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福岡市、独自支援決定の舞台裏 「腹を決めた」市長示した覚悟

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 福岡市の高島宗一郎市長は、県の休業要請が始まった14日、中小企業への家賃補助や医療・介護関係者の給付金など総額100億円の独自支援策を即座に打ち出した。県が当初、「東京都以外は厳しい財政状況にある」(小川洋知事)と慎重な姿勢を見せる中、休業を求める民間事業者の不安を払拭しなければ要請が空回りしかねないとの危機感からだ。いち早い決断がショック療法となって他自治体の流れをつくった。ウイルス封じ込めの効果を損なわないため、県の動きをにらみながら周到に準備した舞台裏を探った。(中村雅和)

 ◆「腹を決めた」

 高島氏は10日午後、幹部を前にこう切り出した。小川氏が休業要請について、「13日にも判断する」との考えを報道陣に示した直後のことだ。

 県内の感染者の増加ペースからみて、手をこまねいていれば加速度的にふくらむ恐れが強まっていた。米・ニューヨークのような事態に陥る悪夢がよぎった。

 休業要請の肝は、人と人の接触を大幅に削減することだ。ただ、要請による掛け声だけでは限界がある。実効性を持たせるうえで補償問題は避けられない。

 高島氏は腹をくくり、県の出方に関わらず、市独自施策を打つ準備を市幹部に指示した。

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 「お金を使ってというのは前時代の話でダサい」

 高島氏は平成22年の初当選以来、こう論陣を張ってきた。平時は税金を使う手法ではなく、規制緩和などの知恵を使って民間投資を呼び込む市政運営をモットーとした。一方で平成23年の東日本大震災以降、相次ぐ大規模災害という有事の局面では躊躇(ちゅうちょ)なく「ヒト・モノ・カネ」を投入し、財政上の備えも続けた。コロナ禍は明らかに有事だ。

 高島氏が示した方針は休業要請に応じた施設・店舗などに加え、休業できない医療・介護関係者への支援だ。財務省首脳とも情報交換し、国の支援策から漏れている部分に焦点をあてようとした。この時点で予算の上限は示さなかった。

 国や県が手の届かないところをフォローするのが最後の砦(とりで)、基礎自治体だ-。

 高島氏の考えは、市役所内に浸透していた。

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 同市の各局から具体案が出そろったのは12日。いずれも担当者なりに思い切った施策だ。それでも高島氏をはじめ市幹部の目には不十分に映った。民間業者が不安から休業できないと判断したり、最前線でウイルスと闘う医療・介護関係者を落胆させたりすれば意味がない。金額はもちろん、支援策がどのように受け止められるのか-を重視した調整が続いた。

 県は想定通り13日、県内の施設・店舗に14日から休業を要請すると発表した。ただ、小川氏は「県としてどういう支援ができるか検討したい」と述べるにとどめ、補償への具体的なメッセージはなかった。市内の事業者からは「必要性は感じるが、先行きへの不安から要請には応じられない」という声が上がっていた。

 要請に実効力を持たせるには一刻の猶予もない。市は夜通し作業を進めた。議会への根回しも済ませ、支援案を最終決定したときには14日の朝になっていた。総額100億円は、市の貯蓄に当たる財政調整基金の4分の1にあたる。まさに背水の陣だ。

 その支援策を発表した記者会見で、高島氏は普段以上に自らの言葉がどう受け止められるかを意識した。

 「仮に緊急事態宣言が延長されても、この規模の支援を続けることは無理だ。だからこそ、短期集中で終わらせましょう」

 実効性を高めるため、あえて「1カ月しかもたない」と、厳しい懐事情を訴えるのも忘れなかった。

 福岡市の動きに飯塚市や行橋市、北九州市も続いた。県も17日に独自支援策を発表した。一連の動きを受け、高島氏は周囲にこう語った。

 「どこかが先にすることで、他もスピードが上がるんだ」

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