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【いまエネルギー環境を問う 竹内純子の一筆両断】連続する台風被害から何を学ぶべきか

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 台風15号に続き、台風19号が東日本を直撃し、大きな爪痕を残しました。

 台風15号では想定を超える強い風が、台風19号では観測史上最高という途方もない雨が東日本を襲いました。災害というのは本当に手を替え品を替え、私たちの生活を脅かすものですね。被災された皆さまに心からお見舞いを申し上げるとともに、一日も早く元の生活を取り戻していただけるようお祈り申し上げます。

 台風15号では特に、大規模な倒木や土砂崩れなどによる復旧困難箇所があったため、完全に停電が復旧するまでは非常に長い時間を要し、電気というインフラがなければ私たちの生活がいかに不自由を強いられるか、災害の復旧からもままならなくなるのかといったことが実感されました。

 なぜこれほど長期間にわたって停電が続いてしまったのか、この災害から私たちは何を学ばなければならないのかを考えたいと思います。

 ◆災害対策は被害の検証から

 台風15号で多くの停電が発生した直接的な原因は、多くの電柱が倒れ、電気が送れなくなったことにあります。観測史上最高の瞬間最大風速52メートルが観測されたことと、多くの電柱が倒れたことで停電が発生したことから、電柱に求められる耐風基準を見直すべきだとの意見も聞かれました。

 しかしそもそも、電柱が耐えなければならない基準として定められているのは「連続して10分間40メートルの風が吹いた場合」でも倒れないという強度です。瞬間最大風速という一瞬の風速と、10分間連続でその風速が続いた場合でも耐えられるように設計されたものを混同してしまっています。

 また、実際に電柱は風で倒れたのでしょうか。実は昨年、関西地方を襲った台風21号による被害の分析結果では、倒れた電柱の9割以上が飛来物や倒木、あるいは土砂崩れなどに巻き込まれたもので、風で倒れたものはほとんどありませんでした。

 それであれば電柱だけ頑丈にしても意味がありません。費用ばかりかかって社会の安全性を上げる効果には乏しいという結果になりかねません。

 残念ながら起きてしまった災害をなかったことにすることはできません。私たちにできることは、災害に学び、次に同じような災害が来ても、同じ被害が発生することがないように備えることだけです。

 災害対策は被害の徹底検証から始めるべきであり、災害直後の混乱した状態において思い付きで対策を議論することは厳に慎むべきでしょう。

 冒頭で申し上げた通り、災害の形はさまざまです。強い風、大量の雨や洪水、地震など、どんな災害にも耐えられる設備を作るのは非常に難しく、またコストがかかります。災害で被害を受けたとしても、早く復旧できるようソフト面の対策を充実することも重要です。

 例えば昨年の台風21号の経験を契機に、関西電力は和歌山県と協定を結び、復旧作業における役割分担を整理していたそうです。こうした協定の事例はいろいろありますが、平常時に自治体やインフラ事業者が話し合っておくことは災害発生時のコミュニケーションをスムーズにしてくれるでしょう。

 また、民間事業者同士の協力も不可欠です。台風15号の際に、全国から復旧作業の応援に駆け付けた電力会社の方たちが、千葉・木更津のイオンの駐車場に集結している写真や動画が拡散されましたが、東京電力は以前からイオンと災害協定を締結して、災害時の駐車場提供や物資支援などで協力する仕組みを構築していたそうです。

 ◆インフラ維持の「全体戦略」を

 激甚化する災害を経験して、エネルギーインフラのレジリエンス(回復力)を高める必要性が強く意識されるようになりました。

 ただ、長期的には低炭素化に向けたエネルギー転換(再生可能エネルギーの大量導入や電気自動車導入など)へのインフラ整備も必要ですし、経年化の進む設備の維持・更新も切迫した課題です。

 強靭(きょうじん)化、低炭素化、効率化といったさまざまな要請に応えていくためには、全体戦略が必要です。

 国があらゆるインフラ維持コストの支出について判断権限を持てば、どうしても現場から遠くなり、費用対効果の良い投資が行われるとは思えません。現場をしっかりと把握した民間事業者が効率よく投資判断をできるようにしたり、民間の創意工夫を最大限に活用できる仕組みを構築することも必要でしょう。インフラに関わる民間事業者側には、今まで以上にイニシアチブを発揮してもらわなければなりません。

 また、少子高齢化が進む中でインフラ維持に関わる人材をどう確保するかも重要です。これまでは電力、ガス、水道などそれぞれのインフラが人材を確保し、維持に努めてきましたが、そうしたインフラ維持に共通するスキルもあるでしょう。

 共通するスキルを持つ人を「多能工」としてシェアするようになれば、インフラ維持のコストを抑制することが可能になるかもしれませんし、復旧作業の人員確保もしやすくなるでしょう。

 これだけ社会が高齢化し、過疎化が進む今、地方の社会インフラの維持にかけられるコストは限られています。エネルギーインフラの転換を図っていくための全体戦略が今、求められています。

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【プロフィル】竹内純子

 たけうち・すみこ 昭和46年、東京都出身。慶応大卒業後、東京電力を経て平成24年からNPO法人「国際環境経済研究所」理事。筑波大客員教授。著書に「誤解だらけの電力問題」(ウェッジ)や「原発は“安全”か-たった一人の福島事故調査報告書」(小学館)など。「正論」執筆メンバー。

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