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【「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記】福留と糸井、評価を分ける献身性

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福留孝介と話す糸井嘉男=かりゆしホテルズボールパーク宜野座(撮影・松永渉平)
福留孝介と話す糸井嘉男=かりゆしホテルズボールパーク宜野座(撮影・松永渉平)

 鳥谷が去った阪神のチームリーダーは、福留孝介外野手(42)であることがまざまざと明らかになった春季キャンプ序盤です。阪神は沖縄の「かりゆしホテルズボールパーク宜野座」で春季キャンプ中ですが、第2クールまでの練習で際立っているのが福留の存在感。シートノックでは守備に就き、ベースランニングでも率先して走り、ブルペンでは若手投手の投球練習の際に打席に入ってアドバイスを送る-など、チームを考えた行動の数々に球団関係者は絶賛の声です。チームを去った鳥谷には“なかった姿勢”とも…。そして、もう一人のベテランには辛辣(しんらつ)な声が渦巻いていますね。

チームに貢献する意識

 総勢44人という前例のない大所帯でやってきた沖縄の宜野座1軍キャンプ。今季は東京五輪の開催でシーズン開幕は3月20日と前倒しになりました。当然ながら選手たちの調整も急ピッチになるのですが、激しさを増す1軍枠争いの中でもひと際、際立っているのが福留の存在感ですね。

 「普通、42歳の大ベテランがあそこまではやらないんだけどね。シートノックの守備に就いたり、ベースランニングでも若手と一緒に走ったり。あの姿勢はすごいの一語」とは阪神OBの言葉です。

 もちろん、福留も開幕に合わせて1月の自主トレ段階から例年よりも早めの調整を行ってきたのでしょう。キャンプの序盤から元気いっぱいに体が動くのも調整ペースが速かったから…という背景もあります。しかし、調整ペースが速く、体が元気である、ということとチーム全体を考えた行動をグラウンドで見せる、ということは意識のレベルが違います。自分だけのことさえやっていればいい…と思わず、少しでもチームに貢献するという高い意識があるからこそ、さまざまな場面で「さすが福留」という声が巻き起こるのです。

 42歳、日米通算22シーズン目を迎える大ベテランがシートノックでは左翼のポジションで打球を追い、ベースランニングでは若手に交じってダイヤモンドを駆け抜けています。さらに若手投手が投球練習を行っているブルペンでも打席に入って球筋をチェック。気がついたことなどをアドバイスしています。

 自らの右肩を“作っている”こともあるのですが、同じ左翼を争う高山のフリー打撃では2日連続で打撃投手を務めましたね。打ち終えて挨拶にいった高山に対して「外角と高めの球を打つときに体が浮いている」とアドバイスを行っています。ポジション争いをする競争相手に対しても“塩”を送るような姿勢です。競争相手という意識よりも高山が成長することがチーム力のアップにつながる-と考えるからこその言動です。まさにチームリーダーの思考回路ですね。

監督人事のてんびんも変わる

 そして、新外国人投手のガンケルが初めてフリー打撃の投手として登板した第1クール最終日の5日には、打席に入って“相手”を務めました。これもベテランでは異例の行動です。

 「普通、どんなボールを投げてくるのか分からない新外国人投手に対しては、あれほどのベテランは打席には入らない。遠慮するわ…と辞退するのが普通なんだよ。それを率先して打席に入り打っていた。なかなかできることじゃあない」

 球団関係者も驚いていましたね。

 「福留ぐらいになると体が元気なんだから、少しでもチームのために動こうという意識になるんだろうね。まあ、張り切りすぎて故障しなければいいけど、彼のグラウンドで見せる行動は若手たちにとってもすごく参考になるし、勉強になる」とは阪神OBの声です。

 まさに絶賛の嵐…ですが、こうした福留賛歌は何を物語るか。昨季まで阪神のチームリーダーは鳥谷と言われてきましたね。チーム生え抜きで名球会にも入った鳥谷こそが「チームを引っ張っていく立場である」と誰もが話していました。しかし、鳥谷はどちらかといえば黙ってプレーで表現するタイプだっただけに、リーダーとして強くタイガースを引っ張っていく姿勢が見えづらかったのも事実です。

 その鳥谷は昨季限りで阪神球団を退団。揚塩球団社長の「どうか今季限りでユニホームを脱いでいただきたい」という“戦力外通告”に対し、鳥谷は「他球団でプレーします」と即答。球団が提案した引退試合の開催も断り、昨オフは他球団移籍を模索しました。しかし、2月に入り、12球団の春季キャンプが始まった段階でも移籍先は見つかっていません。

 「引退試合も拒否したからもう阪神にも戻れないだろう。このまま静かに球界から去っていくのかもしれない。一説には実業家に転身するのではないか…という噂話すら出ている」と球団関係者は話しています。

 つまり生え抜きでチームリーダーと目されていた鳥谷が球団にとっては誠に不本意な形でチームを去った後、渇望していたリーダーに福留が“就任”。チームの地殻変動の流れが春季キャンプの序盤で明らかになった…といえば、言い過ぎでしょうか。もっと言い過ぎるなら、将来の阪神監督という人事に向けても鳥谷と福留のてんびんはこれまでとは様変わりしたのかもしれません。福留の存在は重く、鳥谷の存在は軽く…です。

個人主義貫いて

 福留への評価が上がる一方で、もうひとりのベテラン選手に対する球団周辺の視線が厳しくなってきています。それは今季でプロ17年目を迎える糸井嘉男外野手(38)ですね。今季が4年契約の最終年ですが、今キャンプでは「故障者」扱いですね。昨季の8月9日、広島戦(京セラ)の二回、盗塁を試みた際に左足首を痛めました。その後、左足首を手術し、今キャンプの練習は別メニューですね。当然ながらシートノックでは守備位置に就かず、ベースランニングも参加していません。

 糸井とすれば故障からの復活を目指す中で、契約最終年の今季にベストな状態で出場したい。そして好成績を残して再契約を勝ち取りたいという思いが強いでしょう。選手個々は個人事業主でもあります。まず自分自身のベストなパフォーマンスを発揮できるようなプロセスを踏んでいきたいと思うのは、至極当然ですね。

 しかし、42歳の奮闘を見る球団関係者の中にはこう話した人もいます。

 「糸井は常に個人主義やからね。福留とは全く違うわ。でも、シートノックもベーランも参加しないなら安芸(高知・安芸2軍キャンプ)でやればよかったのに…。若い子も見ているし、1軍であれだけ自分のことだけやるって、どうなん?」

 かなり辛辣な意見でしたね。これも、福留というお手本のようなベテラン選手が近くにいるからこその対比なのでしょう。ある意味、糸井にとっては“不幸な環境”なのかもしれません。

 福留が引っ張る阪神の春季キャンプはもう来週あたりには中盤を迎え、他球団との練習試合などがたくさん組まれます。そこではボーアやサンズ、ガンケルらの新外国人選手の結果が注目されるでしょう。もっともっと裏の裏まで取材してご報告しますから、楽しみに待っていてください。

【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや)

 1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。ラジオ大阪(OBC)の金曜日午後9時から「NEWS TONIGHT いいおとな」(http://www.obc1314.co.jp/bangumi/iiotona/caster.html)の『今日の虎コーナー』や土曜日午後7時45分からの「まさと・越後屋のスポーツ捕物帳!」(http://www.obc1314.co.jp/bangumi/okini/)に出演中。「サンスポ・コースNAVI」(http://www.sanspo.com/golf/tokushu/golf-t24944.html)ではゴルフ場紹介を掲載、デジタルでも好評配信中。

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