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【「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記】新人王逃した近本よ、9月の君になれ!!

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契約更改した近本光司=兵庫県西宮市の球団事務所(撮影・榎本雅弘)
契約更改した近本光司=兵庫県西宮市の球団事務所(撮影・榎本雅弘)

 近本よ、“9月の君”を貫けば1億円は向こうからやってきます。ルーキーイヤーの今季、セ・リーグ新人最多安打159本を記録し、36盗塁で盗塁王にも輝いた阪神・近本光司外野手(25)は初めての契約更改で、新人野手では史上最高の昇給額となる3千万円アップの年俸4500万円で更改しました(金額はいずれも推定)。新人王は惜しくも39票差でヤクルト・村上宗隆内野手(19)に及びませんでしたが、新人特別賞も受賞。来季はより一層の飛躍が期待されます。では、2年目のジンクスをはね返し、来オフの契約更改で1億円に迫ることを可能にする鍵は何か。それが9月の君…です。

おかずも2品ほど増え

 新人野手としては史上最高の昇給額3千万円アップ。何かと世知辛い年の瀬に近本の笑顔は世の中に明るい光を差し込んでくれるかのようでした。年俸4500万円なり!! 昨年3月に結婚した未夢(みゆ)夫人も、今年の7月に誕生した長女もさぞかし一緒に喜んだことでしょう(まだ生後5カ月の娘さんは分かるわけないか…)。

 たぶん、夕食のおかずは2品ほど増えて、スーツも新調し、車も買い替える? 人の懐をこれ以上詮索してもこっちは惨めになるだけですから、もうやめておきましょう。本題に入る前に少しだけ恨み節も書いときましょうか。実は小生、連盟表彰などの投票権をほとんど持っています。最優秀選手賞(MVP)を始め新人王、ベストナインにゴールデングラブ賞。まず両リーグのMVPは巨人・坂本勇人と西武・森友哉を入れました。これは順当に受賞…。そして新人王なのですが、セ・リーグの欄に記入したのはもちろん「近本光司」です。

 今季の近本は1958年(昭和33年)に長嶋茂雄(巨人)がマークしたリーグ新人最多安打を61年ぶりに更新する159安打を記録。さらに36盗塁で盗塁王のタイトルも獲得しました。チームも3位に食い込み、クライマックスシリーズ(CS)のファイナルステージまで進出しています。記録のインパクトやチームへの貢献度&チームの躍進度を見ても近本しかいない、と判断しました。

今でも思っている

 しかし、結果は39票差でヤクルト・村上が受賞し、近本は新人特別賞。村上は高卒2年目(熊本・九州学院出身)で36本塁打、96打点を記録しました。10代の本塁打数としては1986年(昭和61年)の清原和博(西武)の31本塁打を更新。96打点も1953年(昭和28年)に中西太(西鉄)がマークしていた86打点を塗り替えました。立派な数字です。

 しかし、村上の所属するヤクルトは最下位。シーズン途中から下位に低迷し、小川淳司監督もシーズン終了後に辞任(高津臣吾新監督)しています。村上の成績を見ても、184個の三振は両リーグ最多で、15失策はリーグで2番目に多い数字なのです。

 こうしたチーム成績や個人成績のマイナス部分をどう評価するのか。比較した結論はやはり「近本光司」となったのですが…。コレ、文句じゃありませんよ。実際に記者投票で村上に投票した記者数が多かったわけですから、さまざまな評価の仕方の中で村上が近本を上回ったということですよね。でもなぁ…。僕は近本だと…今でも思ってますわ、ホンマに。

 てなことで、話を本題に戻します。新人王を逃した近本は会見で「でもやっぱり冷静に見れば村上君の方がすごい」と話しています。悔しさをにじませながら…。では、その悔しさを晴らすにはどうするのか。これはもう来季以降の成績でさらに近本のすごさを見せつけるしかないでしょう。

 来季はプロ2年目。球界には古くから「2年目のジンクス」という言葉がありますね。ルーキーイヤーで活躍した選手が相手チームから研究されたり、選手自身がさらに飛躍を目指して1年目から形を変えたりして、成績不振に陥ることを指しています。近本が2年目のジンクスをはね返し、今季以上の成績を残すための鍵はなにか。

 それが「9月の君」なのです。

変えた?打撃スタイル

 今季の成績を月別に見ると、3割4分9厘、17得点、5盗塁をマークした4月(24試合)が最もいいですかね。まだ相手チームも近本の特長をつかめず、対戦は1回り目でした。そして、4月の次に好成績だったのが実は9月なのです。9月は21試合に出場して打率2割9分7厘、12得点、10盗塁。盗塁数は5月と並ぶ10盗塁。月別ではこの2カ月が最も走っていますね。

 4月と9月以外でも5月は2割8分3厘、13得点。7月も2割9分5厘で17得点、3盗塁と数字は残していますが、ここでなぜ9月だけに絞るのか。それは「9月に入って近本は打撃スタイルを変えたんだ」という証言者がチーム内にいるからです。

 「近本は9月以降、打撃のミートポイントをやや捕手寄り、つまり体の左側にズラしたんだ。そうすることによって投球を長く見ることができるようになった。自身は盗塁王がかかっていて出塁しないと盗塁はできない。チームもCS出場権がかかっていて1番打者として、やはり出塁率を上げないといけなかった。なので気持ち良くバットを振ることよりも出塁率を上げる意識の方が上回った」

 あるチーム関係者の言葉です。打率2割9分7厘、10盗塁の結果には隠された意識の変化があったとみています。

 近本の成績を見返すと159安打を放ちながら打率は2割7分1厘、シーズンで獲得した四球は31個でした。142試合に出場して640打席で586打数でしたね。この打数の数字を来季は少なくすれば分母が小さくなり、打率はアップします。出塁率も上がり、結果として盗塁も増えるというわけです。

 つまり気分良くバットを振る欲求を抑え、出塁率を上げる打撃スタイルへの変身が今季の9月はできていました。それを来季は開幕からシーズンを通してやり抜けるかどうかが鍵だ…というわけです。近本よ、9月の君になれ!!とはそういう意味なのです。

 さらに指摘するならパ・リーグとの交流戦における対策です。今季の交流戦18試合は散々でしたね。打率5割をマークしたロッテ戦以外はほとんど封じられました。オリックスには13打数0安打、ソフトバンクは13打数1安打、日本ハムは14打数1安打。来季は5月26日のロッテ戦から6月14日の楽天戦まで18試合が組まれています。この18試合をどう攻略するのかも大きな鍵ですね。

 近本が成績不振だった交流戦はチームも6勝10敗2分でした。逆に9月は6連勝フィニッシュで13勝8敗でした。虎の来季を決めるのは、やはり近本です。9月の姿をシーズン通して貫けば、来季の契約更改では1億円が見えてきますよ。頑張ってください。プロの世界は稼いでナンボです。嫁や子供にいい暮らしをさせられるには何が大事なのか。結論はひとつ、グラウンドで存在感を増すことしかありません。

【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや)

 1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。ラジオ大阪(OBC)の金曜日午後9時から「NEWS TONIGHT いいおとな」(http://www.obc1314.co.jp/bangumi/iiotona/caster.html)の『今日の虎コーナー』や土曜日午後7時45分からの「まさと・越後屋のスポーツ捕物帳!」(http://www.obc1314.co.jp/bangumi/okini/)に出演中。「サンスポ・コースNAVI」(http://www.sanspo.com/golf/tokushu/golf-t24944.html)ではゴルフ場紹介を掲載、デジタルでも好評配信中。

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