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【鬼筆のスポ魂】福留の言葉に救われた…阪神に欠けていた中日への謝罪

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オンライン会見で中日への謝罪を口にした阪神の福留孝介(須谷友郁撮影)
オンライン会見で中日への謝罪を口にした阪神の福留孝介(須谷友郁撮影)
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 心の中にあったモヤモヤが少しは晴れたような気がした。阪神・福留孝介外野手が3月26日以来、20日ぶりに行われた甲子園球場での自主練習(4月15日再開)を終えた後の会見で語った言葉に…だ。

 オンラインによる画面越しに報道陣と向かい合った福留は「NPB(日本野球機構)の関係者はじめ、中日ドラゴンズの関係者、そして阪神タイガースの職員の方々に多大なご迷惑をお掛けしたのは、同じユニホームを着て同じチームでプレーしている選手として、本当に皆さんに申し訳なかった、というのをまず最初に言わせてください」と頭を下げた。

 謝罪した理由は、チームメートの藤浪晋太郎、伊藤隼太、長坂拳弥の3選手が日本球界で初めて新型コロナウイルスに感染し、球界全体に大きな影響を及ぼしたこと。しかも、感染拡大を受け、球界全体に不要不急の行動の自粛が求められている状況下、3選手は大阪市内で行われたパーティーに出席して感染したと思われることも、謝罪の中に込められている。

 振り返れば、阪神球団首脳は3選手の感染判明後、さまざまな所で謝罪の言葉を重ねてきた。PCR検査で陽性と判明した3月27日には藤原崇起オーナーが大阪・野田の電鉄本社で「遅れて遅れて(プロ野球が開幕)する中で、ファンの皆さんに本当に申し訳ない。地域の皆さんにも迷惑をかけて申し訳ないと思っています」と謝罪。さらに谷本修球団副社長兼本部長も同日、都内で行われたセ・リーグ理事会の冒頭に謝罪し、開幕の大幅な延期について「われわれのせいで、そうならないように知見をためて、乗り越えたい」と語っている。

 現場を預かる矢野燿大監督も球団幹部との会議に出席した4月7日に「球界にも、地域の皆さんにも多大な迷惑を掛けてしまった。本当に申し訳ない」と謝罪した。自覚の足りない行動が新型コロナ感染の原因ということもあって、阪神球団&現場は謝罪、謝罪…の日々を過ごしてきた。

 それでも、何か足りない…。それが福留の謝罪の言葉を読み返して、ある意味でスッキリした。福留は阪神関係者で初めて公に「中日ドラゴンズの関係者…」と謝罪する相手を明確化&差別化した。どうして、中日ドラゴンズには“特に”謝らなければならないのか。それは、3月27日に新型コロナに感染したことが発覚した伊藤隼が直前の20~22日まで、ナゴヤ球場で行われていた2軍の練習試合に参加。中日の選手やスタッフら計15人が伊藤隼と接触していたからだ。

 伊藤隼の感染を知った中日の加藤宏幸球団代表はすぐにチーム内の聞き取り調査を行い、「どこまでが濃厚接触なのか、専門医に確認している。(潜伏期間が)2週間なら4月5日まで注意しないと」とチーム全体に警戒警報を鳴らした。そして、ナゴヤ球場のベンチやロッカーなど施設を消毒。当時は平田良介外野手が発熱したこともあり、一時は新型コロナ感染の疑いも持たれた。球団全体が疑心暗鬼に陥り、心細い思いをしたはずだ。

 新型コロナに感染することは悪でもなく、罪でもない。だが、自軍の選手の軽率な行動がもとで他球団を危険にさらし、施設の消毒という“事後処理”までさせたのなら、球団間のマナーとして一言「申し訳なかった」と言うべきだ。練習を再開した福留がわざわざ「ドラゴンズ」に言及したのは、自身の古巣で知人が多いからではないだろう。それまで阪神の誰一人として「ドラゴンズに申し訳ない」と公で言っていなかったことを、心苦しく思っていたのだろう。福留の言葉でタイガースは多少なりとも救われた、と思いたい。(特別記者)

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