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【「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記】コロナ明けの過密日程、阪神が主張すべきは外国人の1軍枠撤廃

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打撃練習をするジャスティン・ボーア。外国人8人制が奏功するかも=甲子園球場(撮影・甘利慈)
打撃練習をするジャスティン・ボーア。外国人8人制が奏功するかも=甲子園球場(撮影・甘利慈)

 外国人8人体制が思わぬ形で功を奏する!? 新型コロナウイルスの感染拡大で、安倍晋三首相は7都府県を対象に出していた緊急事態宣言の範囲を全国に拡大しました。異常事態に包まれる中、開幕日を遅らせ今後の対応を練る日本野球機構(NPB)と12球団の経営者は17日に、オンラインによる会議を開催。「コロナ特例」の扱いや、フリーエージェント(FA)権取得期間(現在は1シーズン=145日で計算)の短縮、トレード期限(現行7月31日まで)の延長-などが話し合われました。現時点で新たな開幕日を6月19日と見定め、シーズン100試合を想定してさまざまな課題に取り組もうとしている球界の激動…。一連の流れの中で、なぜ虎の外国人8人体制を注目するのか-。舞台裏を書きましょう。

陰性なら再登録可

 ついに新型コロナウイルスの感染者が国内で1万人を超えました。これは16日夜の段階で発表されたデータですが、国内での感染者は9276人。クルーズ船の乗船者712人、チャーター機帰国者14人を含めると1万2人(死者204人)となり、感染拡大の勢いは収まっていません。安倍首相は7都府県を対象に発令した緊急事態宣言を全国に拡大し、新型コロナを押さえ込もうとしていますが、まだまだ先の見えない戦いが続いています。

 日本プロ野球界もシーズン開幕(当初は3月20日)を延期。新型コロナの感染状況を見ながら、今度の対応策を模索しています。この間、3月27日には阪神の藤浪、伊藤隼、長坂の3選手の新型コロナへの感染が判明(すでにPCR検査で陰性が出て退院)。球界OBでも近鉄、日本ハムなどで監督を歴任した梨田氏や前阪神ヘッドコーチの片岡氏の感染が判明するなど、球界にも新型コロナの恐怖が現実的に見え始めています。

 まさに大混乱の状況下でも、球界は2020年シーズンの開幕に向けてさまざまな課題に取り組んでいます。NPBは15日にはオンライン会議で協約・ドラフト改定委員会を開催。新型コロナの感染拡大を受けての「コロナ特例」を協議しました。PCR検査を受けるため出場登録を抹消されても、陰性ならば既定の10日間を待たずに再登録を可能とする。抹消期間もFA資格日数に加えることや、FA取得日数の短縮、トレードや新戦力獲得期限の延長なども検討されました。こうした議論をたたき台にして17日には12球団代表者会議が開催されました。

 井原敦事務局長は「委員会の考えを取りまとめた」と話し、注目される新たなシーズン開幕日については「23日の代表者会議に(話し合いが行われることに)なると思う」と話しました。

1軍枠拡大が話題に

 しかし、一連の選手の契約問題やシーズンの日程作成などは一応の“目安”が必要で、現時点での開幕日は「本来は交流戦明けのシーズン再開日だった6月19日を最短とする」(球界首脳)という極秘情報があります。

 すでに5月26日から開催予定だったセ・パ交流戦は中止することで12球団は合意しています。5月6日までの緊急事態宣言が功を奏し、新型コロナをかなり押さえ込んだという見通しに立った上での球界首脳のシミュレーションは「6月19日開幕」でシーズンの試合数も「143→100」に大幅削減と想定されているのです。これは先週のコラムで書きましたね。

 そして、今週のテーマはここからです。一連の大混乱の状況で、なぜ阪神が球団史上初めて敷いた外国人8人体制が功を奏するかもしれない…と見るのか。

 実はオンラインによる12球団の会議などで話題になっているのが、1軍枠の拡大なのです。現在は1軍登録枠29人です。2年前までの28人から1人増枠されたのです。これは、ブレークスルードラフト(大リーグのルール5ドラフト)の導入を求める選手会に対し、飼い殺しの選手を一人でも救う発想から、阪神・谷本修副社長兼本部長が選手関係委員会の委員長として発議して導入されたものです。

