PR

【「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記】週明けの会議に注目、開幕日は阪神&巨人の思惑通りとなるか

PR

2002年のオーナー会議で話し込む巨人の渡辺恒雄オーナー(左)と阪神の久万俊二郎オーナー
2002年のオーナー会議で話し込む巨人の渡辺恒雄オーナー(左)と阪神の久万俊二郎オーナー

 6・19シーズン開幕で阪神は巨人と同一歩調。直近で“暗闘”があったにもかかわらずビジネスパートナーの絆は揺るぎません。新型コロナウイルスの感染者が1万5553人(クルーズ船乗船者を除く=7日現在)となり、政府は緊急事態宣言の期限を5月6日から5月31日に延長。「連休明けぐらいに開幕日を決めたい」とする斉藤惇コミッショナーの発言も6日の宣言解除が大前提だったので、雲行きが怪しくなってきました。球界は週明けの11日の12球団代表者会議と12日のオーナー会議で新たな開幕日を論議しますが、阪神と巨人は当初の目標だった6月19日開幕を強く主張しているのです。舞台裏を書きましょう。

 ■先行き見えないプロ野球

 新型コロナウイルスの猛威はとどまる気配がありません。米国での死者数は7万3千人を上回り、英国でも死者数は3万人を超えました。日本でも感染者は1万5553人、死者は590人(クルーズ船乗船者を除く=数字は全て7日現在)。ロシアやブラジルでも感染者は急増しており、世界の感染者は累計で370万人超となっているのです。日本国内は欧米などに比べて感染者を抑制できているものの、全く油断はできない状況ですね。

 安倍晋三首相は4日に緊急事態宣言の期限を6日から31日に延長しました。14日に行う感染者数の動向といった専門家の分析を踏まえて、一定の基準を満たせば31日の期限よりも前に都道府県ごとに段階的に解除する意向も示しましたが、全く先行きの見えない状況には変わりありません。

 先行きの見えない…のは日本プロ野球も同じです。シーズンの開幕(最初は3月20日)を延期した時点での新たな開幕日は4月24日を想定していました。しかし、国内の感染者数の増加などで4月中の開幕を断念しました。4月7日に緊急事態宣言が発令されると、宣言の期間が5月6日までだった時点では「5月上旬の連休明けぐらいには開幕日を決めたい、という気持ちは強く持っている」と斉藤コミッショナーは発言していました。

 この間、数回に及ぶ12球団代表者会議などでシーズン開幕に向けたさまざまな議論が交わされました。5月26日から開催予定だったセパ交流戦(全108試合)の中止を決定し、7月19日と20日に行う予定だったオールスター戦(ヤフオクD、ナゴヤD)の中止も決めました。選手の管理、待遇面でも「コロナ特例」(PCR検査で陰性だった場合は10日以内に1軍再登録できる)の扱いや、フリーエージェント(FA)権取得期間(現在は1シーズン=145日で算出)の短縮、トレード期限(現行7月31日まで)の延長などが話し合われてきたのです。

 ■宣言延長で揺らぐXデー

 しかし、全ての始まりともいえるシーズン開幕日については現時点で「宙に浮いている」と表現してもいいかもしれません。緊急事態宣言が31日まで延長される前の段階では「6月中旬ぐらいには…」という声が球界首脳から漏れてきました。具体的には交流戦明けのシーズン再開日だった6月19日の金曜日です。交流戦も球宴も中止する中で、全国の野球ファンに一日でも早く野球を見せたい…という思いから6月19日がXデーとして定められていたのです。

 それが緊急事態宣言の延長で、大きく揺らいでいるのです。仮に期限前に段階的に解除されたとしても、感染者の86%が東京や大阪などの「特定警戒都道府県」に集中していて、12球団中8球団の本拠地がある地域と重なります。なので、フランチャイズの解除は5月末までずれ込むことが濃厚でしょう。となれば、解除からわずか20日未満の時期にシーズンが開幕できる? 当然ながら否定的な声が出るのは仕方ありません。

