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九州新幹線長崎ルート「佐賀の将来考え、交渉を」フル規格へ前進、知事の反発に懸念も

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九州新幹線長崎ルートの整備に関し、取材に応じる佐賀県の山口祥義知事(左)
九州新幹線長崎ルートの整備に関し、取材に応じる佐賀県の山口祥義知事(左)

 九州新幹線長崎ルートは全線フル規格-。同ルートの未着工区間(新鳥栖-武雄温泉、ともに佐賀県)について与党検討委員会が5日、フル規格の整備方針を決定し、西九州と関西を直結する大動脈の実現が一歩近づいた。残るハードルは反発する佐賀県との調整だ。「与党が佐賀の負担軽減に心を砕く今こそ、交渉すべきだ」と、県の姿勢を懸念する声も出た。(九州総局 高瀬真由子)

 「フル規格にはそもそも手を挙げていない。調整の場で急に決められても、筋が違う」

 佐賀県の山口祥義知事は5日、県庁で報道陣の取材に応じた。表情は硬いままだった。

 検討委の会合に先立つ同日午前、山本幸三委員長から電話があり、「中央からの押しつけがあってはならない」と伝えたという。山口氏はこの日も、従来繰り返してきた課題に言及した。佐賀県の財政負担▽開業後の在来線のあり方▽ルート▽地域振興-の4点だ。

 国の試算によると、フル規格で整備した場合、佐賀県の実質負担は約450億~660億円とされる。これには、JR九州が線路使用料(貸付料)を国側に払い込む期間を、現在の30年から50年に延ばすことで、地元負担を軽減する案も浮上する。

 山口氏は最近の記者会見では、在来線の問題に言及することが多い。フル規格の新幹線が通れば、在来線の本数が減少し、運賃も上がる懸念があるという。

 ルートをめぐり、地元関係者からは、佐賀市中心部の佐賀駅を通らず、佐賀空港を通る南回りルートや、長崎道沿いを通る北回りルートを推す意見が出ている。今後の検討課題だ。

 ■喜びに沸く

 一方、ようやく整備方針が固まったことに、フル規格を求めてきた地元関係者は沸いた。

 「待ち望んでいた結論が出た。高速鉄道網の一つとして、フル規格での整備が必要だと理解していただいた」。長崎県議会で交通関係の特別委員会委員長を務める八江利春議員は、こう述べた。

 全線フル規格化が実現すれば、長崎-福岡は51分で結ばれる。さらに山陽新幹線への乗り入れによって、関西圏との直通も可能となる。フル規格化は、長崎県の悲願だった。

 佐賀県嬉野市商工会の小原健史会長も「ようやく一歩前進だ。国も佐賀県の財政負担軽減のため、考えてくれている。差し伸べられた手を振り払わないでほしい。佐賀の将来100年のことを考え、話し合いや交渉をすべきだ」と訴えた。

 佐賀県内の議員有志でつくる「フル規格促進議員の会」会長の平原嘉徳佐賀市議も「運動してきたことが実を結び、安堵(あんど)した。知事は、まず検討委の関係者と会ってほしい。懸念していることを伝え、交渉をしてほしい。会わなければ何も進まない」と求めた。

 「与党を袖にしたら、佐賀は見捨てられる」。山口氏のかたくなな姿勢に、佐賀県内からも疑問の声が上がる。

 ■危機感を

 長崎ルートを全線フル規格で整備した場合、国土交通省は費用対効果を「3・3」と試算した。投資に見合う目安とされる「1」を大きく上回る。与党検討委の結論は、こうした試算を基にしている。

 フル規格化の議論が前進しなければ、時短効果が小さな「対面乗り換え」が長期化する。

 北陸新幹線で未着工の敦賀-新大阪は、整備財源確保への検討が進む。一方、佐賀県が反対する長崎ルートは、令和2年度政府予算の概算要求に、関連費用を盛り込むことは難しい。整備予算の争奪戦で、長崎ルートが後塵(こうじん)を拝する恐れがある。

 山口氏は交渉のテーブルに着くのか。与党検討委の山本氏は6日、佐賀県庁を訪問するが、山口氏との面会は未定という。

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