PR

【「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記】手本はパの前後期制、Vシナリオを書き換えろ

PR

試合に勝利し、北條史也(右)とハイタッチする阪神・矢野燿大。短期決戦の戦略が必要だ=神宮球場(撮影・水島啓輔)
試合に勝利し、北條史也(右)とハイタッチする阪神・矢野燿大。短期決戦の戦略が必要だ=神宮球場(撮影・水島啓輔)
その他の写真を見る(1/2枚)

 矢野阪神は大混乱の状況下、60勝戦略を練り上げなければなりません。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、7日には安倍晋三首相が7都府県を対象に緊急事態宣言を発令。12球団中8球団の本拠地があることから、球界も自粛ムードに覆われています。3月20日だったシーズン開幕日は3日に行われた12球団代表者会議で「4月下旬から5月上旬にかけて開幕日を定める」と発表されましたが、舞台裏では「交流戦明けのシーズン再開日だった6月19日開幕」を見定めています。そして、試合数も交流戦の中止などで100試合前後となるでしょう。超異例の“短期決戦”を制するには何が大事か-。阪神は新たなVシナリオを描く必要がありますね。

水面下で先を見据え

 誰もが今までに経験したことのない世界が目の前で起きています。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて7日には安倍首相が7都府県を対象に緊急事態宣言を発令。12球団中8球団の本拠地があることから球界も自粛ムードに覆われています。特に阪神は藤浪、伊藤隼、長坂の3選手が球界で初めて新型コロナウイルスに感染したこともあって、チーム全体の動きを休止したままです。週明けには何らかの動きが出てくるでしょうが、自宅待機でグラウンドに出られない選手たちの気持ちは焦りや諦めなど複雑なものではないでしょうか。

 まさに大混乱の状況ですが、球界は先を見据えて水面下では動いています。3日には12球団代表者会議が開催され、「3月20日」だった開幕日は「4月下旬か5月上旬に定める」と井原事務局長が発表しました。「緊急事態宣言が発令されても予定に変更はない」とも語っていましたね。これは開幕日の決定プロセスに変更がない-という意味であって、実際のところ開幕日は大幅にズレ込みそうですね。

 5月6日までとする緊急事態宣言が功を奏して感染拡大を抑制できた…という明るい見通しに立った上で、球界首脳は開幕日のXデーをどこに定めているか。現時点での見通しは「本来の交流戦明けのペナントレース再開日である6月19日」(球界首脳)という情報があるのです。そして、先の12球団代表者会議では5月26日から開幕予定だったセパ交流戦(各球団18試合)の中止も合意し、週明けにも発表の段取りです。

Vシナリオ書き換える

 「交流戦はスポンサー(日本生命)に了承を得た上で正式に中止を発表するだろう。シーズン143試合も当然ながら短縮されるだろう。100試合前後になる。クライマックスシリーズはセパともにシーズン後半の消化試合を無くすために存続の意見が多い。試合数をファースト1試合、ファイナル4試合にしてでも開催すると思う。日本シリーズはそのまま従来通りだね」とは球界首脳の言葉です。

 これらはあくまでも新型コロナウイルスの感染拡大を抑え込んだ…と見通した上での日程です。今後の感染者数の推移によっては当然ながら、さらに開幕が延期される可能性は否定できません。しかし、現時点で設定されている「最短6月19日のシーズン開幕」を見据えて、矢野阪神はVシナリオを書き換えなくてはいけません。

 どういうことか。シーズンでの試合数が143から100に短縮される、という意味を深く考えなければならないということです。長丁場のペナントレースが異例の「短期決戦」に様変わりすることは、選手起用から試合運びの全てを様変わりさせる…と見るからですね。

 では、矢野阪神が6月19日の金曜日、本拠地・甲子園球場での巨人3連戦で開幕-となった場合、その後の100試合をどのように戦い、チームを優勝に導くのか…。

 参考になる制度が日本のプロ野球にはありました。人気回復の手段として1973年から82年までの10シーズン、パ・リーグで採用された前期・後期制です。シーズン130試合を前期65試合、後期65試合に分けて前期と後期の優勝チームが5試合制(先勝3勝でリーグ優勝)の優勝決定戦を行うシステムでした。

