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【イノベーション創発 新たな価値観が地域を救う】(5)P2Pサービス 鍵はユーザー同士の協力

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 □崇城大学教授・星合隆成

 前回まで、P2P(ピアツーピア)が提案する「新たな価値観」について解説しました。今回は、P2Pによって生み出されたインターネットビジネスやサービス、新技術について紹介します。

 2004年、NTT西日本は「フレッツ光グリッドサービス」を発表しました。これは、NTT未来ねっと研究所が発明した世界初のP2P、「SIONet(シオネット)・ブローカレス理論」を用いて構築された「スーパーコンピューター」に関するものでした。

 本来、NTTフレッツ光は、ユーザーのコンピューターをインターネットにアクセスさせるためのものです。一方、スーパーコンピューターは大規模・高速計算を行うためのものです。この2つの「新結合」(新たなつながり)によって、NTTフレッツ光にスーパーコンピューターという新たな価値が生まれました。この2つは、それぞれがすでに良く知られた存在ですが、新結合によって新たな価値観が創出されたのです。

 フレッツ光ユーザーのコンピューターを活用していることから、新規にコンピューター資源を用意する必要がありません。よって、低コスト・低リスクでのスーパーコンピューターの構築が可能になりました。これまでのスーパーコンピューターには建設費に1000億円、運営費に年間100億円程度を要していました。

 フレッツ光のユーザーがスーパーコンピューターの提供者になる一方で、NTT西日本がスーパーコンピューターの運営者となることによって、フレッツ光グリッドサービスの販売利益を、コンピューター資源を提供したフレッツ光ユーザーに還元することで「WIN-WIN」の関係を確立したのです。

 金融や保険の分野においても、P2Pによる新たなサービスが登場しました。中国のアリババグループが展開する「P2P保険」がそれです。2018年にスタートしたP2P保険は、1年間で1億人の保険加入者を集めました。また、日本でも新生銀行や日本生命がパートナー企業として参画する形で2020年に試験サービスがスタートしました。

 これまでは、保険会社が提供する保険サービスに加入したユーザーは、事前に定められた保険料を前払いしました。保険会社は集めた保険料を運用し、病気や死亡時にユーザーに対して保険金を支払いました。つまりユーザーは保険サービスのサービス利用者であり、保険会社は保険サービスのサービス提供者というように、両者の役割は明確に分かれていました。

 これに対し、P2P保険では、ユーザーはサービス利用者であると同時に、サービス提供者の役割を担います。ユーザーに対する保険金の支払いが生じたときに、他のユーザーが割り勘でお金を出し合って保険金を支払うのです。つまり、本来、保険会社が行うべき保険金の支払いをユーザー同士が協力して行います。

 一方、保険会社(サービス運営者)はP2P保険サービスの取りまとめ業務、窓口(販売)・受付業務(ユーザーの加入審査)などを担います。これにより、ユーザーだけで運営されるサービスモデルと比べて、サービスに対する信用・信頼(トラスト)が向上するのです。

 このP2P保険は、P2Pの実装技術の一つ、「ブロックチェーン」を用いて実現されています。これは、ユーザーのコンピューター資源をブローカレス(仲介者不在)につなげたシステム構築(透明性の高いユーザー間の情報共有)を可能とすることから、低コスト・低リスクでのサービス展開が可能になります。

 なお、金融分野にP2Pを導入したビットコインなどの仮想通貨も、ユーザーが金融サービスの利用者であると同時に、金融サービスの提供者の役割を担うなど、基本的な考え方はP2P保険と同じです。つまり、銀行が担っていた銀行口座の管理業務を、ユーザー同士が協力して行うことで、銀行の存在を前提としなくても、従来通りの銀行サービスを持続的に提供可能にしたのです。

 2004年に登場したスカイプ(SKY P2P)やSNSもP2Pサービスとして有名です。スカイプでは、ユーザーが電話サービスの利用者と提供者の2つの役割を担うとともに、すでに存在しているユーザーのコンピューターをブローカレスにつなげることでインターネット電話を構築します。一方、SNSでは、ユーザーが自ら情報共有・発信ネットワークをブローカレスに構築するとともに、情報閲覧者がリツイートやシェアーを行うことで情報発信者の役割も担うことになります。

 このようなP2Pによって、地域にイノベーションを創発する仕組みが「地域コミュニティブランド(SCB)」です。これについては次回解説します。

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