PR

首里城火災で危機感 奈良が制定目指す独自条例の行方

PR

国宝・東塔の落慶法要を今春に控え、薬師寺で実施された消防訓練=1月20日、奈良市
国宝・東塔の落慶法要を今春に控え、薬師寺で実施された消防訓練=1月20日、奈良市
その他の写真を見る(1/3枚)

 1300件超の国宝・重要文化財を誇る奈良県が、文化財の防火体制を整える独自の条例づくりに乗り出している。昨年10月に発生した首里城(那覇市)の火災を教訓に、貴重な文化財を守り、後世に引き継いでいくのが狙いだ。少子高齢化と過疎化が深刻化する中、資金と人手の両面が不足するなど喫緊の課題も浮上。「文化財の宝庫」を堅持する体制づくりが急がれている。(岩口利一)

 「文化財をどのようにして火災から守るのか、体制を整備したい」

 首里城の火災を受け、県が11月に開いた緊急会議で、荒井正吾知事はこう述べた。条例案には社寺などの建造物について、所有者だけでなく自治体や消防、地域住民が連携し、防火体制を構築することを盛り込む方針。県によると、こうした条例は全国的にも珍しい。

 昭和24年1月26日、法隆寺金堂(奈良県斑鳩町)から出火し、模写作業中だった壁画が焼損。これを教訓に文化財保護法、文化財防火デーが制定されたことはよく知られている。約110年ぶりとなる国宝・東塔の解体修理がほぼ完了し、今春に落慶法要を控える薬師寺(奈良市)も首里城の火災に危機感を募らせ、1月20日に消防訓練を実施した。

 さらに、県文化財保存課の常盤佳宏課長補佐は「少子高齢化と過疎化が進み、(文化財の)守り手が少なくなっていくのでは、という危機感もある」と話す。

 建造物や仏像といった文化財は火災だけでなく、震災への備えも不可欠だ。国宝・鑑真和上坐像を安置する唐招提寺(奈良市)の重文・御影(みえい)堂では、屋根の傷みや地盤沈下が進み、現在修理が行われている。屋根の葺(ふ)き替えと耐震補強工事を実施し、重要なお堂を守ろうとしている。

 ただ、伽藍(がらん)維持費がかさむことを理由に、寺は4月に27年ぶりとなる拝観料の値上げに踏み切る。石田太一副執事長は「文化財に指定されていない境内の建物や樹木も含め、費用の確保は大変。防犯のための人件費もかさむ」と説明する。

 NPO法人「奈良まほろばソムリエの会」が平成29年7月~31年4月、県文化財を対象に実施した調査によると、防火対策は「実施済」「一部実施済」を合わせて9割を上回ったが、震災対策は「未実施」が約6割に上った。山間部では震災被害が懸念されるお堂もあるといい、久門たつお理事は「檀家(だんか)や氏子が減少し、費用面がネックとなっている」と指摘する。

 国宝・十一面観音立像で知られる奈良県桜井市の聖林寺。米の東洋美術史家、アーネスト・フェノロサをも魅了した天平の美仏を安置している鉄筋コンクリート造の収蔵庫は昭和34年築で老朽化が進み、免震化が課題だった。

 寺は免震機能を備えた建物への改修を決め、今年に着工、来年には工事を終え、四方から像を拝観できるようにする計画だ。しかし費用は1億5千万円程度といい、補助金を活用できる見込みとはいえ、資金繰りは大変だ。

 倉本明佳住職は「1300年、守られてきたお像が失われてはならない。できる限りの対策を施すため、多くの人に関わってもらえたら」と寄進を呼びかけている。

この記事を共有する

おすすめ情報