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九電みらいエナジーなどが長崎・五島沖で「潮流発電」の実証実験へ

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報道公開された潮流発電機
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 発電機を海底に置き、潮の流れを利用する潮流発電の実証実験が2月、長崎県・五島列島沖で始まる。九州電力の子会社、九電みらいエナジー(福岡市)が、国内では前例がない大型発電機を設置し、既に試運転を開始した。同社は送電網が本土と切り離され、ディーゼル発電などに依存する離島の有望な電源になり得るとみて実用化を目指している。(中村雅和)

■強みは予測しやすさ

 実証実験は、環境省の委託事業。1月下旬に高さ約24メートル、重さ約1千トンの発電機(出力500キロワット)を五島市の離島、奈留島沖の海底(水深約40メートル)に設置した。安全性や周辺海域への環境負荷などを検証する期間は3月末までだが、新型コロナウイルスの感染拡大で機器の輸送などが滞ったことなどを受け、4月以降も延長できるように環境省と調整している。

 発電機は、風力発電と同様に巨大な羽根を備えている。風ではなく、潮の満ち引きにより生じる海流を受けて羽根を回転して発電する。

 潮流発電の強みは発電量の見込みが立てやすいことにある。気象条件に左右され、予想が難しい太陽光や風力など従来型の再生可能エネルギーとは違い、潮の満ち引きは規則性があるため高い精度で予想できる。従来型の再エネの多くが天候などによる出力急変リスクを抱える中、潮流発電は潮の干満により出力が変動するが、一定のペースを保った発電が可能となる。

 政府は2050年の脱炭素化の目標を掲げ、再エネの導入拡大を進める。ただ本土の送電網から切り離され、需給バランス調整の余地が乏しい離島では従来型の再エネの導入を今まで以上に進めるのは難しい。

 離島の主力電源であるディーゼル発電は、変動幅が大きい太陽光発電などの大量導入で、気象条件にあわせた頻繁な出力調整が必要になれば負担が大きく、機器故障リスクが増えるからだ。また、再エネ側にとっては、需給バランス維持のための出力制御により発電能力を100%発揮できないデメリットがある。

 従来型の再エネが持つこれらの課題解決には、蓄電池など発電量を平準化する設備が必要となるが、コストや容量面で発展途上だ。それに比べ、潮流発電は発電ペースが一定という強みを持つ。九電みらいエナジーの寺崎正勝常務は「潮流発電は離島での再エネ拡大の大きな鍵になる可能性を秘める」と強調する。

 さらに従来型の再エネで指摘される周辺環境への影響は小さい。発電機は深い海底に設置したため船舶の航行への支障はなく、運転時の騒音は海上に届かない。奈留島には、世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の建築物もあるが、「海中の発電機なら景観に影響しない」(寺崎氏)と説明する。

■課題はコスト

 実用化への課題はコストだ。日本の重電メーカーは発電機の開発から撤退しており、現状では輸入に頼らざるを得ない。また、北海油田など海上工事の需要が旺盛な欧州に比べ、日本では発電機の設置に必要な海上の位置情報を正確に把握し、操船する技術や船舶の開発が遅れている。今回も発電機の設置用の船舶は海外からチャーターしたため費用がかさんだ。

 このため実証実験では、コストがどのくらい圧縮できるかも精査する。参画する長崎県の企業などでつくるNPO法人「長崎海洋産業クラスター形成推進協議会」の坂井俊之理事長は「長崎には造船業など海洋関連産業の集積している。発電機の開発は難しいが、組み立てや保守点検、海上工事では県内企業が参入できる可能性がある。新たな成長産業となるポテンシャルを持つ」と期待する。

 寺崎氏は「国土の狭い日本では(脱炭素化に向け)再エネの導入を増やすためには海を見る必要がある。潮流発電の実用化を目指したい」と説明した。

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