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【「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記】「サイン盗み」激震の大リーグ…合法「クセ盗み」のススメ

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阪神の矢野燿大監督。「クセ盗み」の高等戦術で上位目指せ=甲子園球場(撮影・今野顕)
阪神の矢野燿大監督。「クセ盗み」の高等戦術で上位目指せ=甲子園球場(撮影・今野顕)

 吹き荒れるサイン盗み厳罰の嵐…。矢野阪神はクセ盗み奨励で戦力アップに努めてほしいものです。米大リーグはアストロズのサイン盗み発覚から1球団のゼネラルマネジャー(GM)と3球団の監督が解任されるという異常事態に発展しています(1月17日現在)。日本球界でも、過去にサイン盗み疑惑は数々ありました。センター方向から捕手のサインを双眼鏡でのぞいて打者に伝達したり、二塁走者が同じく捕手の構えたコースを知らせたり…。それらは全てアウトですが、合法的なのは相手投手のクセを見抜いて球種を絞る“眼力”です。虎はクセ盗みを奨励して“隠れた戦力アップ”につなげてほしいですね。

問題の重大さ認識すべきだった

 年明けから海の向こうの大リーグが騒々しいですね。2017年にアストロズが本拠地の外野に設置したカメラで相手捕手のサインを盗み見て、音で打席の打者に球種を伝達していたとされる問題で、メジャーリーグ機構(MLB)は調査の結果、同球団のジェフ・ルノーGMとA・J・ヒンチ監督を1年間の職務停止処分とし、今年から2年間のドラフト1位、2位指名権を剥奪しましたね。アストロズはGMと監督をただちに解任しました。

 さらに17年にアストロズのベンチコーチとしてサイン盗みに関与していたことを指摘されたレッドソックスのアレックス・コーラ監督も解任され、当時の中心選手だったメッツのカルロス・ベルトラン監督も就任わずか3カ月で解任されたのです。ベルトラン監督は発表した声明のなかで「球界に関わってきた20年間、私はリーダーであることに誇りを持ち、物事を正しい方法で行ってきたが、今回はできなかった。チームのベテラン選手として、今回の問題の重大さを認識すべきだった。自分が取った行動を本当に後悔している」と反省の言葉を並べて事実関係を暗に認めたかのようでしたね。

 アストロズに17年シーズンに在籍していた投手の証言から明らかになったサイン盗み問題では、1球団のGMと3球団の監督が解任されるという前代未聞の事態となりました。今後もどのような流れになるのか、まだまだ余震は続くかもしれません。

日本の○○魔術の正体は

 海の向こうで起きたサイン盗み問題ですが、では日本球界ではどうなのか。近いところでは高校野球のある監督が相手チームの二塁走者の行動を疑問視し、大きな問題になったことがあります。さらに1998年オフには「ダイエー(現ソフトバンク)の複数の選手がサイン盗みをした」と地元の新聞社がスクープとして取り上げたこともありました。

 記事の内容は「97年から98年にかけて、外野スタンドに学生アルバイトを雇い、その学生に捕手のサインを双眼鏡などで盗ませ、メガホンを使って打席の打者に伝える」というものでした。スパイを行ったとされる日に、いかにも怪しげな人がスタンドでメガホンを“操作”している映像も発見され、大騒ぎになりました。日本野球機構(NPB)の調査の結果は限りなく黒に近い灰色として決着しましたが、当時の球団幹部は極めて重い処分を科せられています。

 実際にプロ野球を長く取材していると、“この手”の話はよく聞かされてきました。例えばパ・リーグで〇〇魔術とか言われた名監督の率いる万年Bクラス球団がその年には突然のように勝ちまくり、優勝争いを演じました。まさに〇〇魔術のように…。

 当時、その球団で主砲だった選手はこう打ち明けています。

 「その監督がチームにやってきてやり始めたのはセンターに裏方を配置して双眼鏡で捕手のサインをのぞき、旗を使って打者に球種やコースを伝達することやったんや。なるほどこれが〇〇魔術か…と思った記憶がある。球種が分かればみんな見違えるように打つんや」。その選手はある事情でセンターから送られてくる“サイン”を見なかったそうですが、この話には驚くようなオチがありますね。シーズンの終盤戦、同じ関西のチームとの優勝争いとなり、天王山ともいうべき決戦となりました。お互いの大エースの投げ合った試合で、その球団の打線は突然のように沈黙し敗れたのです。どうしてか…。

 「相手球団の〇〇監督がなぁ…。センターに裏方を配置して旗を持たせて振らせたんや。こっちの打者は突然、2つの旗が同時に振られたもんやから、どっちの旗が本当のサインか分からなくなって大混乱したんや。サッパリ打てなくなってハイ終わり…や」

 つまりサイン盗み返し…ともいえる奇策?の前に〇〇魔術は効力を失ったというわけです。

「クセ盗み」の達人を見習う

 かつての球界はどこか緩やかで、どこか脇の甘い部分もあったと思います。でも、今はこうした掟(おきて)破りは通用しません。コンプライアンスの厳しい現在ではセンターから双眼鏡…なんて話はご法度でしょう。

 ただし、今季に2005年以来、15年ぶりのリーグ優勝を目指し、その先に1985年以来の日本一獲得を目指す矢野阪神にはぜひとも奨励してほしいのは「クセ盗み」です。相手投手の投球フォームから球種を見破ったり、または一塁走者であるならばホームに投げるのか、牽制(けんせい)球なのかを見破る“眼力”を養ってもらいたいですね。そして、チームで相手投手のクセを共有し、戦略に役立ててほしいものです。

 例えば2003年と05年、こうしたクセ盗みを得意としていたのは島野育夫コーチ(故人)でしたね。03年には星野仙一監督のもとでヘッドコーチを務め、05年は岡田彰布監督のもとで1軍総合コーチを務めました。2人の監督の胴上げに大きく貢献しています。

 現在の球団では和田豊球団本部付テクニカルアドバイザーもクセ盗みの達人として知られていますね。現役時代は巨人・桑田真澄投手の投げてくる球種は全部わかっていた…と聞いたことがあります。ルール違反ではない“眼力”によって相手の次の球種が分かれば大変な戦力アップです。プロの打者は球種が分かればかなりの確率で打つといいますね。ぜひ、チーム全体でクセ盗みを奨励し、得点力のアップにつなげてほしいものです。

 2月からの春季キャンプでは、打者はスイングを完全にできる状態を一刻も早く作り、シーズンを戦える体力を築いてほしいものです。そしてキャンプ後半からオープン戦にかけては相手チームの分析に力を注ぐことになるでしょう。クセ盗みと並行して相手捕手の配球の傾向や、相手ベンチの采配の傾向などを研究して3月20日からのシーズンに入ってほしいものです。サイン盗みはご法度ですが、クセ盗みは高等戦術。そういう位置付けでいいのではないでしょうか。

【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや)

 1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。ラジオ大阪(OBC)の金曜日午後9時から「NEWS TONIGHT いいおとな」(http://www.obc1314.co.jp/bangumi/iiotona/caster.html)の『今日の虎コーナー』や土曜日午後7時45分からの「まさと・越後屋のスポーツ捕物帳!」(http://www.obc1314.co.jp/bangumi/okini/)に出演中。「サンスポ・コースNAVI」(http://www.sanspo.com/golf/tokushu/golf-t24944.html)ではゴルフ場紹介を掲載、デジタルでも好評配信中。

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