 さまざまな印象深いシーンがありました。1973年は前期に優勝した野村克也監督率いる南海は後期、優勝した阪急に一度も勝てませんでした。ところが、優勝決定戦では3勝2敗で阪急を下してリーグ優勝を果たしました。当時、野村監督の「死んだふり」作戦が話題になりました。79年にはリーグのお荷物球団と酷評されていた阪急を常勝チームに築いた闘将・西本監督率いる近鉄が阪急を決定戦で3勝1敗で下してリーグ優勝。闘将の目に涙が浮かぶ名シーンでした。

短期決戦での鉄則がある

 10シーズンにおいて行われた前期・後期の2シーズン制を実際に取材した経験から言うと、短期決戦を制する絶対的な法則があります。それは-。

 (1)開幕ダッシュが絶対的に必要

 (2)過酷な日程での戦いなので「捨て試合」を作る

 (3)リードした試合を絶対に落とさない終盤の逃げ切り態勢の構築

 (1)の開幕ダッシュでいうならば、前期・後期制の中では前期の開幕ダッシュに失敗したチームはすぐに気持ちを切り替えて、後期の開幕ダッシュに照準を合わせていました。試合数が少ないと後からの巻き返しが困難で、選手たちの気持ちもチーム優先から個人主義に切り替わりやすい状況が生まれます。なので、143試合の時以上に開幕ダッシュが絶対的に必要なのです。

 (2)の「捨て試合」も短期決戦では仕方ない作戦ですね。今季の100試合がどのような日程で行われるかは未定ですが、例えばあの時代のパ・リーグは65試合を短期間で消化しなければならず、ダブルヘッダーも頻繁に行われました。1日2試合となると、絶対にやってはならないことは「1日2敗」です。なので1勝するためには、あえて劣勢の試合や、相手がエースだった場合などは「捨てる」ことを躊躇(ちゅうちょ)しなかったですね。それが、逆に1勝を確実にすると考えられていました。

 (3)のリードした試合は必ず逃げ切る…というのも短期決戦のマストの戦略ですね。前期・後期制の時、リーグを制した球団には絶対的ストッパーがいました。例えば81年の日本ハムには江夏、74年のロッテには村田兆治、73年の南海は佐藤道郎などなど…。抑えに不安のあったチームはエースの抑え起用も躊躇しなかったですね。まあ、143試合制でも絶対的ストッパーは必須条件ですが、1試合の重みが増す短期決戦ではさらに「勝てる試合は必ず勝つ」ことが求められるのです。

 新型コロナウイルスの感染拡大で世界が大混乱している中、日本の球界は先の見えない状況に陥っています。先に触れたシーズン開幕日「6月19日」も今後の状況によってはまた変遷をたどるかもしれません。しかし、いずれにせよ今季の日本プロ野球のシーズンにおける試合数が減少することだけは確実です。100試合となれば、(1)~(3)以外にも大事になってくる戦略戦術はあるはずです。例えば選手の健康管理(故障を防ぐ起用)なども大事な項目です。

 要は優勝ラインが通常の80勝前後から60勝前後に変わってくることを念頭に置かなければなりません。100試合なら60勝40敗。これがVラインです。つまり矢野監督は「60勝戦略」を練らなければならないわけです。

 それにしても6月19日が最短の開幕Xデーとは…。まだ2カ月以上も先の話ですね。野球のない世界はわれわれ、スポーツマスコミをも“絶滅危惧種”にしてしまいますね。

【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや)

 1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。ラジオ大阪(OBC)金曜日午後9時からの「週末ワイド“ラジオ産経”」(http://www.obc1314.co.jp/bangumi/san/)での『サンスポのスポーツよもやま話-軍師と鬼筆の野球が好きだ!』のコーナーや、土曜日午後7時45分からの「まさと・越後屋のスポーツ捕物帳!」(http://www.obc1314.co.jp/bangumi/okini/)に出演中。「サンスポ・コースNAVI」(http://www.sanspo.com/golf/tokushu/golf-t24944.html)ではゴルフ場紹介を掲載、デジタルでも好評配信中。

この記事を共有する

関連トピックス

おすすめ情報