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CO2を資源に 佐賀市の挑戦 清掃工場周辺で藻類培養、野菜栽培 販売額は計画下回る

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二酸化炭素を分離・回収する佐賀市清掃工場のプラント(同市ホームページより)
二酸化炭素を分離・回収する佐賀市清掃工場のプラント(同市ホームページより)

 ごみ焼却場から排出される二酸化炭素(CO2)を回収し、新たな資源として活用する佐賀市のバイオマス事業が注目を集めている。すでに藻類培養施設や農業施設に供給しており、地球温暖化の原因の一つとされるCO2をどう削減するか、世界中で模索が続く中での挑戦で、国内外からの視察も多い。ただ、事業開始から4年を過ぎてもCO2の販売額が当初計画を大きく下回るなど課題もある。(永尾和夫)

 ■99%に濃縮

 市清掃工場(同市高木瀬町)には、工場の排ガスからCO2を分離・回収するプラントが稼働する。「清掃工場の排ガスを活用するためのプラントは、国内でもここだけ」と市バイオマス産業推進課の江島英文課長は語る。

 この設備では、CO2を低温状態で吸収し、高温で放出するというアミン系吸収液の特性を利用。工場の排ガスを吸収塔に送って冷却、再生塔で加熱しCO2を取り出す。これにより排ガスで12%だったCO2濃度は99・9%に濃縮されるという。生産能力は1日10トン。テストプラントで実証を重ね、平成28年8月から稼働を始めた。

 高濃度のCO2は、同年10月に清掃工場の隣接地に進出したバイオマス企業「アルビータ」(佐賀市)に供給。同社はCO2を使って藻類「ヘマトコッカス」を培養し、抗酸化作用が高いとされるアスタキサンチンを抽出。それを活用して30年からサプリメントや化粧品を製造・販売している。藻類は地上の植物の10倍以上のCO2を吸収するという。

 全国農業協同組合連合会(JA全農)も高濃度のCO2をキュウリ栽培に生かす最新施設「ゆめファーム」(1ヘクタール)を、市清掃工場隣接地で、今年1月から本格稼働させた。CO2だけでなく、清掃工場から出る排熱の供給も受けており「日本一の収量を目指し、順調な滑り出し」(同市)という。

 さらに、縦型の水耕栽培でバジルなどを栽培する「グリーンラボ」(福岡市)も、今春から隣接地で開業した。

 30年3月には、佐賀大に「さが藻類産業研究開発センター」が開設され、市内のクリークなどに生息する微細生物を分析、新たな活用策を筑波大とともに研究している。

 ■課題も多く

 地球温暖化の原因の一つとされる「嫌われ者」のCO2を資源に変える画期的な挑戦に、国内外の関心は高い。市によると、28年9月の稼働以来、4千人を超える人たちが視察に訪れた。国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)で環境省が佐賀市の取り組みを紹介したこともあって、欧州やアジア各国など海外からも16団体がやってきた。

 だが、ユニークな挑戦だけに課題も多い。バイオマス事業は、秀島敏行市長が手掛ける事業の柱といえ、国の補助金を含めて約14億5千万円を設備などにかけた。CO2を1日10トン製造し、1キロ36・4円で売却。17年かけて投資分を回収する計画だった。ところが、稼働開始から昨年度までの3年間の販売額が約500万円のみと、計画を大きく下回っている。CO2製造量も5トンに減らし、液化して販売できないか検討を始めた。

 収益が少ないという批判に対し、市は「工場周辺への企業進出で、すでに約40億円の経済効果があり、雇用も80人増えた。CO2の販売は、もともと利益を目的としたものではない」と反論する。

 ■企業を誘致

 佐賀市がバイオマス産業都市を目指したきっかけは「平成の大合併」だった。同市では1市6町1村が合併し、ごみ焼却場も統廃合が進んだ。この「迷惑施設」統合に対し地域住民の理解を得るため、市が考えたのが「清掃工場から出る“嫌われ者”のCO2を有効利用し、地域に還元できないかというのが出発点だった」という。

 このため、「企業誘致がバイオマス事業の最大の課題」としており、平成29年には藻類産業の相互連携を図るため、さが藻類バイオマス協議会も発足した。清掃工場の北側隣接地21ヘクタールにはアルビータが施設拡張を予定しているほか、農業関連の数社が進出の意向という。

 地域の課題と地球環境問題の同時解決をターゲットにした佐賀市の挑戦。「世界最高の地球環境ストーリーの一つ」と評価されるものの、明確な成果が出るまでには、まだ時間がかかりそうだ。

                  ◇

 【バイオマス産業都市さが】

 佐賀市は市町村合併によるごみ処理施設の統廃合をきっかけに平成26年、バイオマス産業都市構想を策定。福岡県みやま市、大分県佐伯市とともに九州で初めて国の認定を受けた。清掃工場や下水処理施設から出る廃棄物をエネルギーや資源にするため、6事業を開始。このうち、3事業は目的が達成されたとして昨年8月に終了。残る3事業を令和5年度まで延長している。この中にはユーグレナ(東京)と共同で進めている下水処理から出るガスを活用した藻類のミドリムシ培養の研究もある。

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