PR

【ハイ檀です】低温調理

PR

低温調理で旨味が凝縮されたスネ肉
低温調理で旨味が凝縮されたスネ肉

 いやはや、ラグビーのワールドカップの盛り上がりがここまでヒートアップすることを、誰が予想したであろうか。無論、ラグビー経験者の僕は、日本の戦士たちの活躍は期待していた。だが、試合前のテストマッチに於(お)いて、前回大会で夢を持たせてくれた南アフリカに完膚(かんぷ)なきまでに叩かれ、意気消沈したのは事実。

 だが、蓋(ふた)を開けてみるとさくらジャパンは、明らかに成長していた。今までラグビーに対し興味を示していなかった妻は、大歓声を上げながらのテレビ観戦。そんな時に、友人から「博多の森球技場行かれます?フランスとアメリカの試合なんですが…」。勿論(もちろん)、断る理由はない。一生に一度は、ワールドカップの舞台を観ておきたかったので、チケットは有り難く拝領。

 そして、観戦。どちらを応援ということもなかったが、妻はどうやらフランス贔屓(びいき)。それでも、アメリカが好機をつかみかけると大拍手。選手を間近に見て妻が驚いたのは、両チームのラガーの体格である。中には小柄の選手もいたが、日本チームと比べると歴然の差。やはり、長年の肉食の積み重ねが、DNAの中に組み込まれたものと思わざるを得ない。かつて、ニューヨークのレストランで、2ポンドのステーキをペロリと平らげている輩が何人もいた。およそ、2キロ弱である。悲しいかな、僕は半ポンドの肉でも巨大に思える。

 肉の味は決して悪くはないけれど、硬いのには手こずった。特に筋の部分はナイフで切るのにも難儀。挙げ句の果てに、皿の隅に隠し置く。飲み込めばと言われても、ムリなものはムリ。情けないのは、日頃食べている黒毛和牛の柔らかさに、完全に馴らされているのだ。しかし、嬉しいことに最近の海外の牛肉は、和牛の影響が大なのか、年々その旨さと柔らかさを増しつつある。加えて、関税の引き下げもあり、安いので人気が上昇。

 そして今、我が家に於いて調理革命が起きている。家業で鉄工場を営んでいた兄弟が、厳しい競争に生き抜いていくために、密閉率の高い鋳物のホウロウ鍋の開発に成功。見た目も美しく、最近では大人気となっている鍋で、入手するのに半年くらい待つのが常。その鍋が、我が家には大中小の3台。2人の息子にもプレゼントしたので、都合5つも購入してしまった。密閉度が高い故か、タマネギ、ハクサイ、ニンジン、ジャガイモやシイタケなどの野菜を一緒くたに入れ込み、弱火で加熱調理を施す。と、水は全く入れていないのに、野菜たちの水分が滲(にじ)み出て、野菜の旨味がたっぷりと詰まった煮物になる。これに、後は好みの味をつけるだけ。カレー粉を加えると野菜カレーになるし、牛乳を加えてシチューも作れる。

 更に、最近はライスポットなるものを開発。残念ながらこの性能は、土鍋の炊飯釜にはやや劣る。しかし、温度調節や調理時間のタイマーを備えているので、低温調理にはモッテコイのポット。今までは、時間と温度に苦労しながら牛のスネ肉を煮込んでいたが、この鍋を用いると手間をかけず簡単に、柔らかくて旨いスネ肉料理が楽しめる。いい機会なので、ザッとではあるがその調理法を書き記そう。スネ肉を半分として、500グラムくらいの塊であろうか。この肉の塊に塩コショウを施し、2粒くらいのニンニクを潰して月桂樹の葉2枚とともに、密閉の効くポリ袋に入れる。この時に、大さじ2杯程度のバージンオイルを加え、丁寧に空気を出して密閉。後は、鍋に水をコップに1、2杯注ぎ、蓋をして85度で5時間程度加熱する。

 これだけで、驚くほど柔らかで肉の旨味を逃すことのない料理が完成。やや厚めにスライスして、毎朝のサラダに添えると質の良いタンパク質が摂れる。他には、帆立貝の貝柱に味は付けずにパック。鍋温度を56度に設定し20分間入浴状態にする。時間が来たら、冷水に氷を入れて冷やすだけ。これを刺身状にスライスし、ワサビ醤油で味わう。この料理法、ミシュランの2つ星の唐津の鮨屋『つく田』のご主人に教えて頂いた。てなことで、鶏の胸肉やら豚足やらを煮込むのには最良の道具。今後、旨くて体に良いタンパク質を摂りながら、健康と体力を維持して行こうと願いながら、気になるのは日本。果たしてどこまで勝ち進めるものだろうか。

                   ◇

 だん・たろう 1943年、作家・檀一雄氏の長男として東京に生まれる。CFプロデューサー、エッセイストとして活躍し、「新・檀流クッキング」などの著書多数。妹は女優の檀ふみさん。

この記事を共有する

おすすめ情報