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【「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記】「内憂外患」の阪神…選手コロナ禍に巨人とバトル、着地点は見えず

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小幡竜平とタッチを交わす藤浪晋太郎=鳴尾浜球場(撮影・松永渉平)
小幡竜平とタッチを交わす藤浪晋太郎=鳴尾浜球場(撮影・松永渉平)
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 “感染パーティー”の余波が直撃し続ける阪神が、対外的にも巨人との壮絶バトルで前代未聞の注目を浴びています。大阪市内でのパーティー(3月14日)で参加者の女性3人と藤浪、伊藤隼、長坂が新型コロナウイルスに感染したとみられる阪神では、新たに小幡竜平内野手(19)がPCR検査を受ける事態に発展。鳴尾浜の球団寮での集団感染の心配すら出てきました。内憂の状況下、阪神の谷本修球団副社長兼本部長と巨人首脳陣がセ・リーグ臨時理事会(3月27日)の場で一触即発の激論を展開したことも判明しました。シーズン開幕が見通せない中で、阪神球団の周辺は憂鬱な空気に包まれています。

パーティーの輪郭徐々に明らかに

 やはり先週に書いた通りの展開になってしまいました。藤浪、伊藤隼、長坂が嗅覚の異常などを訴えて3月26日にPCR検査を受け、翌27日には新型コロナウイルスの感染が確認されました。3選手はすぐに入院したのですが、藤浪らの実名公表が高く評価される論調の中で、このコラムでは「早く阪神の7選手が参加したパーティーの出席者の社外人物ABCDEの人物確認と早急な検査が必要」と書きました。

 そして、感染現場となったであろう3月14日の大阪市内でのパーティーの“実態”が明らかにならなければ、謎は謎を呼び、さまざまな雑音や騒動が起きると書きました。どうでしょう。天下の週刊文春から写真週刊誌に至るまで、このパーティーについて次々に詳報し、徐々に輪郭が明らかになっていますね。

 参加した阪神の選手は7人以上で、現時点(4月2日)で感染が確認されていない選手も自宅待機が続いています。そして、参加していた“社外人物”の中から大阪の女性AB2人と神戸の女性C1人が新型コロナウイルスに感染していたことが明らかになりました。13人ぐらいのパーティーで感染者が6人。これはミニクラスターです。

 世界に新型コロナウイルスの感染拡大が進む中で、プロ野球は3月20日のシーズン開幕を延期。プロ野球関係者や選手が感染すれば、さらに開幕日の再延期もありうる状況下で、球界全体は当然ながら行動の自粛を促されていました。阪神にもNPBからの要請はありました。そうした状況下で阪神の7選手がパーティーに出席していたこと自体が「プロ野球選手としての自覚のなさ」を問われ、阪神球団は「選手をしっかり管理できていなかった」と言われても仕方ない状況です。どう言われても甘んじて頭を下げるしかないでしょう。

阪神だけコロナ禍はどうしてか

 どうして新型コロナウイルスという“見えない敵”と戦っている最中に、選手たちはクラスターの危険があるパーティーに出向いたのか…。私なりに分析するなら、例えば公園の砂場に砂糖を盛ります。少し時間が経過すれば砂糖には蟻(アリ)が群がっています。同じく例えるなら、公園でパンくずをばらまきます。すぐに鳩(ハト)やスズメが群がります。もうこれ以上は言いますまい。

 しかし、事態はその後も沈静化していません。鳴尾浜の球団寮で長坂の濃厚接触者と「指定」されていた小幡が4月に入り発熱し、PCR検査を受けています。週末に検査結果が出ますが、最悪なら球団寮でもクラスターが発生している可能性も否定できません。寮内はすでに消毒済みですが、果たして寮の中で、まだ何人の選手が“危ない”のか。食堂も風呂場もトレーニングするマシンも同じです…。いくら寮内で隔離していたとしても、限界があるのではないでしょうか。極めて心配です。

 チームは藤浪らが陽性と判定された3月27日から全ての活動を休止中です。一応の再開のメドを4月9日に置いていますが、状況次第ではさらに再開日が延期されるかもしれません。他の11球団では感染者が一人も出ていない中で、阪神だけが新型コロナウイルス禍に陥ったのは偶然なのでしょうか。

