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【「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記】宿敵・巨人をギャフンと言わせるには…鍵握るかつての新人王

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11日の中日戦の五回、代打で二塁打を放った阪神の高山。完全復活が待たれる=甲子園(山田喜貴撮影)
11日の中日戦の五回、代打で二塁打を放った阪神の高山。完全復活が待たれる=甲子園(山田喜貴撮影)

 打倒・原巨人はヒットメーカー高山がよみがえり、福留&糸井を二者択一に追い込む“地殻変動”の先にあるのかもしれません。阪神は5月10日の中日戦(甲子園球場)に勝利した時点で19勝16敗2分けの同率2位。ルーキー近本の活躍にチーム全体が引っ張られた結果ですが、さらに加速し巨人をやっつけるには2016年の新人王・高山俊外野手(26)の覚醒が必要-という声を聞きます。外野の一角を奪い、両ベテランをひとつのポジションで競わせるぐらいになれば戦力は厚みを増す-というわけです。14日からの巨人2連戦(東京ドーム)、矢野阪神は若虎のバットで宿敵をギャフンと言わせましょう。

Bクラス予想が一転

 シーズン開幕から早いもので1カ月以上が経過しました。戦前の順位予想と合致しているチームもあれば、アレレ…こんなはずじゃあなかったのに、と首をひねりたくなるチームもあります。37試合を消化した時点で19勝16敗2分けの貯金3、ヤクルトと同率2位に踏ん張る矢野阪神は良い意味で「こんなはずでは…」という言葉が漏れてしまう?チームでしょう。

 なにしろ開幕前の関西の野球評論家の予想はほとんどがBクラス。中には「阪神を最下位には予想したくないけど、他のチームで阪神より下のチームが見当たらない」と“豪語”していた評論家もおられました。そういうアンタはどうやねん?と聞かれると、穴があれば入りたい…。戦力評価はあまり高くなかったですね、ホンマに。

 しかし、阪神を下位予想にしていた評論家の見通しはオープン戦終了の時点では理解できます。福留&糸井の両ベテラン頼みで新外国人マルテが出遅れた打線は、他球団との比較でも見劣りしていました。二塁、遊撃、中堅というセンターラインも定まっておらず、投手陣でも藤浪が不振、メッセンジャーに往年の迫力が薄れ、ガルシアも前年13勝の実績をアテにできない…などなど、埋まらない課題が多すぎるように見えたのです。

最大の原動力は近本の奮闘

 ただ、開幕前の予想を聞いた矢野監督は「おもろいやん。自分も(評論家時代に)予想はしてたけど、当たらんやん」と一笑に付していました。低い予想を覆すだけの自信があったのでしょうかね。まあ、まだまだシーズンは先が長く、結局は収まる所に収まって、4カ月後、評論家諸氏の予想は的中しているかもしれませんが…。

 そこで本題です。では下位予想が圧倒的だった阪神が、どうして37試合消化時点で健闘しているのか-。最大の原動力はルーキー近本の頑張りですね。36試合に出場し、打率3割7厘、本塁打4本で打点18、盗塁は10。得点圏打率はリーグ2位の3割8分7厘です。春季キャンプ時は大学時代の故障歴で「弱肩」と言われていましたが、シーズンが始まると3月29日のヤクルト戦(京セラD大阪)で本塁を狙った坂口をホームベース手前で刺すなど、そつなくこなし、守備面でも立派に中堅を守っています。安打は量産し、長打もあり、チャンスに強く、そして走れて守れる。素晴らしいですね。

 スーパーマン近本の出現に刺激を受けた他の若手野手も、続々と目を覚まし始めました。捕手の梅野は35試合に出場し、打率2割9分6厘、得点圏打率3割8厘、4番・大山も37試合出場で打率2割6分8厘はまだまだですが、打点は23。本塁打も6本と徐々に4番らしくなってきました。開幕後は調子の上がらなかった糸原も近本の直後の2番に定着するようになると、クセ者ぶりを試合で発揮し始めています。

 なにより大きいことは捕手・梅野、二塁・糸原、遊撃・木浪に中堅・近本と長年の懸案だったセンターラインが定まり始め、試合運びが安定してきたことです。センターラインの安定は本拠地・甲子園球場での勝率にダイレクトに結びついています。今季は17試合消化時点で9勝8敗。昨季は21勝39敗2分けと苦手にしていた本拠地の勝率を改善しているのです。