 そうした状況下、あくまでも6月19日のシーズン開幕にこだわっているのが阪神と巨人。巨人と阪神なのです。ある球団首脳は話しました。

 「阪神と巨人は今でも6月19日開幕にこだわっていますよ。セ・リーグの他の4球団も巨人と阪神に同調する姿勢です。パ・リーグ6球団は慎重な姿勢です。11日の12球団代表者会議と12日のオーナー会議で開幕日についても話し合われるでしょうけど、結論が出るかどうかは疑問です。選手会の反応もあるでしょうから…」

 阪神と巨人…。ここで思い出してほしいのです。コラム(4月5日アップ)で書いたのですが、両球団の首脳は3月27日に行われたセ・リーグ臨時理事会の場で一触即発の激論を展開したばかりです。出席者の谷本修球団副社長兼本部長と巨人の首脳が大激論を戦わせ、「谷本氏は興奮状態に陥り、テーブルをドーンとたたいて巨人に猛反論していた」と他球団の出席者は証言していました。

 谷本副社長は選手関係委員会の委員長です。ブレークスルードラフト(大リーグのルール5ドラフトの日本版。飼い殺しの選手を救済するドラフト会議。今季中の開催予定が結果的に延期となった)の条文を取りまとめていましたが、巨人側から「戦力の均衡」という文言があることにクレームを付けられたことが、論争の発端でした。中央球界のテーブルで巨人と阪神が“激突”することは極めて珍しく、球界首脳たちは驚いていました。

 ■巨人と共同歩調のDNA

 巨人と阪神は2リーグ分立(1950年)以降も、東と西の人気球団として球界を牽引(けんいん)した関係です。グラウンドでは強烈なライバル意識で戦う一方で、球団の安定的な経営を継続するために水面下では手を握り合って、球界の方向性を定めてきた歴史があるのです。巨人の渡辺恒雄オーナー時代は球界の重大案件の方向性を定める際、事前に密使を阪神・久万俊二郎オーナーのもとに送り、巨人の考え方や結論を伝え、協調態勢を続けてきました。

 蛇足ですが、渡辺=久万の“伝書バト”の慣習には思わぬオチもありました。あれは堀内恒夫監督で巨人がBクラスの5位に沈んだ2005年の晩夏です。阪神は岡田彰布監督の下で2年ぶりのリーグ優勝を飾った年ですね。巨人は2003年に抜本的なチーム改革を成し遂げ、阪神を18年ぶりのリーグ優勝に導いた星野仙一さん(当時は阪神SD)の招聘(しょうへい)に乗り出していたのです。連日のように大きく報道される中で、読売系のスポーツ紙のベテラン記者が“取材”で久万宅の玄関のチャイムを鳴らしたのです。

 いつも渡辺氏(当時は球団会長)からの密使が来る慣習があるので久万さんは完全に勘違いしました。

 「巨人から使いが来ましたよ。星野さんを…という話だったので、どうぞコチラは構いません…とお伝えしました」

 スポーツ各社に久万さんがそう話したので、星野巨人監督就任は既成事実のような報道となり、騒ぎに拍車がかかったのです。これは“取材”を“密使”と勘違いした久万さんの錯覚で一連の報道に渡辺氏は大激怒したことがあります。今では笑い話ですが…。

 話を戻します。ブレークスルードラフトではやりあった阪神と巨人でしたが、今回のシーズン開幕日については6・19で同一歩調です。ブレーク…はあくまでも選手の待遇改善という球団経営的には枝葉の問題なのかもしれません。一方でシーズン開幕日の決定やその後の無観客試合→超間引き入場者試合は球団経営の根幹をなす問題ですね。こうした次元の違うテーマにおいては、やはり阪神と巨人、巨人と阪神は手を携えて同じ方向を向くのです。これが1リーグ時代(1936年が大阪タイガースの初年度シーズン)を含めると90年近く、巨人と球界を引っ張ってきた阪神のDNAなのかもしれませんね。

 さて、週明けの11日の12球団代表者会議と12日のオーナー会議ではどのような議論になり、その時の阪神と巨人、巨人と阪神の発言はどのようなものになるでしょうか。今季の開幕日は6月19日で着地しますかね?…。

     ◇

 【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) 1990(平成2年)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘、星野仙一監督招聘を連続スクープ。

この記事を共有する

関連トピックス

おすすめ情報