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【ハイ檀です!】(175)仙人草

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毒はあるが美しい仙人草の花
毒はあるが美しい仙人草の花

 ここ数日、ようやく秋らしい日々が続いている。だが、台風17号が目の前に迫っている。22日は、妻の誕生日だと言うのに…。先日関東地方を直撃した台風15号のもたらした被害は、想像以上に凄(すさ)まじかった。振り返ると、九州はここ数年地震と豪雨に加えて、台風の被害も測り知れない。これにより、現在も避難生活を余儀なくされている方は、少なくないという。

 伊豆七島や千葉県を直撃した15号台風は、台風の進路の右側に当たる地域に甚大なダメージを与えた。送電線には、風で薙(な)ぎ倒された木々がのしかかり、電線は断線。加えて、高圧電流を送る電線を支える巨大な鉄塔も、強風により多数倒壊。結果、数十万の方々が停電に見舞われ、未だ回復していない。

 電気の怖さは、例え送電が再開されたとしても、簡単に使用は出来ないのだとか。千葉県では、多くの住宅が風で屋根を飛ばされ、ブルーシートで応急処置を施し、再び降り注ぐ雨を凌(しの)いでおられる。こうした方々の家屋に、再び電気が戻ったとしても手放しでは喜べないようだ。そう、漏電の危険性があり、安全を確認した後に通電しないと、火災を引き起こす危険性があるらしい。かつて、阪神淡路の大地震の際も、送電を開始した後多数の家が火災に見舞われたと聞く。

 今回の千葉の停電、当初は一両日に復旧する見通しと、東電は記者会見で発表。だが、電力会社の組織が大き過ぎたのか、トップと現場の意思の疎通が取れておらず、事故対応はアタフタするばかり。あの忌まわしい3・11の震災の東電の対応も然り。見ていて、悲しみが増すばかり。天災が人災にならぬよう、切に願いつつ、貧者の一灯を手向けるしか術はない。

 この悲劇の中、有難いことに我等夫婦は秋の装いを楽しみながら日々を過ごしている。家の周りに目を向けると、そこかしこに名も知らぬ花が静かに咲いている。中には派手な彼岸花もあるし、どこからか種が飛んで芽生えたコスモスは優雅な姿を見せてくれている。その中に、生垣を覆うように白い可憐な花が咲いている。花の形態は、地面からつるが伸びその枝分かれした部分に大量の花を咲かせるのである。野にあるつるの花は、夏の初めに白や黄色の花を持つスイカズラがあるが、花の形は違うし、スイカズラとは別物と判断。

 発見した、十字に開く真っ白な花は、清楚で美しいとしか表現出来ない。香りはどんなものかと花に顔を近づけたが、微(かす)かに香る程度。花の名前を調べるべく、野の花の図鑑をひも解いたものの見つけられない。そこで、野に咲く秋の白い花、とネット検索してみたら『仙人草』に辿り着いた。ところが、写真は同じであったが、毒を持つ花との表記が目に焼きついた。美しい花には何かしら裏の顔があるものと、諦観。

 その後調べるに連れ、クレマチスの仲間とも書いてある。クレマチスだったら、和名をテッセン(鐡線・鉄仙)と言い、初夏に桔梗(ききょう)に似た紫色の花を持つ、清楚で人気の植物。原産地は中国だが世界中で改良され、色も紫、クリーム、白と様々。花の形も多様で、限定は出来ない。が、このクレマチスにも毒性があり、葉をすり潰して皮膚に塗ると、かぶれる怖れがあると言うから要用心。

 そんなことで、仙人草を更に突き詰めて行くと、色々な呼び方が存在した。毒草だからだろう、馬食わず、毒カズラ、ハレグサ、ウシノハコボレ(牛の歯こぼれ)なんて言うのがあり、他にはボタンヅルとかクサボタンと呼ばれていた。花が咲く前、生垣につるを伸ばし邪魔なので引き抜いていたが、毒にやられずによかったと、安堵(あんど)している。

 千葉では、瓦を飛ばされた家を訪れ、ブルーシートを張りますと手伝いを装い、後で法外な値段を吹っかける悪質な業者がいた。また、停電で働かなくなった信号機用の発電機を盗む輩も。過酷な状況の中で、必死に働いているボランティアの方々が多くおられる中、とんでもない毒を撒き散らす悪人共。クレマチスや仙人草は、毒を持ち合わせてはいるが、その毒は薬にもなる。世には、善と悪が存在するが、火事場泥棒のような悪人だけは、断じて許す訳には行かない。台風17号の被害がないことを祈りつつ、美しい地球を子孫に残さねばと心から願うばかり。

                   ◇

【プロフィル】だん・たろう

 1943年、作家・檀一雄氏の長男として東京に生まれる。CFプロデューサー、エッセイストとして活躍し、「新・檀流クッキング」などの著書多数。妹は女優の檀ふみさん。

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