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【スポーツ Catch Up】2ステージ制、考えられたJ1新制度の危うい土台 収益アップは不透明

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【スポーツ Catch Up】2ステージ制、考えられたJ1新制度の危うい土台 収益アップは不透明

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 サッカーのJ1は2015年から2ステージ制(前後期制)とポストシーズンの導入を決め、当面は14年が1シーズン制で争う最後の年になる。新制度では1年を通じて最多勝ち点を奪ったクラブを年間王者とする公平性が損なわれ、Jリーグが“錦の御旗”に掲げる関心度と収益アップにつながるかも不透明。選手やサポーターに受け入れられると仮定すれば考えられた次善策にはなっているものの、机上の空論の域を出ない不確定要素が山積みとなっている。

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 ポストシーズンには年間王者決定戦のチャンピオンシップ(CS)とスーパーステージ(SS)があり、年間最多勝ち点クラブはCS出場権を獲得する。SSではCS出場クラブを争う。原則として、まずは各ステージ優勝クラブと年間勝ち点2位、3位のクラブがたすき掛けで対戦。勝者同士の対決を制したクラブがCSに出場する。CS、SS出場クラブが重複しても下位クラブの繰り上がりはなく、SS出場クラブは最多で4、最少で2と変動する可能性を秘める。

 年間勝ち点1位をCS、2、3位をSSへ必ず出場させ、シーズンを通じて安定した強さを発揮したクラブに配慮。年間4位以下でも短期的に好成績を収めれば可能なステージ優勝はボーナス的な扱いとも考えられる。

 18クラブが1シーズン制で争った05年以降に新制度を当てはめると、年間4位以下でステージ優勝を果たしたのは、13年の後期優勝で年間7位の新潟を含め6ケース。年間7位でのSS進出は、08年前期優勝の浦和と並び最も年間順位が低い。ステージ優勝を果たしたクラブのうち年間4位以下は33%で、“ボーナス獲得”の確率を高いとみるか、妥当とみるか、低いとみるかは、評価が分かれるところだろう。

 また、J2に降格する年間の下位3クラブはSS出場資格を失う。13年の大宮は得失点差で前期優勝を逃す好成績を挙げながら、中盤以降の失速で降格の危機に瀕した。仮に大宮が前期優勝を果たしたとしても、降格すればSS出場権を失う。今季の“大宮型”はリーグ戦の権威を打ち砕く恐れがあっただけに、理解を得られやすいルールだ。

 Jリーグの大東和美チェアマンが「1シーズンがベスト」と認めるように、最多勝ち点を獲得したクラブが年間王者になれない可能性のある不公平さはどうしてもぬぐえない。ただ、ステージ優勝に価値を持たせつつ年間順位も尊重するJリーグの意図がにじみ出た制度にはなっている。

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 収益に直結する関心度の高さを示す観客動員数をみると、13年の優勝争いに絡んだクラブは軒並み終盤に伸ばしている。3試合を残して数字上は優勝の可能性があった6クラブのホーム終盤3試合の平均は、年平均の1.58倍から1.05倍。Jリーグが新制度導入の根拠の1つに挙げた「優勝争いを増やして関心を高める」には一定の説得力がある。

 ただ、観客動員数は試合会場やキックオフ時間、天候、対戦相手、優勝可能性の可否などに大きく左右されるうえ、ホーム最終戦は順位に関係なくサポーターを集めやすいため単純な比較は難しい。

 また、勝てば優勝だった横浜Mのホーム最終戦には年平均の2.27倍となる6万2632人が詰めかけたが、年間王者が懸かっていたのだから当然ともいえる。年間最多勝ち点や前後期優勝を決めてもポストシーズンを勝ち抜かなければ年間王者になれないとなると、動員効果には疑問符がつく。新制度反対派が「ポストシーズンへの関心が高まっても、リーグ戦全体への興味が失われてしまっては本末転倒」と訴えるのも理解できる。

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 選手に与える影響も心配だ。J1は1シーズン制だった96年を除き93~04年までの11シーズンが2ステージ制で、年間最多勝ち点で年間王者に輝いたのは4ケース。02年の磐田と03年の横浜Mは前後期制覇でCSが行われなかったため、CSを勝ち抜いての年間王者は93、94年のV川崎(現東京V)だけだ。

 11年にJ1を制した柏が00年に年間最多勝ち点を獲得しながらステージ優勝を逃してCSにも出場できなかったことはあまり知られていない。サポーターの記憶に深く刻まれるのはあくまで年間王者。年間王者を逃せばいくら安定的に強さを発揮しても記憶に残らないのだから選手には不憫(ふびん)な制度だ。

 Jリーグは日本プロサッカー選手会(JPFA)とも協議を重ねて新制度の導入に踏み切った。しかし、JPFA会長を務める広島の佐藤寿人は「選手は決められた制度で全力を尽くすしかない」と述べるのが精いっぱいで、最大限好意的に受け止めても消極的賛成がいいところ。主役の選手がJリーグへの魅力を失い、ただでさえ歯止めが掛からない選手の海外流出に拍車がかかる恐れはある。

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 サッカー界ならではの難しさもある。Jリーグの中西大介競技・事業統括本部長が「プロ野球も参考にした」と説明したように、プロ野球のクライマックスシリーズが一定の成功を収めたことも新制度導入に大きな影響を与えたとみられる。

 だが、野球界の頂点に立つ米大リーグがレギュラーシーズンの順位がひっくり返る可能性のあるポストシーズンを採用しているのに対し、サッカーの本場である欧州のイングランドやスペイン、ドイツ、イタリアといったトップリーグはすべて1シーズン制となっている。

 野球の米大リーグとサッカーの欧州主要リーグの情報が日本国内にあふれている状況は変わらない。ただ、野球界では米大リーグを通じてポストシーズンを受け入れる土壌ができていった一方で、サッカー界では欧州主要リーグの現状が2ステージ制とポストシーズンに対する抵抗感へつながっている。

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 明らかにゲームの公平性を損なうJ1の新制度導入が負うリスクは計り知れない。Jリーグは閉塞感を打ち破るために改革を決断し、限られた条件下では練られた案も提示してはいる。しかし、Jリーグが期待する収益や関心度アップも選手やサポーターの支持があってこそで、制度変更の土台が楽観的な見通しで成り立っているのも確かである。

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