 まさに内憂を抱える阪神は対外的にも球界から異例の注目を浴びています。実は3月27日に行われたセ・リーグ臨時理事会で選手関係委員会の委員長でもあり、出席者の阪神・谷本球団本部長と巨人の首脳が大激論を展開。出席者の証言によると「谷本氏は興奮状態に陥り、テーブルをドーンとたたいて巨人に反論していた」というのです。

なぜこの場でブレークスルーを

 このコラムでは以前にも阪神VS巨人の“場外戦が佳境”(3月8日アップ)というコラムを書いたばかりですが、今回の阪神VS巨人の激論はまさに続編です。そもそもセ・リーグ臨時理事会は阪神の3選手の新型コロナウイルス感染を受け、NPBへの感染者報告マニュアルの練り直しや、シーズン開幕日の検討が主な議題でした。

 ところが、一連の議題が終了した段階で、巨人の出席者から「ブレークスルードラフト」の条約文に対する“疑義”が出されたのです。ブレークスルードラフトとは米大リーグのルール5ドラフト(協約第5条に書かれていることからルール5と呼ばれる、12月のウインターミーティングの最終日に行われるドラフト。簡単に言うなら、他球団で飼い殺しにあっている選手をお互いに指名して獲得するシステム)の“日本版”です。

 当初は今年の7月20日前後に実施する予定でした。ルールや規約のまとめ役こそが、選手関係委員会の委員長である谷本球団本部長なのです。ところが、2月に沖縄で行われた12球団への説明会では巨人・原監督が「戦力外通告者の交換にしかならず、シーズン中の選手の交換となるとサインなどチーム機密が漏れる心配がある」と導入を猛反対。それから谷本球団本部長が中心となってルールの改善などに着手していました。

 しかし、今回も巨人首脳はブレークスルーの文面に「戦力の均衡」という文字があることに反発し、「その文字を外してもらいたい」と強硬に主張しました。谷本球団本部長は「この会議はブレークスルーの討議の場ではない」と反論するも、「話し合いは事前に決められたことだけとは違う。話し合わないのは職務怠慢だ」とまで巨人側は猛烈に抗議したのです。両者の言い合いはヒートアップし、一触即発の空気が生まれた-と参加者の他球団首脳は目をパチクリさせながら話しました。

 まさに異常事態です。2リーグ分立(1950年)以降、阪神は常に巨人と同一歩調を取り続けました。東の巨人と西の阪神…。グラウンドでは火花を散らすライバルでも、日本球界を支え、牽引(けんいん)していくために両球団は舞台裏では手を握り合ってきた仲です。球界のルール作りや規約の維持、改正のために巨人と阪神はお互いの利害を一致させながら歩んできた仲でした。

 かつて久万俊二郎オーナーが在職中、よく神戸・東灘の自宅には巨人・渡辺恒雄オーナーからの密使が来ていました。事前に巨人の考え方や進むべき方向性を久万オーナーに伝え、阪神の了解を取りながら巨人は球界をハンドリングしてきた歴史があります。1リーグ制が浮上したときも、久万オーナーは「大勢に従います」と言明し、巨人の渡辺オーナーが進む道に追随する姿勢をいち早く鮮明にしました。巨人とともに歩むことが、阪神の球団経営を揺るぎないものにする…という確信があったからです。

 そうした蜜月の関係性は他球団も熟知しています。それが公の席での激論、一触即発の言い合い…。巨人とここまでバトルを繰り広げる谷本球団本部長の姿勢は、果たして阪神球団のいや親会社である阪急阪神HDの総意なのでしょうか。巨人がもし阪神と決定的に決別となれば、将来的に阪神はさまざまな試練を覚悟しなければならないでしょう。まさにタイガースの球団経営を揺さぶる最悪の事態も想定しなければなりません。

 新型コロナウイルスに揺れ動く阪神は、球界の渦の中でも大きく揺れ動いています。全ての着地点は一向に見えてきません。憂鬱さはピークを迎えようとしています。

【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや)

 1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。ラジオ大阪(OBC)の金曜日午後9時から「NEWS TONIGHT いいおとな」(http://www.obc1314.co.jp/bangumi/iiotona/caster.html)の『今日の虎コーナー』や土曜日午後7時45分からの「まさと・越後屋のスポーツ捕物帳!」(http://www.obc1314.co.jp/bangumi/okini/)に出演中。「サンスポ・コースNAVI」(http://www.sanspo.com/golf/tokushu/golf-t24944.html)ではゴルフ場紹介を掲載、デジタルでも好評配信中。

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