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【野球がぜんぶ教えてくれた 田尾安志】自らを律し、前を向く 

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打撃練習する阪神・梅野=甲子園(球団提供)
打撃練習する阪神・梅野=甲子園(球団提供)

 プロ野球は、かつてないほどの難局を迎えている。今季をどうするのかの見通しは、立っていない。球団施設での自主練習を取りやめたチームもある。だが、自宅でもできることはあるはず。選手は先が見えない状況でも気力の源を見つけ、前を向きながら自分を伸ばしていくべきだ。

 日本の野球界ではかつて、器具を使ったウエートトレーニングをする選手はいなかった。「肩が冷えるから」と、プールで泳ぐこともなかった。昨年亡くなった金田正一さんは走り込み中心の練習で、前人未到の400勝を挙げた。

 いつの世も、傑出した選手は必ずいるもの。器具がなく、環境も整っていないから、トレーニングできない-では、プロの考え方としては甘いのではないか。縄跳びでもいいし、自転車をこぐのもいい。どういう状況でも、最善を尽くさないといけない。

 与えられた練習メニューをスケジュール通りにこなす。それだけで、結果が出て評価される。そんな受け身の環境で育ち、プロ入りした選手もいるだろう。

 僕の場合は幸運?にも弱小の野球部出身。ほとんどのスケジュールを、自分で考えなければならない環境だった。強豪校に練習試合を申し込んでも、受けてくれなかった。「同じ年齢のヤツにばかにされたくない」という反骨心が、猛練習にかり立てた。今の若い選手たちには、どうか日常生活を自ら律してほしい。そして、不自由な暮らしの中でも、気持ちを切らさずにいてもらいたい。

 選手にかぎらない。家で我慢を強いられている人たちもそうだ。特に高齢者の中には「年を取り、仕事もリタイアしたから」と何もしないまま、ただ時が過ぎていくのを待っている人もいるのではないだろうか。

 100キロマラソンを9時間半で完走した76歳の人に会ったことがある。フルマラソンも3時間あまりで走ったと聞き、驚いた。何かひとつ、打ち込めるものを見つけるのが、人生を豊かに過ごせる秘(ひ)訣(けつ)だと思う。

 長い人生には思い通りにいかないときもある。だが、それをどう受け止めるかが大切。苦しいときを一生懸命に前向きに過ごすことで、楽しいときの充実感も増す。僕は釣りが趣味だが、いつも大漁だと面白くない。何も釣れないときがあるから、たくさん釣れたときの喜びが大きくなる。

 苦しい状況を、どう力に変えるか。マイナス思考に陥り、自分が崩れてしまってはいけない。

(野球評論家)

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