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【「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記】見えない開幕、選手は年俸削減の可能性を直視すべき

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今年3月、甲子園で汗を流す阪神ナイン。試合数減少の先にあるのは…(撮影・岡田茂)
今年3月、甲子園で汗を流す阪神ナイン。試合数減少の先にあるのは…(撮影・岡田茂)

 衝撃の年俸カット率を提示!? 虎戦士たちは今から覚悟を固めておかなければならないでしょう。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて開幕(当初は3月20日)を延期している日本野球機構(NPB)は23日にJリーグと第6回の「新型コロナウイルス対策連絡会議」を開催。その後の12球団代表者会議で「開幕後は当面、無観客試合を実施」することを合意し、注目の「開幕日は6月中旬以降」とすることも確認しました。コラムで書いた6・19を軸に調整するようですが、いまだに議題にも話題にも上がらないのが「試合数減+無観客開催」で焦点となる選手の年俸削減問題です。なぜベールに包まれているのか…。虎戦士も重大覚悟が必要です。

書くことがない

 以前のコラムで書きましたね。スポーツのない世界はわれわれスポーツ関連のマスコミを“絶滅危惧種”にする…と。今回のコラムがアップされる4月26日の日曜日、本来のスケジュールでいうなら阪神は中日3連戦(ナゴヤドーム)の3試合目を戦っています。雨天中止がなかったならば、開幕から32試合目なのです。すでに開幕ダッシュに成功したか否かがクッキリと見えてくる時期でしたね。

 それが…。新型コロナの感染拡大を受けて全国に緊急事態宣言が発令され、全国民が不要不急の外出の自粛を求められています。人との接触を8割減らすように求められ、ほとんど全ての経済活動が止まり、スポーツはプロアマの垣根なくイベントの延期、中止に追い込まれています。野球もサッカーもラグビーもゴルフも…何もない。となるとスポーツを扱うマスコミは書くことがない。全てのスポーツ紙を見ても苦心している様子が紙面からにじみ出ています。最悪なことに苦労して作った紙面でもやはり面白くない…。最悪です。

 こうした異常事態の中、プロ野球はそれでも全国の野球ファンに一日でも早く試合を見せたい、という一心で開幕日と試合方法を模索しています。23日に行われたJリーグとの第6回の「新型コロナウイルス対策連絡会議」では、感染症の専門家チームのアドバイスを受けながら今後の指針を定めました。それは(1)5月6日が期限となる「緊急事態宣言」が予定通り解除となることを条件として、新たな開幕日を5月11日以降に決めること(2)当初は斉藤惇コミッショナーが「個人的な感覚だが最後の最後の選択。ほとんどあり得ないに近い」と話していた無観客試合で開幕時はスタートすること-などです。

 新たな開幕日については5月26日から開催予定だった全108試合のセ・パ交流戦を中止し、交流戦明けのペナントレース再開日だった6月19日がひとつのポイントになっていることをコラムでも書きました。しかし、5月6日とする緊急事態宣言の解除日が延期された場合は、さらに開幕日も7月以降にずれ込む可能性もあるでしょう。無観客試合開催にかじを切った背景は新型コロナの状況が鈍化傾向に転ずるならば、無観客でも6・19あたりを開幕日に定めたい、というNPBの考えが見え隠れします。

試合数→減収の先に

 さて、ここまで球界の舞台裏を書いていて、大事なことに触れていないことは賢明な読者の皆さまもお気づきのはずです。例えば6・19開幕が実現し、交流戦削減分を引いた(143-18=125)としても、シーズン全体の試合数は大幅に削減となります。現状の予測ではシーズン100試合前後とみてますが、そうなれば、なおさら試合数は43試合近く減ります。さらにシーズン開幕から当面、無観客試合となると球団&球場収入は致命的な減収となりますね。当然ながら出てくる議論は選手の年俸の削減案です。

