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【野球がぜんぶ教えてくれた 田尾安志】「ワンポイント禁止」時短のため試してみる

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阪神時代にワンポイント救援で活躍した葛西(右)と遠山。同様の継投はできなくなる?
阪神時代にワンポイント救援で活躍した葛西(右)と遠山。同様の継投はできなくなる?

 米大リーグで今季から、ワンポイントリリーフがなくなる。「最低でも打者3人に対して投球を完了するか、イニング終了とならない限り降板できない」とのルールが導入されたからだ。狙いは、試合時間の短縮。日本でも、日本野球機構(NPB)と12球団が検討を始めるという。

 監督からすれば、左の横手や下手から投げる変則投手を救援で起用することが難しくなる。左打者にめっぽう強くて出番を得ていた救援投手は、右打者を抑える力もなければ、1軍でやっていけなくなるだろう。

 投手交代の時間は、守っている野手からみても長い。理由はブルペンで待機している救援投手に準備する時間を与えるためだ。まず、コーチがベンチを出てマウンドまで歩いていく。バッテリーと言葉を交わし、監督に「交代OK」の合図を出す。そして、監督がおもむろにベンチを出る…。一連の流れは、結構時間がかかる。1度の交代につき、3分から5分。イニング途中の交代が減れば、かなりの短縮になる。

 日本のプロ野球でも、何年も前から試合時間の短縮が提唱されている。しかし、昨季の平均は3時間21分。1999年は3時間17分だから、20年たってもほとんど変わってない。放送延長が難しくなっている地上波のテレビ中継では、試合途中で番組終了となることがしばしば。僕も解説の仕事をしていて、試合終盤の一番盛り上がる場面を視聴者にお伝えできないのはすごく残念だ。

 僕の現役時代、巨人の江川卓(すぐる)投手が登板したときの試合時間は本当に短かった。一球一球を投げるテンポが速い。無駄な球なく、ストライクゾーンで勝負する。だから、よどみなく試合が進む。夜8時には終盤に突入。8時半には終わっている試合が多かった。

 1960年代に巨人の救援投手として活躍した宮田征典さんには、登板する時間帯から「8時半の男」のニックネームがついた。しかも、当時のナイターは午後7時プレーボールが多かった。開始から1時間半で終盤の山場を迎える。試合進行が相当速かったことを物語っている。

 ところが今では、1球ごとの投球間隔が長く、多くの試合で3時間を超える。サイン盗みを防ぐため、グラブに書かれた乱数表を用いた複雑なサイン交換が行われた時代もあった。

 球場に来るサラリーマンは、仕事のもやもやが吹っ飛ぶような、スカッとした試合を見たいだろう。野球の本来の姿は、単純に投手と打者が力と力のぶつかり合いを演じること。しかし勝負を追求すると、1球ごとの繊細な駆け引きが必要なことも理解できる。議論が高まりそうな「ワンポイントリリーフ禁止」も一度は導入してみて時間短縮の効果を図り、ファンに可否の判断を委ねてはどうだろうか。

(野球評論家)

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