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よもやの場外プレー “阪神クラスター”で遠ざかった球春

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2軍練習試合に登板した阪神の藤浪晋太郎投手=3月18日、大阪市此花区(甘利慈撮影)
2軍練習試合に登板した阪神の藤浪晋太郎投手=3月18日、大阪市此花区(甘利慈撮影)

 新型コロナウイルスの感染拡大がスポーツ界にも大きな影を落とす中、選手の集団感染という最悪の事態がプロ野球を襲った。感染したのは、いずれも阪神の藤浪晋太郎投手(25)、伊藤隼太外野手(30)、長坂拳弥捕手(25)の3人。感染源は不明だが、外部の人間も参加した食事会が感染拡大を招いた疑いが濃厚だ。西の人気球団はかねて球団外との付き合いも派手なことで知られてきたが、その脇の甘さが4月24日の開幕を目指してきた球界に水を差す結果となった。  (上阪正人)

きっかけは嗅覚異常

 「ワインやコーヒーのにおいを感じない」。藤浪投手が球団にこう訴えたのは、3月24日のことだった。

 甲子園球場での練習を終えてから兵庫県内で耳鼻咽喉科と内科を受診したが、診断は「季節特有のアレルギーではないか」。しかし翌25日朝も嗅覚の異常は改善されず、別の耳鼻咽喉科で新型コロナ感染の可能性を指摘された。そこで26日に大阪府内の病院を受診後にPCR検査を受け、同日夜、陽性反応が出た。

 体調の異変は藤浪にとどまらなかった。同様に嗅覚や味覚の異常を訴えていた伊藤隼と長坂も検査を受けた結果、感染が判明。いずれも発熱やせきといった症状はないが、入院を余儀なくされた。チーム活動は当面の間取りやめることになり、球団は選手やスタッフに自宅待機を指示した。

「もう少し厳しくすれば」

 問題は、3人がいつ、どこで感染したかだ。当然ながら球団も3人に聞き取り調査を行い、3人が14日に同じ食事会に参加していたことが判明。この場でウイルスが拡散した可能性が一気に高まった。

 食事会は大阪市内の知人宅で行われ、参加者は球団から藤浪ら3人以外に選手4人、球団外から5人の計12人。そして懸念された通り、28日に大阪市内のいずれも20代の女性2人、29日には神戸市の20代の女性1人と、食事会の参加者3人の感染が明らかになった。

 3月14日といえば、本拠地の甲子園球場を舞台に行われるはずだった選抜高校野球大会の中止が決まって3日後。前日の13日には緊急事態宣言発令を可能にする新型コロナウイルス特措法が成立し、すでに緊張が高まっている時期だった。

 プロ野球界でも当初は20日に予定されていた公式戦開幕が延期され、巨人やDeNA、中日などは遠征中の選手らに外出禁止を命じるなど行動を制限。にもかかわらず阪神は選手に「不要不急の外出の自粛」を呼びかけるにとどめていた。3選手の感染判明を受けて記者会見した阪神の揚塩健治球団社長は「もう少し厳しく、外出禁止というような形で臨んだ方がよかったという反省がある」と悔やんだ。

他球団にも波及

 だが社長の後悔とは裏腹に、問題の食事会の参加者が当初発表された12人より多いことが後に判明した。取材に応じた谷本修球団本部長は「(食事会の参加人数は)藤浪が到着したときは12人だった。だがその後、お友達を呼んだということなので延べ何人かは分からない」と話し、入れ代わり立ち代わり女性らが出入りする大勢のパーティーだった可能性を指摘した。

 当然ながら、ことは阪神だけに収まらなかった。3月20~22日に伊藤隼が出場した2軍練習試合の対戦相手だった中日は、複数回の接触が確認された2選手を4月5日まで自宅待機とし、3~5日に予定されていた2軍練習試合を中止した。

 阪神が食事会に参加していた残り4選手の氏名を明らかにしていないことも、他球団の不信感に拍車をかけている。4選手にこれまでのところ体調の異変はないというが、万一感染していたとなれば他球団の対策は後手後手になってしまうからだ。

 プロ野球の12球団代表者会議は3日、公式戦開幕のさらなる延期を決定。その2日後に退院した伊藤隼は球団を通じ「ファンの皆さま、野球界に携わる多くの方々にご迷惑をおかけし、大変申し訳ございません」とのコメントを出した。

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