PR

【イノベーション創発 新たな価値観が地域を救う】(6)SCB理論(上)

PR

 ■地域資源+新結合+P2

 □崇城大学教授・星合隆成

 連載も残り3回となりました。前回までは、P2P(ピアツーピア)によって生み出されたサービスやビジネスについて説明してきました。新型コロナウイルスの影響によるリモートワークの進展は、P2Pによる働き方改革である「P2P Working」への注目を高めるかもしれません。さて、今回からはタイトルの副題にある「地域を救う新たな価値観」について解説していきます。

 この連載を通じ、新たな「つながり」により新たな「価値観」を生み出す「新結合」の重要性について繰り返し触れてきました。今スピードが求められている、九州・山口を含む「地域の活性化」に向けては、この新結合による「地域イノベーション」が有効です。すなわち、地域の資源を新たな発想で新たにつなげることで、新たな価値観を地域において生み出すのです。

 そのためには、地域資源を科学的につなげることが重要になります。そこで、新結合の「新たなつながりをつくる」、P2Pの「モノよりもつながりに価値がある」の両者の親和性の高さに着目し、地域資源のつながりにP2Pの技術を用いることにしました。つまり、P2Pを用いた地域イノベーションの創発を目指したのです。これを、「地域コミュニティブランド」(Social Community Brand:SCB)と名付けました。

 SCBを実践するコツは、良く知られている存在(モノやアイデア)、成功・成長している領域、得意・専門分野などに着目し、そこでのつながりを知り、「新たなつながり」を熟考することです。1日1つ、新たなつながりを考える訓練を行うことで、きっと面白い「つながり」に出合えるでしょう。成功・成長する領域には成功・成長する理由が必ずあります。そこでは当たり前の存在やつながりでも、他の領域や分野では新しいことがままあるのです。

 これまでのことを踏まえて少し難しいですが、P2Pによって地域イノベーションを創発する「SCB」を次のように定義することができます。

 「地域資源をピアとして仮想化し、つながりをインターフェース(接点)として公開することにより、ピア同士をブローカレス(P2P)でつなげることで、地域活性化のためのプラットフォームを構築する」

 難しいですよね。この定義を理解するためには、ピアやプラットフォームの意味を理解し、「仮想化」「体系化」「可視化」の3つの考え方を学ぶ必要があります。

 1つ目の仮想化とは、「地域資源をピア内部に封じ込め、インターフェースを公開する」ことを言います。唐突ですが、頭痛薬の「アセトアミノフェン」を例に、仮想化について学びましょう。アセトアミノフェンを薬のカプセルの中に封じ込め、「頭痛薬 1日1錠 眠くならない」というインターフェースを公開します。ここでは、アセトアミノフェンが地域資源に、薬のカプセルがピアに相当します。この仮想化によって、「アセトアミノフェン」の存在を知らない人でも安心して、「アセトアミノフェン」を飲む(アセトアミノフェンと人がつながる)ことができるのです。このようにピアとは、さまざまなモノを封じ込めるための「カプセル(概念的な箱)」なのです。

 もう一つの例を考えてみましょう。みなさんは、データを保存するときにハードディスクやUSBメモリーを使ったことがあると思います。しかしながら、ハードディスクの構造や仕組みを知らなくても問題なくデータを保存できますね。

 これは、ハードディスクをファイルとして仮想化しているからです。ハードディスクをファイル内部に封じ込め、「データ保存・データ複製・データ読出」といったインターフェースのみを公開しているのです。この例では、ハードディスクが地域資源に、ファイルがピアに相当します。ファイルは、OS(オペレーティングシステム)の一つの機能ですが、OSはこのように仮想化された部品(標準化)の集まりなのです。

 地域資源も同じです。せっかくの地域資源も、何もしなければ新たなつながりを生みません。イノベーションを創発するためには、地域資源をピアとして仮想化する必要があるのです。

この記事を共有する

おすすめ情報