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【評伝】含蓄のあったノムラ語録、聞けなくなったのが寂しい 野村氏死去 大阪運動部長・北川信行

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雨天中止となり、ベンチで記者団に囲まれ2時間も話した阪神・野村克也監督(中央)=平成11年6月22日
雨天中止となり、ベンチで記者団に囲まれ2時間も話した阪神・野村克也監督(中央)=平成11年6月22日

 阪神の再建を託された野村監督は若い選手の茶髪やピアスを禁止するだけでなく、報道陣の服装にもうるさかった。

 真夏に大阪から東京に移動したときのこと。「その格好はあかんやろ」。新幹線のプラットホームでフロント幹部と談笑していたところに、おしゃれなスーツを身にまとった野村監督が通りかかった。「暑いときぐらい、ラフにしたらどうですか。例えば彼のように…」。同幹部はそう言ってポロシャツ姿の私を紹介したのだが、返ってきたのは冒頭の言葉。思いっきりダメ出しされた。

 データを重視する「ID野球」で一世を風靡(ふうび)した野村監督だが、身なりの大切さを口酸っぱくなるほど若い選手に説いていた。「王(貞治=現ソフトバンク会長)や長嶋(茂雄=現巨人終身名誉監督)がヒマワリなら、オレは月見草」などと、斜に構えた“ぼやき節”を常に口にしながら、真摯(しんし)にプロ野球界のあるべき姿を考えていた気がする。

 阪神監督時代の3年間は最下位続き。最後は妻の沙知代さんの脱税疑惑に絡んで辞職した。そのときのゴタゴタで、当時の「虎番」とは決して良好な関係ではなかった。だが、個人的にはスポーツ記者として初めて接したプロ野球監督。野球の面白さや奥深さを教えてもらった。

 「技術には限界があるが頭にはない」「一生懸命に勝る美しさはなし」…。「ノムさん」の語録にはある種の“毒”とともに、一般社会にも通じる含蓄があったように思う。それを聞けなくなったのが、寂しい。(北川信行)

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