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【話の肖像画】福岡ソフトバンクホークス球団会長・王貞治(79)(11)ミスターは特別な存在

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250号本塁打を放ち、長嶋茂雄に迎えられる=昭和41年
250号本塁打を放ち、長嶋茂雄に迎えられる=昭和41年

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 《「国民的スター」のミスタージャイアンツ、長嶋茂雄さんは特別な存在という》

 同じユニホームを着て、同じ野球をやっているのですが特別な存在でした。ダイナミックな動き方、ホームランも打つし、チャンスにめっぽう強かった。

 守備も華麗ですごい。手のひらを“ヒラヒラさせる”送球はファンに受けていましたが、一塁手として実に捕りやすかった。飛び込んで捕球して、時間がないときは素早くピュッと投げてくる。パッと捕ってまだ走者が走っていると「アウトにすればいいんだろ」と余裕を持って投げてきた。捕り手のことを思って投げている感じのスローイングでした。黒ちゃん(黒江透修さん、遊撃手)なんかはスライダーしたり、ギュッと曲がったりして、とにかく捕るまで気が抜けない。それに比べてミスターの送球は本当に素直だった。

 後に長嶋さんに直接聞いたんです。すると「ファンの人を喜ばすにはどうしたらいいのか」ということをいつも考えていたという。われわれは打つこと、守ることに一生懸命で、見てくれる人たちのことは考えていませんでした。やっぱりプロなんですよ、あの人は。最初からプロフェッショナルだったんです。

 僕がホームランを量産し始めたのは4年目からです。長嶋さんは大学時代(立教大)から注目されて、プロに入ってもすぐに大活躍した。常に表舞台で光っていた。“本当のスーパースター”と呼べるのはミスターだけではないかと思います。

 《ONのイメージは、実は世間の評判と正反対》

 僕の場合、おやじの教えも影響しているのかな。中国の言葉に『中庸の精神』というのがあります。「中くらいでみんなと仲良くやりなさい」ということです。おやじは「日本に生かしてもらっている」という考えを持っており、小さい頃からそう教えられていた。だから「目立たぬように」という姿勢は、僕なりのこだわりだったかもしれませんね。

 ちまたでは「派手なミスター、真面目な王」というイメージになっていましたが、それは作り上げられたものだと思います。僕は年も5歳下だし、プロ入りも1年後。夜遊びだって僕の方がよく行っていたけど、ミスターが防波堤になってくれた。次男坊的に好き勝手に自由にやれたのもミスターのおかげですよ。

 面倒見もいい。ある遠征先で、寝坊した僕がドタバタと着替えている間、横でミスターがちゃんと荷造りしてくれた。またあるゴルフ場の会員権が売り出され、みんなで買おうとなったとき、「ちょっと待て」とミスターが制したんです。ゴルフ場まで実際に車を走らせて、どのくらいかかるのかを自分の友人に調べてもらった。これなら大丈夫ということを確認してみんなで入会した。しっかりしています。常に身の回りの整理整頓とかもきっちりしている。金銭感覚だってそう。僕は結構いいかげん、ミスターみたいだったらもうちょっと給料をもらえたんじゃないかな(笑)。

 グラウンドではお互いライバル同士、切磋琢磨(せっさたくま)した戦友ですが、僕にとってミスターはいい兄貴分です。とかく世間では2人の間に距離があったかのように伝えられたこともありましたが、ONだけにしか分からない“深い絆”があります。(聞き手 清水満)

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