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【子ども点描】2歳児が指を開いて画面拡大 IT時代の新たな発達指標

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 前回、子どもたちがなりたい職業の一つに、IT関係の仕事があるという話をしました。ITは、今や私たちの生活にとってなくてはならないもので、子どもたちにもなじみのものであることを反映しているのではないかと思います。

 新型コロナウイルスの感染拡大による全国的な休校措置のときも、小学校から大学に至るまで、ネットワークを使っての遠隔(オンライン)授業が展開されました。

 私の授業も遠隔に切り替わりました。私が勤務している大学は幸いにして、これまでも全学をあげて教育のIT化を進めていましたので、大人数の同時双方向授業でも、比較的スムーズに切り替えができました。ノートパソコンが普及し始めたのは今の学生たちが生まれた平成12年前後ということから考えると、ICT(情報通信技術)による授業は抵抗感の少ないものだったのかもしれません。

 昨今、子どもの育つ環境の変化は、さらに加速しているように感じます。最近、2歳半の子どもと母親の様子を観察する機会がありました。

 子どもは母親と一緒にスマートフォンの画面を見ていましたが、ごく普通に、親指と人さし指を開いて、画面を大きくしたり、指先を左右に滑らせて画面表示を変えたりしていました。

 私にはちょっとした驚きでした。発達心理学的には、親指と人さし指を使ってものをつまむという動作は1歳ころから観察され、ものの操作に関する一つの発達指標ともなっています。

 一方の、指を開くという動作は、つまむ前の動作ではありますが、あまり注目されてきませんでした。

 しかし、デジタル時代の子どもにとって、指を開くという動作は、画面を拡大するという働きを持つ意味のある動作となっているのです。新しい発達の指標がデジタル化の進歩によってもたらされたといえます。

 人間の行動や思考方法は、環境に適応することで変化してきました。言い換えると、環境が私たちに、新しい行動を作り出すことを求めるのです。

 大人は、それを新しいものとして試行錯誤の中で学習し使いますが、子どもたちは生まれたときからそこにあるものとして、その中で育ってゆきます。

 1歳の子どもが、テレビの画面を手でスライドさせようとしている姿を見たこともあります。大人からみると奇異な行動ですが、この子どもにとっては自然なことで、どうして画面が変わらないのか、そのことが奇異だったのではないでしょうか。

 デジタルネーティブという言葉があります。生まれたときから当たり前のようにITやICTが存在し、それを自然に使いこなすことができる世代がここにいます。彼らが大学で学ぶ20年後に、どのような教育が展開されているのか、一研究者としての興味は尽きません。

 河合優年(かわい・まさとし) 大阪府岸和田市出身。武庫川女子大副学長、同大教育研究所教授・子ども発達科学研究センター長。中央教育審議会で専門委員を務めたほか、科学技術振興機構の「日本における子供の認知・行動発達に影響を与える要因の解明」グループリーダーなどを歴任した。日本発達心理学会評議員、学校心理士スーパーバイザー。

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