 今回の異常事態の中でNPBも12球団の代表たちも今季だけに限り、1軍枠の拡大に賛成しています。なぜか…といえば、例えば6月19日に開幕して100試合を行うとなっても、当然ながら雨天中止などが出てきてシーズン後半は超過密日程になります。現状では全球団がクライマックスシリーズの存続を求めていますから、試合数が削減(ファーストステージ1試合、ファイナルステージ4試合)となっても、後ろの期日は動かせません。となると、8月以降は移動日なしの連戦やダブルヘッダーが頻発に行われることになるでしょう。となれば1軍枠29人では選手の数が足りないのです。過密日程の中で故障者も出るはずですね。

 試合を消化したくても選手の数が足りない…。そんな事態を避けるには1軍枠を現状の29人から40人ほどに拡大してもいいはずですね。先に少し触れた抹消期間の短縮も同時並行した対策でしょう。

戦うレベル保つために

 ただ、そこで着目するのが「戦うレベル」の問題です。たとえ非常事態だとはいえ、1軍枠を40人に拡大することで、1軍のレベルに達していない1軍半や2軍の選手を無理やり、1軍の試合で起用するのか…。これは球界全体のレベルの低下を招きませんか。野球ファンが望む、激しく厳しく、高度なレベルの試合を見せる-という本来の姿とは離れてしまいかねませんね。そこで出てくる議論が外国人選手の1軍枠の問題でしょう。

 現状では外国人選手の1軍枠は4選手(投手枠か野手枠で3選手まで可能)ですね。1軍枠の拡大にともない外国人の1軍登録枠を現状の4選手から、例えば6選手に拡大すればどうでしょうか。「戦うレベル」の低下を防げるどころか、現状よりも激しく、厳しい高度な野球が見られる可能性もあります。

 なので現時点で話し合われている1軍枠拡大の議論の流れの中で、阪神は外国人の1軍枠拡大を声高く球界に主張すべきなのです。阪神はボーア、サンズ、マルテとエドワーズ、ガルシア、ガンケル、スアレスに呂が在籍しています。もし6人の外国人枠が設けられるなら、戦力的な優位に立てませんか。大きなアドバンテージを得られます。

 立ちはだかるハードルは12球団の経営者ではありません。昨年までのオーナー会議の議長だった楽天の三木谷浩史オーナーは外国人枠完全撤廃論者です。他の経営者からも「外国人枠存続」を主張する声は出ていません。絶対反対の姿勢を貫いているのは、日本プロ野球選手会です。日本人選手の雇用機会が失われ、労働環境を圧迫する…という理由で反対しているのです。

 不思議なことに、日本プロ野球界に現在、在籍している外国人選手は約50人ですが、ドラフト指名で入団した選手を除く外国人選手は選手会に属していませんね。選手の立場を守る、まさに一般企業でいう労働組合と同じ選手会に外国人選手は全く入れないのです。約50人の外国人労働者(外国人選手)は不当な扱いを受けている…といえなくもないでしょう。

 こうした球界内の裏事情を考えても、阪神は今回の大混乱の中で「外国人枠の拡大」を球界に物申すチャンスです。それが結果的に球団初の外国人8人体制を生かせる好機につながるのです。新型コロナの異常事態の中で、自分を利する考えは不謹慎? そうでしょうか。こういう事態だからこそ、球界内にある不条理を正す観点があっていいような気がします。きっと12球団の経営者&NPBは誰も反対しないはずですね。

 もし外国人の1軍枠撤廃を阪神が主張すれば、球界を取り巻くファンからもさまざまな意見が噴出し、新たな球界の活性化につながると思うのは、私の独りよがりの考えでしょうか…。

【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや)

 1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。ラジオ大阪(OBC)金曜日午後9時からの「週末ワイド“ラジオ産経”」(http://www.obc1314.co.jp/bangumi/san/)での『サンスポのスポーツよもやま話-軍師と鬼筆の野球が好きだ!』のコーナーや、土曜日午後7時45分からの「まさと・越後屋のスポーツ捕物帳!」(http://www.obc1314.co.jp/bangumi/okini/)に出演中。「サンスポ・コースNAVI」(http://www.sanspo.com/golf/tokushu/golf-t24944.html)ではゴルフ場紹介を掲載、デジタルでも好評配信中。

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