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【イノベーション創発 新たな価値観が地域を救う】(3)P2Pの誕生(上)

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 □崇城大学教授・星合隆成

 ■「仲介者」不要 ユーザー資源活用

 連載の1、2回目では、イノベーションの歴史を簡単に振り返りました。今回からは、今進む第4次産業革命の主要技術の一つである「P2P(ピアツーピア)」が、どのような「新たな価値観」をわれわれに提案し、どのようなインターネットビジネスやサービスが生み出されているかについて解説していきます。

 1998年、世界初のP2Pである「SIONet(シオネット)・ブローカレス理論」がNTT未来ねっと研究所(東京都武蔵野市)で発明され、世界的に注目されました。NTTの発表によると、P2Pは「4つの要素(=新たな発想)」で定義されています。

 1つ目は「ブローカレス(仲介者不在)」です。パソコンなどのコンピューターは、そのままでは互いにつながることができません。ゆえに、これまでは「サーバー」と呼ばれる仲介者を介して、コンピューターは互いにつながり、コミュニケーションや情報共有を行っていました。サーバーがコネクター(接続)の役割を果たすことにより、コンピューターはサーバーを中心とした「トップダウン・中央集権型」のインターネットコミュニティーを構築したのです。

 ただし、このモデルはサーバーを用意するための設備投資や運営コストが負担になっていました。

 これに対し、P2Pは、サーバーなどの仲介者の存在を前提としなくても、各々のコンピューターがコネクターの役割を果たすことによって、コンピューター同士が自律的に直接つながり、そのつながりを次々と拡張していくことで、「ボトムアップで非中央集権型」のネットワークコミュニティーの構築を可能にしました。

 「仲介者の存在を前提としなくても、コンピューター同士のコミュニケーションや情報共有は可能」という新たな価値観を提案したのです。この新たな価値観によるビジネス開発の事例は連載の後半で触れますが、わかりやすいたとえでいえば、通訳者を介さずに、日本人と外国人が直接コミュニケーションすることで情報共有やコミュニティーを構築できる世界をイメージすると理解しやすいと思います。1つ目の新たな発想、それは今まで当たり前だと思っていた「仲介者の存在」は不要というものです。

 2つ目は「サーバント」です。ユーザー(利用者)は、サービス提供者が提供するサービスを利用することが、これまでは一般的でした。そのため、サービス提供のための設備投資や運営コストが負担やリスクになることが多かったのです。

 一方、P2Pではサービス提供者が存在しません。ユーザーがサービスの利用者であると同時に、サービスの提供者の役割を担います。ユーザーが二つの役割を常に担うことにより、サービス提供者の存在を前提としなくてもサービスの持続的な提供が可能になるのです。

 NTTが提供する電話サービスとその加入者を例に考えてみましょう。NTTはサービス提供者であり、加入者はユーザーです。NTTが存在しなくなった時点でユーザーは電話サービスを受けられなくなってしまいます。

 しかし、P2Pではユーザーが自ら電話サービスを構築・運営することでサービスの持続的な提供を行います。これを実現した画期的なインターネット電話サービスがスカイプです。ちなみに、スカイプの正式名称は「Sky P2P」です。

 さらに、「ユーザーがサービス提供者の役割をも担う」という考え方は、サービスの提供に際し、サービス提供のための資源を新たに用意するのではなく、すでに存在しているユーザーの資源を積極的に活用するという新たな発想を生み出しました。これにより、低コスト・低リスクでの持続的なサービス提供が可能になりました。

 2つ目の新たな発想は、「サービスの利用者が最高のサービス提供者である」との考え方に基づいて、「ユーザーがサービス提供者の役割も担う」「すでに存在しているユーザーの資源を活用する」というものです。

 今回はここまでとし、残りの2つの要素は次回で解説します。

                  ◇

【プロフィル】星合隆成

 ほしあい・たかしげ 昭和37年、徳島市出身。工学博士。崇城大学(熊本)情報学部教授、早稲田大学招聘研究員。元NTT研究所主幹研究員・参与。世界初のP2P(ピアツーピア)ネットワークである「ブローカレス理論」の提唱者で知られる。

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