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【「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記】万能新人・近本の躍動が続くうちに

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2日の広島戦で安打を放ち、ガッツポーズする阪神の近本。連続試合安打の球団新人記録を塗り替えた=甲子園球場(門井聡撮影)
2日の広島戦で安打を放ち、ガッツポーズする阪神の近本。連続試合安打の球団新人記録を塗り替えた=甲子園球場(門井聡撮影)

 近本劇場の大盛況のうちに“優勝戦力”構築が急務です。阪神はドラフト1位ルーキー近本光司外野手(24)=大阪ガス=が連続試合安打の球団新人記録を更新(13試合)する大活躍。ルーキーに引っ張られる形で打線が機能し、チーム打率2割4分1厘はリーグ4位、得点115は同3位。そして盗塁18、犠打25は同トップ(数字はいずれも5月2日現在)。借金を返して浮上しましたが、近本が脚光を浴びる一方で戦力的な課題は消えていません。14年ぶり優勝のためには近本によってもたらされた追い風をうまく生かしてほしいものです。

 ■時代とともに…甲子園の思い出

 5月1日の広島戦、約30分遅れで開始された試合を甲子園球場の記者席で見ました。取材記者として初めて甲子園球場の記者席に座ったのは昭和56年(1981年)の夏頃だったと記憶しています。そこから平成をまたぎ、令和(れいわ)と時代が移った初日、甲子園球場の記者席に座った率直な感想はこうです-。

 数々の歴史的な瞬間を見られた幸福感。勝ったり負けたりの中で原稿のネタを絞り出した日々への懐かしさ。そしてヤンチャな極悪記者をいつも優しく迎え入れてくれた甲子園球場と阪神タイガースの温かみ…そんな感じですね。

 細かな日時は書きません。脳裏に走馬灯のように浮かぶシーンをざっと挙げましょう。昭和60年の4月、シーズン初めての巨人戦でバース、掛布、岡田がバックスクリーン3連発。なぜか気になったのはマウンド上の槙原ではなく、捕手の佐野のキャッチングでしたね。スライダーなど変化球を捕る際に背中が大きく動いていました。どうしてそこが気になったのかいまだに分かりません。

 平成に入り、亀新フィーバー。八木裕の幻のサヨナラホームランは平光主審のジャッジが覆ったのですが、あの時、どうして阪神の中村監督や選手たちは素直に?ベンチに戻ってきたのか。一度ゲームセットと宣告された試合がどうして再開されたのか…。島野コーチはロッカー内のお風呂に入っていたのです。現在のようなリクエスト制度もない時代でした。確か試合終了は午前0時30分頃でした。阪神電車や地下鉄は終電が過ぎていたはずです。どうやって家に帰ったのか、どうしても思い出せません。

 平成7年1月の阪神大震災。午前5時過ぎの発生から約3時間後、甲子園球場にたどり着きました。すぐ近くの阪神高速の高架が崩落しているのに銀傘も照明灯もアルプスも微動だにしていませんでした。記者席に登ってみた球場の全景はいまだに瞼(まぶた)に焼き付いています。甲子園球場はすごい…。感動が胸に迫ってきましたね。ここが“職場”なんて最高だわ…と思った記憶があります。

 まだまだ思い出に残るシーンはいっぱいあります。ただ、そろそろ本題に入らないといつまで一人で思い出に浸ってるんや…とお叱りを受けるので、話を令和新時代の現在に戻しましょう。

 ■ファン待望…スーパーマンの活躍

 新時代を迎えた阪神に新たなスター誕生の予感が漂い始めました。そうドラフト1位ルーキー、近本の大活躍です。4月18日のヤクルト戦(神宮)から5月2日の広島戦(甲子園)まで13試合連続安打。これは赤星憲広氏が持っていた阪神新人の連続試合安打記録を塗り替えるものです。13試合連続安打の2日現在、近本の打率3割4分は巨人・坂本勇に続くリーグ2位。本塁打4本と長打力もあり、盗塁8はヤクルト・山田哲の9に続くリーグ2位です。さらに得点圏打率4割3分5厘は広島・菊池涼の5割に次ぐ2位ですね。

