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【スポーツ記者リポート】マラソン前田彩里、我慢のレースでつかんだ未来

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名古屋ウィメンズマラソン 10位でゴールする前田彩里=10日、ナゴヤドーム(鳥越瑞絵撮影)
名古屋ウィメンズマラソン 10位でゴールする前田彩里=10日、ナゴヤドーム(鳥越瑞絵撮影)

 我慢のレースに、プライドが垣間見えた気がした。今月10日の名古屋ウィメンズマラソンで27歳の前田彩里(さいり)=ダイハツ=が2時間25分25秒で10位に入り、2020年東京五輪代表選考会「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」の出場権を獲得。「最低限MGCを目標にしていたので、ホッとしているのが正直なところ」。実力を出し切った思いではなかったのだろう。笑顔は控えめだった。

 前田は昨年、3月の名古屋ウィメンズと8月の北海道の2本を走ったが、いずれも2時間30分を切ることができず、MGCに出るためには名古屋ウィメンズが事実上のラストチャンスだった。五輪出場は亡き父、節夫さんと交わした約束。2016年リオデジャネイロ五輪は足の故障で選考会出場を断念せざるをえなかっただけに、東京五輪にかける思いは人一倍強い。そのため、名古屋ウィメンズでは攻めのレースはできなかった。

 序盤から5キロ17分10秒前後の第2集団でレースを展開。福士加代子(ワコール)や岩出玲亜(れいあ)=アンダーアーマー=らが走る先頭集団とは距離を置いた。林清司監督は「少しでもMGCにリスクが出ることはやりたくなかった。レースもすごく我慢させた」と苦渋の選択だったことを明かす。前田も監督の指示通りに前半は“守りのレース”に徹し、MGC出場条件をクリアすることにこだわった。

 佛教大4年で出場した14年大阪国際女子マラソンで日本学生記録を更新するなど潜在能力の高さは誰もが認めるところ。林監督が「これが前田彩里の力ではない」と話せば、前田も「レースの出来は7割ぐらい」。東京五輪を目指すためのスタートラインに立ったにすぎない。

 チームメートには4歳下の松田瑞生(みずき)もいて、今後は2人で切磋琢磨しながらMGCで“ワンツーフィニッシュ”を目指すことになる。「一番強いのは五輪に出たい気持ち」。そのためには全力を出し切れないレースがあってもいい。(丸山和郎)

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