が5千人を超える東京都では、部活動再開の見通しは立っていない。それでも都高野連は開幕を遅らせて東東京、西東京大会を開催することを決めた。武井克時理事長は「都の大会は必ず行い、子供たちの気持ちを支えたい」と強い決意を示した。

この記事を共有する

おすすめ情報