 「投手陣を中心とするセンターラインが定まったことで、甲子園球場の広いグラウンドを持て余すことが少なくなった。相変わらず本塁打は少ないけど、僅差のゲームを競り勝っている。矢野監督の守備重視の采配が大きいのだけど、甲子園に弱いチーム構成から甲子園に強いチーム構成に脱皮し始めたのではないかと期待している」とは阪神OBの言葉です。

対巨人、逆襲の虎となれるか…鍵を握るのは

 ただし、慢心してはいけません。チームの目標はあくまでも14年ぶりのリーグ制覇。上には34試合消化時点で21勝12敗1分けの貯金9で首位を快走する原巨人がいます。打倒・原巨人を果たさない限り、悲願の優勝はあり得ません。14日から敵地・東京ドームで巨人2連戦が行われますが、ここでシーズン開幕からの対巨人6連敗を止め、逆襲に転じなければなりません。さらに戦力的にワンピースもツーピースも上積みして臨まなければならない「絶対に負けられない戦い」なのですね。

 期待する最大の駒は高山です。日大三高-明治大から15年ドラフト会議で1位指名。16年のルーキーイヤーは134試合に出場して打率2割7分5厘、本塁打8本、打点65で新人王に輝きました。「完成型に近い」とまで当時の金本監督に絶賛されたスイングは一体どうしてしまったのか。その後の17年、18年と成績はジリ貧。出場試合数も103→45→そして今季は12試合と落ちる一方です。大学4年時の東京六大学の秋季リーグでは当時の安打記録127本(1967年=高田繁・明大)を抜く131安打をマーク。プロ1年目で新人王に輝いた球界の逸材はどうしてしまったのでしょうか。

 阪神OBのひとりはこう解説しました。

 「高山の長所は投球を手元まで呼び込み、センターから左方向に広角に打てることだった。ポイントが近くても打ち返せるほどのスイングスピードを兼ね備えていた。それがプロ2年目に金本前監督から右方向への強い打球を求められ、長打を増やすことを要求されてからおかしくなった。引っ張る意識から右腰の開きが早くなり、スイングの軌道が腹切りのように変わってしまった」

 元来の安打製造機に長距離砲の要素を加味させようとした前体制の指導が、逸材に変な影響を与えたというわけです。しかし、金本前監督から矢野監督に交代し、現体制下では右方向への強い打球&長打も強いられなくなりました。大きな転機を迎えたと言えます。

 高山は開幕1軍も4打数ノーヒットで4月4日に2軍落ち。その後のウエスタン・リーグで20試合に出場し、打率2割9分6厘、本塁打1、打点6と調子を取り戻して4月30日に再昇格しています。本来の左方向への鋭い打球が増えてきましたね。

 高山が安打製造機ぶりを取り戻し、外野の一角を奪うなら、福留と糸井はひとつのポジションで競争となります。そこまで高山が戻ってくるならチームの新陳代謝はさらに加速し、戦力に厚みを増すはずです。絶好調の原巨人に対抗するにはそれぐらいの戦力的な刺激がほしいですね。

 14日からの巨人2連戦は今後の展開を見る上でも重要な戦いです。もしも連敗なら対巨人8連敗というあってはならない数字に直面します。巨人に対する苦手意識が芽生え始めるなら、これはその後のシーズンに尾を引きますよ。

 逆に連勝なら巨人に詰め寄る足がかりになるでしょう。近本で始まり、梅野や大山、木浪、糸原が追随した虎の波。これをさらに大きなウエーブにする起爆剤は高山の覚醒ではないでしょうか。東京ドームは打ち合いになります。高山も加わった若虎のバットが巨人戦でのビハインドの空気を変えてくれることを、大いに期待したいですね。

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 【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) 1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。ラジオ大阪(OBC)の金曜日、午後10時から「NEWS TONIGHT いいおとな」(http://www.obc1314.co.jp/bangumi/iiotona/caster.html)の『今日のトラコーナー』や土曜日午後6時45分からの「まさと・越後屋のスポーツ捕物帳」(http://www.obc1314.co.jp/bangumi/okini/)に出演中。「サンスポ・コースNAVI!」(http://www.sanspo.com/golf/tokushu/golf-t24944.html)ではゴルフ場紹介を掲載、デジタルでも好評配信中。

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