 つまりヒットメーカーで長打も打てて、走れる上に勝負強い。阪神ファンの誰もがこんなスーパーマンを待っていたのです。ほっぺたをつねってみてください。ほら、やはり近本光司選手は縦ジマのよく似合う阪神の1番打者ですよ(笑)。

 プロ野球の水に慣れてきた4月中旬からわずか2週間で打率を2割6分7厘から3割4分まで上げてきた近本の躍動に阪神打線も引っ張られていきました。得点115はリーグ3位。チーム盗塁数18と犠打数25はともにトップ。矢野燿大(あきひろ)新監督(50)の超積極野球のタクトとも大いに関係するのですが、チームに機動性が出てきたのです。

 4月21日の巨人戦に敗れ、本拠地・甲子園球場で伝統の一戦に3連敗を喫した時点でのチーム成績は7勝13敗1分けでしたね。借金6にあえいでいたのに、近本の躍動が始まってから5月2日までの9試合は7勝2敗。まさに近本劇場は大盛況といえるでしょう。

 ただし、神様・仏様・近本様と浮かれてばかりではいけません。待望久しい超強力核弾頭を得たチームは、その上でさらに優勝に向かって前進せねばなりません。目標設定が14年ぶりの優勝である以上、足りない戦力的ピースを今のうちに埋める作業を進めてほしいものですね。

 ■今こそ優勝のための戦力整備を

 例えば外国人選手。現在は出遅れたマルテを1軍で起用していますが、踏み出す左足はノーステップです。緩急の差が大きい日本人投手を相手にして、これでタイミングが取れるのか? 5月1日の広島戦では来日1号を甲子園の左中間にほうり込みましたが、カウント3-0から明らかにストライクを取りに来た球をジャストミートしたわけで、将来の活躍を期待させる内容とはほど遠かったですね。

 大山4番を囲む3番・糸井も得点圏打率が2割4分1厘と低く、5番・福留は打率2割3分2厘と打撃の状態は上がってきていません(いずれも5月2日現在)。近本頼みがどこまで続くのか。やはり外国人野手を含めたポイントゲッターの補強を急ぐべきではないでしょうか。

 投手陣でも先週のコラムでも書きましたが、藤浪はいつ2軍で投げるのでしょう。現状の先発陣は西、青柳、岩貞、才木、秋山、岩田で回していますね。開幕前の構想から見れば様変わりですよ。メッセンジャーは1軍に合流しましたが、ガルシアもまだ2軍。チームの雰囲気がいい状況の中で一刻も早くガルシアや藤浪を1軍戦力に整備してほしいものです。もし、先発陣が開幕前の構想に近づいたなら、その時こそ14年ぶりの優勝を現実味をもって目標にできるのではないでしょうか。

 それにしても近本はドラフト抽選クジで2連敗(藤原→ロッテ、辰巳→楽天)した後に1位指名した選手です。世の中はどう転ぶかわかりませんね。藤原も辰巳もまだ1軍で活躍はしていませんから…。ただ、ひとつだけ言えるのは大学から社会人野球を経てプロにドラフト1位で入団してきた近本は(1)即スタメン起用しなければ意味がない(2)技術的に出来上がった選手なので指導者が触りにくい(3)アマとプロの技術的な差をあまり感じなくて気後れしない-といったアドバンテージがありました。

 投手は高卒でもいいが、野手はできれば社会人か大学出身者を指名すべき…と話した阪神OBがいましたが、(1)~(3)の成功要素を再確認させてくれましたね。今後のドラフト戦略の参考となる活躍なのでしょう。

     ◇

 【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) 1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。ラジオ大阪(OBC)の金曜日、午後10時から「NEWS TONIGHT いいおとな」(http://www.obc1314.co.jp/bangumi/iiotona/caster.html)の『今日のトラコーナー』や土曜日午後6時45分からの「まさと・越後屋のスポーツ捕物帳」(http://www.obc1314.co.jp/bangumi/okini/)に出演中。「サンスポ・コースNAVI!」(http://www.sanspo.com/golf/tokushu/golf-t24944.html)ではゴルフ場紹介を掲載、デジタルでも好評配信中。

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