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【「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記】「開幕延期」転じて福となす 4番ボーアに「追試」で結論を

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ヤクルトとの練習試合で四回、安打を放つ阪神のボーア。開幕までの間、4番への適性が試される=3月20日、神宮球場(宮沢宗士郎撮影)
ヤクルトとの練習試合で四回、安打を放つ阪神のボーア。開幕までの間、4番への適性が試される=3月20日、神宮球場(宮沢宗士郎撮影)

 ボーアは本当にVの使者なのか、それとも「虚砲」なのか…。それを見極めるのに格好の舞台が設定されました。3月20日に予定されていたシーズン開幕が4月10日~24日の間に延期され、その間の練習試合12試合が日本の野球にアジャストできるか否かを判断する“テストマッチ”になるはずです。阪神球団の関係者やOBたちは矢野燿大監督(51)に対して「少しでも多く実戦の打席に立たせて能力を判断すべきだ」という意見で一致しています。12試合で最低でも45打席以上の結果こそが、「4番ボーア」の開幕構想の続行か修正かを定めるはずです。

開幕日にピークを

 まさに大混乱のスポーツ界ですね。新型コロナウイルスの感染拡大は欧米諸国にも広まり、さまざまなスポーツイベントの中止や延期が決まりました。米大リーグもシーズン開幕の延期を決め、各球団ともキャンプ地にとどまって様子見をしています。ゴルフ界でもオーガスタで行われるメジャー初戦のマスターズ・トーナメントが延期されました。7月24日開幕予定の東京五輪も予定通りに開催できるのか…。トランプ米大統領の延期発言や、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長の「世界保健機関(WHO)の助言に従う」という発言には、舞台裏の“うごめき”を感じざるを得ません。

 日本プロ野球界もシーズン開幕が3月20日から延期され、あす23日に行われるJリーグと提携の第4回「新型コロナウイルス対策連絡会議」を経て、新たな開幕日が発表される方向です。最短4月10日となるのか、それとも4月24日となるのか…。全ての関係者が注目していますね。

 そして開幕延期によってもたらされた空白の時間は、それぞれのチームが本来、シーズンで戦うはずだった相手との練習試合に変更されました。試合数を間引きして戦い、来るべき開幕日に備えるのですね。阪神の場合は3月20日からヤクルト3連戦(神宮)で、その後、DeNA2連戦(横浜)、広島3連戦(京セラD)、巨人戦2試合(東京D)、中日2連戦(ナゴヤD)です。都合12試合の練習試合を行い、その後は正式な開幕日の決定を受けて、追加の練習試合を組む方向です。

 「チームによって、シーズン開幕日が遅れたことで戦力事情が変わってくる。春季キャンプやオープン戦で出遅れていた選手が間に合ったり、逆にオープン戦で好調だった選手の調子に影響が出たり…。一つだけいえることは、新たな開幕日にチーム状態をピークに持っていくように工夫しなくてはいけない。それぞれのチームの首脳陣の手腕が問われる」とは球界関係者の言葉です。

オープン戦本塁打ゼロ

 そういう意味で、矢野阪神が新たな練習試合12試合で試さなくてはいけない最大のポイントは何か、といえば「4番ボーア構想」の最終チェックでしょうね。果たして構想通りに4番ボーアが最善手なのか、それとも修正して臨むのか。このコラムでは以前に「3番ボーア構想」を書きました。現場にまるで反響はなかったですが(笑)。

 言いたかったことはオープン戦で調子の上がらないボーアを4番にして、もし本番でチャンスに凡退が続くなら、2年前のロサリオと同じ悲劇的な結末を迎えるのでは、というネガティブな発想でもありました。そして3番ボーアなら4番以降の打者がフォローできると思ったので指摘したのです。実際、1985(昭和60)年のバースは4番掛布、5番岡田の存在があればこそ精神的な負担も軽減され、打ちまくったのです。