 海の向こうの大リーグでも、経営者側と選手会側で厳しいやり取りを行っています。3月末のMLB機構と選手会の取り決めでは、試合数が短縮された場合は162試合からの(削減された)割合で年俸を支払うことで一度は合意しました。しかし、シーズンを無観客で開幕する案が浮上する中で、経営者側は改めて追加の年俸削減案を求める方向になってきました。「3月の合意は無観客を想定していなかった」という理由ですね。当然ながら選手会は猛反発で、着地点は見えていません。

 そこで日本のプロ野球ですが、23日の12球団代表者会議の終了後、斉藤コミッショナーは試合数の大幅減&無観客試合開催に伴う選手の年俸削減に関して「今日はそういう話題は出ていない」と話しました。前回の17日の代表者会議の後も選会と協議する可能性すら言及を避けていました。

 誰が聞いても首をかしげます。球団経営の根幹となる選手の年俸問題については、シーズンの開幕時期や試合形式などを論ずるのと並行して話し合わなければならないはずです。あくまでも推定の金額ですが、2020年の12球団の球団総額年俸は1位のソフトバンクが65億2600万円、2位は巨人の43億3000万円で3位が阪神の34億円ですね。一番少ない中日でも24億8000万円となっています。もしシーズンの試合数削減&無観客なら、こうした巨額の年俸を球団側はとても支払えません。 

12球団温度差、どちらに振れるか

 では、12球団代表者会議では実際、選手の年俸問題についてどんなやり取りがあるのか-。ある球団の首脳は苦しそうな表情で話しました。

 「本当のところ、まだ12球団の足並みがそろっていないんだ。選手会は経営者側の提示を待ち構えているのだが、経営者側の意見が一致しない。かなりの強硬意見もあれば、それではファンや世間の反感を買うのでは…という意見もある。統一見解が出せないから、コミッショナーも『議題にも話題にも出ていない』と言うしかすべがないんだ」

 つまり選手たちに対する年俸削減案には12球団で温度差があって、現状では選手会とテーブルに着く態勢が整っていない…というのが実情なのだそうです。

 果たして経営者の振り子はどちらに振れるのか…。あくまでも第三者として現状を見る限り、最終回答は厳しいものになるような気配がありますね。

 プロ野球を1試合興行すれば、チケット収入やテレビの放映権料、球場内販売などで約1億円の収入があるといわれています。もし143→100試合なら単純計算で43億円の減収です。しかも、球団には自前の球場を持たない限り、本拠地といえども球場使用料がかかります。阪神などは甲子園球場が自前の持ち物なので救われますが、巨人などは東京ドームに年間40億円以上を支払っている、といわれています。試合を行っても無観客なら、収入大幅減+支出は同じ=ダブルパンチで球団経営は深刻な赤字転落、という非常事態に陥ります。

 となると、答えは選手に対するかつてないような大幅な年俸削減案になるでしょう。阪神の選手たちもこうした事態が目の前に来ていることを察知し、心構えをしておくべきでしょう。モチベーションの維持という精神論だけではなく、実際の高額な住宅ローンや家族の生活費や学費など、家計を直撃しますね。あまりにも衝撃的なので、コミッショナーや12球団経営者は議論さえ水面下に隠して、表に出していないと見るべきです。新型コロナは選手たちの生活をも困窮させます。大変な国難ですね。

【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや)

 1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。ラジオ大阪(OBC)金曜日午後9時からの「週末ワイド“ラジオ産経”」(http://www.obc1314.co.jp/bangumi/san/)での『サンスポのスポーツよもやま話-軍師と鬼筆の野球が好きだ!』のコーナーや、土曜日午後7時45分からの「まさと・越後屋のスポーツ捕物帳!」(http://www.obc1314.co.jp/bangumi/okini/)に出演中。「サンスポ・コースNAVI」(http://www.sanspo.com/golf/tokushu/golf-t24944.html)ではゴルフ場紹介を掲載、デジタルでも好評配信中。

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