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【「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記】「コロナはコロナ、野球は野球」…集中して結果出すことが球団の役目

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開幕延期を受け、取材対応する阪神・矢野燿大監督=横浜スタジアム(撮影・松永渉平)
開幕延期を受け、取材対応する阪神・矢野燿大監督=横浜スタジアム(撮影・松永渉平)
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 新型コロナウイルスは新型コロナウイルス、野球は野球-。新型コロナウイルスの感染拡大でシーズン開幕が大幅に延期され、鳴り物入り応援の禁止が事実上決定するなど非常事態の日本プロ野球。大混乱の中で今季に15年ぶりのリーグ優勝を目指す矢野阪神が心がけるものは何か。25年前の1995年1月17日に発生した阪神大震災の際、シーズン開幕に備えるために当時の久万俊二郎オーナーは全軍に指令を飛ばしました。「地震は地震、野球は野球」と…。周囲の騒動に惑わされず、全軍が野球に集中しなさい!というオーナー令でした。2020年3月の今も同じです。

スタンドの風景も一変

 新型コロナウイルスの感染が全世界に広がる中、日本プロ野球も厳しい局面を迎えていますね。オープン戦全72試合の無観客試合を消化していく中で、9日には3月20日の予定だったシーズン開幕日を延期することを発表。そして12日のJリーグと提携した「新型コロナウイルス対策連絡会議」では感染症の専門家チームからの提言を受け、シーズン開幕後の鳴り物入り応援やジェット風船、タオル回しやスクワット応援(客席で立ったり座ったりを繰り返す行為)の自粛、アルコール類の販売自粛などを要請されました。

 「シーズンが開幕して以降、ファンの方々にはマスク着用でウエットティッシュの持参を求めます。応援は基本的に拍手だけ。大声を出すこともダメです」とは球界関係者の話ですが、スタンドの風景も大きく変わることになりそうですね。

 注目の開幕日もこのコラムでは2週間程度の延期と書いてきましたが、その後の感染状況の悪化などを踏まえて早くても4月10日、遅ければ4月24日と大幅に日程がずれ込むことが決定的な状況です。最終的には23日のJリーグと連携した「第4回新型コロナウイルス対策連絡会議」で開幕日が正式決定する方向です。もし、当初の開幕日よりも1カ月近くずれ込んだ場合、12球団はその間、当初に予定されていたカードを間引きして練習試合を組むことが現実味を帯びてきました。

阪神大震災のシーズンを参考に

 阪神の場合なら4月17日開幕として、それまでの8カード(23試合)を間引きながら練習試合として行い、選手の実戦感覚が鈍らないように新しい開幕日に備える-ということになりそうです。

 「一部の球団からは宮崎や沖縄に複数球団が集合して練習試合を行う案も出ている。しかし、宿舎の予約や移動などに問題があるし、またキャンプ地に戻るというのも気分的にどうだろう。選手会側からは当初のスケジュールを間引いた練習試合方式を求める声が主流だ。そこら辺りに落ち着くのでは…」と球界関係者は語りました。

 まさに大混乱の球界ですが、今季に2005年以来、15年ぶりのリーグ優勝、1985(昭和60)年以来、35年ぶり2度目の日本一を目指す矢野阪神はどのような心構えで新たな開幕日を迎えるべきか。

 大いに参考になるのは25年前の大震災です。そう1995年1月17日の午前5時46分過ぎに起きた兵庫県の淡路島北部沖の明石海峡を震源とするM7・3の大地震です。近畿圏の広域が大きな被害を受け、特に震源地に近かった神戸市市街、兵庫区、長田区の被害は甚大でしたね。犠牲者は6434人に達する自然災害でした。関西を本拠地とする阪神とオリックスは震災の影響をモロに受けました。

 阪神は本拠地の甲子園球場のアルプススタンドや鳴尾浜のグラウンドも液状化しました。球団関係者や選手、その家族も被災し、まさに「野球どころの話ではない」という状況に陥ったのです。

 当時の球団幹部は「この状況では高知・安芸での春季キャンプもできないかもしれない」と発言するなど、チーム全体が阪神大震災の影響から浮足立った記憶があります。

 一方、神戸を本拠地とするオリックスは「がんばろう神戸」というスローガンの下でチームが一丸となり、被災した人々に明るい希望の灯をお見せしたいという気概で満ちあふれました。その結果がリーグ優勝に。神戸復興のシンボルとなりましたね。中村勝広監督がシーズン途中に解任されるなど、46勝84敗で最下位に終わった阪神とは雲泥の差でした。

オーナー令の教え

 イチローの存在など戦力事情の差も大いにあった阪神とオリックスの明暗ですが、こうした結末を予測したかのように震災直後、全軍に指令を出したのが当時の久万俊二郎オーナーでしたね。

 「地震は地震、野球は野球です」

 つまり久万オーナーはチーム全体に対して周囲の騒動をグラウンドに引きずることなく、監督やコーチ、選手たち、球団職員は「野球に集中しなさい」と諭したわけです。結果はオーナーが危惧した通りの惨敗でしたが…。

 それから25年後の今も状況は同じです。大地震とウイルスという天災の中身こそ違え、野球選手は野球に集中して、結果を出さなければなりません。こうした大混乱の世の中に明るい話題を提供できるのもプロ野球選手ならではこそ可能なのですね。25年前の阪神のように負け続け、関西のみならず、全国の阪神ファンを落胆させてしまってはタイガースの存在意義さえ問われませんか。あの時のオリックスのように、阪神も「頑張ろう日本」をスローガンに勝ち続けることが、何もかもが中止や自粛、そして株価の暴落…などの世の中に明るい話題を提供する術です。

 「新型コロナウイルスは新型コロナウイルス、野球は野球」

 もう9年前に天に召された久万オーナーが今も生きていれば、きっと全軍にこう指令を飛ばしたのではないでしょうか。

 春のセンバツ大会が中止となり高校球児の涙を見ました。本当に残念ですし、彼らの気持ちを考えると言葉に詰まりますね。そして、東京オリンピック・パラリンピックは予定通りに開催されるのでしょうか。トランプ米大統領の「1年延期」発言。そして、IOCのバッハ会長の言葉も日々、微妙に変化していますね。WHOがパンデミックを表明するなど世界の情勢は混沌(こんとん)としています。まさに事態は人類が今まで経験したことのないゾーンに陥ったのかもしれませんね。

 それでもプロ野球は4月中にシーズン開幕を迎え、143試合を戦います。CS(ファーストステージ1試合、ファイナル4試合案が検討中)も日本シリーズも行われるでしょう。矢野阪神は万全の体制で開幕を迎えなくてはいけません。

 新型コロナウイルスは新型コロナウイルス、野球は野球…なのです。

【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや)

 1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。ラジオ大阪(OBC)の金曜日午後9時から「NEWS TONIGHT いいおとな」(http://www.obc1314.co.jp/bangumi/iiotona/caster.html)の『今日の虎コーナー』や土曜日午後7時45分からの「まさと・越後屋のスポーツ捕物帳!」(http://www.obc1314.co.jp/bangumi/okini/)に出演中。「サンスポ・コースNAVI」(http://www.sanspo.com/golf/tokushu/golf-t24944.html)ではゴルフ場紹介を掲載、デジタルでも好評配信中。

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