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ゲノム編集 ノーベル化学賞の源流に石野・九大教授 「人類の生活変える技術」

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報道陣の取材に応じる九州大大学院農学研究院の石野良純教授=7日夜
報道陣の取材に応じる九州大大学院農学研究院の石野良純教授=7日夜

 2020年のノーベル化学賞授与が7日発表された欧米の研究者2人が開発したゲノム編集技術「クリスパー・キャス9」の「原点」となった特殊な塩基配列を30年以上前に発見したのが、九州大学大学院農学研究院教授の石野良純氏(63)だ。石野氏は同日夜、福岡市西区の九大伊都キャンパスで報道陣の取材に応じ「とても興奮している。自分の発見が画期的なゲノム編集技術に貢献できたことは非常にうれしい」と受賞を歓迎した。

 石野氏は大阪大微生物病研究所に在籍していた昭和61年、中田篤男氏(90)=現大阪大名誉教授=の指導の下、大腸菌の遺伝子研究を通じて「奇妙な塩基の繰り返し配列」を発見した。2000年代には、この配列が免疫機能と結びついていることが明らかになり、「クリスパー」と名付けられた。

 クリスパーを応用して開発されたのが、DNA上の標的とする遺伝子を、正確に切り取り、情報を挿入する「ゲノム編集」。石野氏は他の研究者から「ミスタークリスパー」と呼ばれるようになった。

 ただ発見当時は、この繰り返し配列が「どういう働きをするのか何もわからなかった」という。研究の目的は酵素の一種「IAP」の働きを解明することだったが、昭和62年に発表した論文では「付録」として配列のことを記述した。

 石野氏は「あまりにもきれいな繰り返し配列があって、何か意味があるというのは間違いなく想像できた。少しでも情報発信ができたということでよかった」と振り返る。

 その後、石野氏は「古細菌」の研究に没頭し、謎の塩基配列の解明は、化学技術の進歩と他の研究者の手に委ねた。石野氏自身もクリスパーの発見者として、ノーベル賞候補に挙げられてきたが、「発見者ではあるが、ゲノム編集の技術開発への貢献は低いという自覚がある。自分が選んでやってきた研究にも満足している」とすがすがしい。

 クリスパー・キャス9をはじめとするゲノム編集技術は病気の治療や家畜の改良など、さまざまな分野での実用化が期待される。石野氏も近年、クリスパーを応用した新たな技術開発の研究を進めているという。

 石野氏は「(クリスパー・キャス9は)積み上げられてきたゲノム編集技術を一気に何段階も押し上げたような素晴らしい技術。間違いなく今後の人類の生活は変わっていく」と広がりに期待を込めた。

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