 その後のボーアの打撃の調子はどうでしょう。本当に「4番ボーア」に太鼓判を押せる人はいますかね。ボーアはオープン戦8試合に出場して21打席20打数4安打、1打点、5三振、1四球で打率2割です。本塁打は一本も出ませんでした。

「心配ない」「頭を空っぽに」

 この内容について、複数の阪神OBに聞いてみました。すると意見も見事に割れました。

 「打撃フォームを見る限り、体勢が崩れて打たされている感じはない。凡退している打席でも、タイミングがもう少し合ってくれば打球が上に上がる感じだ。今はバットの中心からやや下っ面に当たっている。あれがもっとバットの上っ面に当たり始めたら、本塁打も出る。なので心配していないんだ」

 「ボーアは打撃練習しすぎています。打撃投手のボールでタイミングを取っていても、実戦の投手のボールは違いますからね。ボーアはバースと同じようにグリップをヒッチ(少しグリップを上下させる)させるんですが、そのヒッチのタイミングが全部、遅いんです。だから投球にずっと差し込まれていますね。これを矯正しないと心配ですね」

 「ボーアは日本に来るときに“真ん中から外寄りの投球は左方向に打て”と教えられたんだろう。だからキャンプからずっとセンターからレフト方向を意識している。しかし意識しすぎている分、タイミングを取るのが遅れている。今は逆にもっと右方向に引っ張っていかなくては、投球を前でさばけないよ。全部、差し込まれる原因になっている。頭の中を一度、空っぽにすべきだ」

「持っている」矢野監督

 どうですか? 少し野球関係者に聞くだけで、これだけ幅広い評価があるんですね。安心理論もあれば危機的な言葉も…。

 結論としては、オープン戦終了時点では「4番ボーア構想」に誰もが絶対大丈夫とは言えない現実が横たわっているといえませんかね。ただ、さまざまな評価をする阪神関係者やOBたちが異口同音に指摘するのは「もっと実戦の打席に立たせて、実戦感覚を磨き、日本の投球に順応するチャンスを少しでも多く与えることだ」という意見です。

 つまり、新たに設定された12試合の練習試合こそボーアが4番なのか、修正なのかを見定める最終テスト期間になるということですね。12試合ならば1試合4打席として48打席。少し減っても45打席を与えるべきです。オープン戦は21打席でしたから、その倍以上の打席数ですね。そこまで打席数を与えれば、出した結果は大きな参考材料になるはずです。逆に言うなら、本来はなかったボーアの“期末テスト”が実施できるのは矢野監督にとってラッキーです。

 長い取材経験を通じ、監督にも運や不運がつきまとうと感じます。采配や選手起用はそんなに外していないのに、時の流れや勢いに負けた監督…。逆に相手や状況に恵まれて実力以上の成績を残したのではないか、と思ってしまう監督。昨季の最終盤6連勝で3位ゲットの矢野監督は常々「持っている監督」と思っています。采配や選手起用も外していませんが…。念のため強調しておきますよ(笑)。

 今回のシーズン開幕延期を「4番ボーア」の最終チェックに利用できる矢野阪神はツイている、と思ってもいいのではないでしょうか。なので12試合の練習試合ではボーアに一つでも多くの打席を与えてください。その結果はおのずと、新たなシーズン開幕日の阪神の4番を決めるでしょう。

  ◇  

 【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや)

 1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。ラジオ大阪(OBC)の金曜日午後9時から「NEWS TONIGHT いいおとな」(http://www.obc1314.co.jp/bangumi/iiotona/caster.html)の『今日の虎コーナー』や土曜日午後7時45分からの「まさと・越後屋のスポーツ捕物帳!」(http://www.obc1314.co.jp/bangumi/okini/)に出演中。「サンスポ・コースNAVI」(http://www.sanspo.com/golf/tokushu/golf-t24944.html)ではゴルフ場紹介を掲載、デジタルでも好評配信中。

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