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【「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記】早くも合格点の矢野采配…試合に全神経集中せよ

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若手の活躍で球団首脳から高評価を得ている阪神の矢野監督=5月17日、阪神甲子園球場(加藤孝規撮影)
若手の活躍で球団首脳から高評価を得ている阪神の矢野監督=5月17日、阪神甲子園球場(加藤孝規撮影)

 矢野監督の手腕は合格点-。阪神球団首脳が矢野燿大(あきひろ)新監督(50)のベンチワークに高い評価を下していることが明らかになりました。開幕42試合消化時点で21勝19敗2分けの同率3位。開幕前はBクラス予想が大半を占めた中で、打ではルーキーの近本、木浪らを積極起用し、投でも青柳、守屋ら“新戦力”を発掘。自らのパフォーマンスでムードを盛り上げて若手のプレッシャーを軽減するなど新監督の手腕が躍進の原動力とみているのです。ただし、まだ残りは100試合…。新監督は周囲の評価を気にせず采配に集中してほしいですね。

 ■阪神の優勝予想はレジェンドのあの人だけ

 歴史的な連勝-なんて表現までスポーツ新聞はしていました。14日からの敵地・東京ドームでの巨人戦は1戦目が終盤の逆転勝利。2戦目はエース菅野をボコボコに打って大勝。開幕から巨人戦に6連敗していた阪神が全ての鬱憤を晴らすかのように痛快な連勝を飾ったのです。

 勢いに乗って本拠地・甲子園球場で広島をやっつける…と思っていたら初戦は2-10の大敗。ダメだと思ったら勝ちまくり、これはいけるぞ…と思ったらコテンと負けるのは長く阪神を見ている側とすれば、ある意味で想定内でもあります。何度もこのパターンに翻弄?され続けてきましたからね。なので褒めるタイミングとけなすタイミングが実に難しいチームでもあるのです。褒めると負け続け、けなすと見違えるように勝ち始める。阪神を長く取材していると、褒めるのも、けなすのも一服おいてから…となるのですね(笑)。

 そんなこんなを含めて阪神はシーズン42試合を消化した時点で21勝19敗2分け。貯金2でヤクルトと並んで同率3位です。前回のコラムでも書きましたが、シーズン開幕前の評論家諸氏の順位予想を思い出してください。阪神の順位はほとんどがBクラス。よくても3位か4位だったはずです。 

 確か1985年(昭和60年)の21年ぶりリーグ優勝、球団初の日本一にチームを導いた吉田義男さんだけは、所属するスポーツ新聞で「阪神は優勝ですわ。やるからには優勝でっせ!!」と優勝予想をしておられましたね。現時点でのチーム状況を見るなら、さすが慧眼!!と頭が下がる思いです。やはり並みの野球観では阪神を日本一には導けないのでしょう…。

 ■新旧かみ合い、センターラインを重視

 少し、いやかなり話が脱線しましたが、周囲の予想を大きく覆す現状に阪神球団内部からはこんな声が聞こえてきましたね。

 「矢野監督の采配は合格点やな。ベンチワークや選手起用を含めてすごくええやんか。誰とは言わんけど、かなり差があるわ。ほとんど同じ戦力でここまで頑張れるのやからたいしたもんや」

 そう、矢野新監督のベンチワーク、采配や選手起用について球団内部からは早くも「合格点や」という高い評価が漏れ伝わってきているのです。

 打線構成においてはルーキー近本、木浪をスタメンに抜擢(ばってき)。高山、中谷や江越ら金本チルドレンの起用にこだわらず、春季キャンプやオープン戦で結果を出し続けたルーキー2人をグラウンドに出し続けています。これが糸井、福留の両ベテランを刺激し、新旧のかみ合った打線を生み出しているわけです。さらに近本と木浪は中堅と遊撃です。捕手の梅野、二塁の糸原もポジションを固定されていてセンターラインが定まっています。

