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【ハイ檀です!】リフトアップ

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力強く薪をリフトアップしてくれる装置
力強く薪をリフトアップしてくれる装置

 やりました、ラグビーニッポンベストエイト進出。決勝トーナメントは、宿敵の南アフリカと本日19時15分キックオフ。結果がどうであろうと、日本国中が興奮の坩堝(るつぼ)に呑(の)み込まれることは必定。先日のスコットランド戦は、テレビ中継の視聴率が最高で53・7%に達したというから驚き。前日の台風による水害で、日本中が暗い気持ちになりかけたところを、前向きの明るい気分にしてくれたことは有難い。また、イギリスのガーディアン紙において、アンディ・ブル記者が横浜開催の裏側の様子を温かいタッチの記事にし、それを翻訳しツイッターに載せてくれた方がいた。この記事には、胸が熱くなり僕も何かお手伝いを、と真剣に考えている。

 ところで、ラグビーの試合で、ボールがタッチラインの外へ出るとラインアウトになり、白線の外からボールを真っ直ぐにピッチへ投げる。このボールを双方が平行に並んで奪い合う。この時、2人の選手が1人の選手を高く持ち上げ、高いところでボールを受け取り味方に回すことを、リフトアップと言う。僕がラグビーをしていた頃は、リフトアップという技はなくむしろ反則であった。が、1995年に南アフリカにてワールドカップが開催された際、南アフリカチームが多用していた反則技が、正式にラグビーの新ルールとして採用されたようだ。

 このリフトアップ、我が家の生活の中で、今年の冬から取り入れた。我が家は、暖房は薪ストーブに依存。太陽光発電の力を借りて、床暖房のシステムも導入したが、冷え込みの厳しい夜は些(いささ)か心許ない。そんな日に、リビングの角に設置したストーブは頼もしい限り。雑木を約50センチ程度の長さに切り揃(そろ)え、直径10センチくらいの太さに割った薪を、1年から2年、薪小屋の中で乾燥させた後、ストーブに入れて火を点ける。

 薪ストーブの嬉しいことは、ゆらゆらと燃える火を見ながら暖まれることである。焚(た)き火が趣味、という方がおられるが、その気持ちには大賛成。ゆったりと揺れ動く炎を眺めていると、心にゆとりが出て来るから有難い。我が愛犬も、不思議なことにストーブの前に陣取り、長い時間炎を見つめているのは何故なのか…。が、薪が燃える時間には限りがある。堅いナラの木やクヌギの太めの薪であれば、3本程度入れておくと2時間くらいは燃えてくれるだろう。そんな訳で、寒い日には20本程度の薪があると、快適な冬の暮らしが営める。

 ただ、薪小屋からストーブまで運ぶのが一仕事。我が家は平屋なのだが、傾斜を利用して家を建てたので、庭の片隅にある薪小屋とリビングまでの高低差が3メートルはある。比較的ゆるやかに作った階段でも、コンテナに20キロの薪を入れて昇るのは、しんどい。数年前までは、何とか体力が追いついていたものの、後期高齢者に突入した途端に、目に見えて体力が低下。この薪運び、僕が留守の時は妻が一人で闘っている。

 そこで、止むなくリフトを導入。色々と検討した結果、瓦屋さんが瓦を屋根まで運ぶのに、梯子(はしご)にリフトがついた器具を見たことがある。この話を家を建ててくれた工務店に相談、最良の方法であることが判明し取り付けに至る。むき出しのエレベーターの赤ちゃんみたいなものだが、100キロ近くの重さに対応しているので、コンテナに山盛りの薪を乗せても大丈夫。

 取り付けた後に、何度もトライしたが、100%成功。これなら妻も、何の問題もなくリフトアップが可能だ。薪小屋から薪入りコンテナを一輪車に積んでリフトまで運ぶ、これを平らに作られた台座に乗せ、スイッチを押すだけ。問題は、薪になる木々の調達と、チェーンソーで切り揃えたものを薪割り機で割く重労働が待っている。

 昔は、全部を自分の力だけで成し遂げなければならなかった。今の世では、動力や機械が助けてくれる。近い将来、全てのことをロボットが代行してくれることになりそうだが、そこまで頼るのは如何なものか。ラグビーの試合が面白いのは、人間の力と力がぶつかり合いながら、どっちに転ぶかわからないボールを奪い合う様子を、観戦する醍醐味にある。ついこの間まではなかったリフトアップの技も、今となれば素晴らしいテクニックであったと、確信している。

                   ◇

 だん・たろう 1943年、作家・檀一雄氏の長男として東京に生まれる。CFプロデューサー、エッセイストとして活躍し、「新・檀流クッキング」などの著書多数。妹は女優の檀ふみさん。

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