 「矢野監督は捕手出身なので、ゲームメークは守りから考えるんだ。センターラインを固定するのは基本だからね。それがよく分かっている。これが点を取りたい、打ちたい…に走ると、選手を打撃の好不調で起用するようになって守りがおろそかになる。前体制がそれだった。矢野監督は前体制の失敗をよく分析した上でセンターラインを重視しているのかもしれない」

 阪神OBの言葉ですが生きた教材を参考にしたのかどうか…。ともかく近本、木浪の抜擢と梅野と糸原の固定は打線のつながり、守備面での呼吸などさまざまな部分でチームに好影響を及ぼしているのです。

 投手陣でも藤浪やガルシアの不振という大きな誤算がありながら、青柳や岩田、才木らを辛抱強く使い、先発ローテーションを守っています。中継ぎも守屋や島本らを加えて、勝ちパターンならジョンソン、ドリスという鉄壁の終盤を構成しました。

 「今年の阪神投手陣を見ていると、相手球団のマークすべき打者をしっかりと定めていて、打者に対する攻め方も一貫性が見受けられる。矢野監督は捕手出身なのでそうした細かな部分もバッテリーに注入しているのではないか。ミーティングの内容が向上したのではないか」と阪神OBは話していました。

 ただ、42試合消化時点でのチーム防御率3・77はリーグ4位。失点184はリーグ5位。まだまだ改善すべき点は多くあるはずです。

 ■派手なパフォーマンスに隠された意図

 そして、矢野監督を評価する最大のポイントはベンチを明るくするパフォーマンスです。選手がヒットを打てば拳を突き上げ、点が入れば万歳する。サヨナラ本塁打を放った福留を一番先にホームベースに駆けて出迎えたのも矢野監督でした。これは自然にやっているパフォーマンスでしょうか? 違う!!と断言する阪神OBがいます。

 「金本前監督の時、矢野はコーチでベンチに入っていた時期があった。その時、矢野の表情はとても暗く、冷静沈着を絵に描いたような姿だったはず。それが監督になってベンチに入った途端に大はしゃぎ。意識して演じないと、あんなには変われないよ」

 では、どんな意図があるのか。監督自らがハデなパフォーマンスを演じることによって、若手主体のベンチは明るくなり緊迫感が薄れます。若い選手はどうしても結果にとらわれ気味になりますが、ベンチのムードが明るいことによって前向きな気持ちで打席に入ったり、マウンドに向かえたりするのです。きっと昨季の2軍監督時代に現代の若手気質を学んだことが、あのパフォーマンスに結びついているのではないでしょうか。

 と…ここまでコレでもか、と矢野賛歌を書き続けましたが、まだまだシーズンは100試合残っています。果たして阪神球団内部の高い評価が最後まで続くのか。それは今後のチーム成績に左右されるでしょう。明るいベンチワークも負けが込めば「ご気楽にやっているからや」とちゃぶ台返しで批判されるのがこの世界です。

 1985年(昭和60年)にチームを日本一に導いた吉田監督はその2年後、球団ワースト記録で大敗し、ユニホームを脱ぎました。その時の言葉はいまだに忘れられません。

 「所詮、監督はその時代、その時代の一コマですわ。チームは永遠に続きますねん。監督とはそういうものですわ」

 勝って絶賛され、負けて批判され…。時代の一コマとして精いっぱい、目の前の試合に臨むことしか監督のできることはありません。矢野監督も周囲の評価を気にせず、目の前の試合に全神経を集中してほしいものです。

     ◇

 【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) 1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。ラジオ大阪(OBC)の金曜日、午後10時から「NEWS TONIGHT いいおとな」(http://www.obc1314.co.jp/bangumi/iiotona/caster.html)の『今日のトラコーナー』や土曜日午後6時45分からの「まさと・越後屋のスポーツ捕物帳」(http://www.obc1314.co.jp/bangumi/okini/)に出演中。「サンスポ・コースNAVI!」(http://www.sanspo.com/golf/tokushu/golf-t24944.html)ではゴルフ場紹介を掲載、デジタルでも好評配信中。

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