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「当時とは問題意識に隔たり」前田建設の石膏ボード不法投棄問題、くすぶる不安

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 準大手ゼネコン「前田建設工業」(東京)が工事を請け負った学生寮や校舎の壁の隙間に石膏(せっこう)ボードの端材を不法投棄していた問題が波紋を広げている。前田建設は「工事で出た石膏ボードの切れ端を壁の隙間に入れることは先方も了承の上だった」と主張するが、環境省は「産業廃棄物である石膏ボードをそのようにしておく行為は当時も今も違法」との見解を示す。関係者は「十分な説明を果たさなければ(施工不良問題で問題が膨らんで社長の辞任にまで発展した)レオパレス21の二の舞になりかねない」と指摘している。(荒船清太)

次から次へと…

 「明らかに、ゴミだ」

 今年5月、石川県輪島市にある日本航空高等学校石川の学生寮で水漏れ工事を請け負った建設コンサルタント会社「ウトロン」(東京都港区)の吉野章代表取締役は、取り外した壁の隙間からカビなどで真っ黒に変色した石膏ボードが次々と見つかったことを受けて、こう確信した。

 傍らには、使用済みの軍手なども無造作に落ちていたという。同じ敷地にある航空大学校も含め、校舎と学生寮の4つの建物で、壁を開けるたびに廃石膏ボードが見つかった。いずれも前田建設が施工・監理した建物。長年、建設工事に携わってきた吉野氏は「こんなに大量のゴミを壁の中に入れるなんて、聞いたこともない」とあきれる。

そもそも契約成立せず

 環境省廃棄物規制課の担当者は「不法投棄事案は数多く経験してきたが、地面のなかに埋めるどころか、壁の中に入れ込む不法投棄事案は前代未聞。全く理解ができず、早急に処分すべきだ」と話す。

 産経ニュースが前田建設の投棄が廃棄物処理法違反にあたる可能性があると報じた翌日の9月7日、前田建設はプレスリリースを発表。「石膏ボードの端材が残置されていることを確認した」としたうえで、「多大なご迷惑ご心配」をかけたとして関係者に謝罪した。

 だが、石膏ボードを廃棄した行為自体については、両校を運営する学校法人日本航空学園との「合意により行ったものだと認識している」と主張。その上で「施工当時と現時点とでは問題意識に相当の隔たりがあるほか、発注者と当社の認識も異なるところもある」と説明し、国土交通省の裁判外紛争処理機関「中央建設工事紛争審査会」へ調停申請していると明かした。

 石膏ボードは一定の条件下だと硫化水素が発生する恐れがあるが、これについては「発生する恐れはないことを確認している」としている。

 これに対し、同課の担当者は「平成14年時点でも現在でも、石膏ボードが産業廃棄物であり、適切な処分が必要なことは変わらない。仮に合意があったとしても、適切に処理されなければ行政指導の対象になる」。司法関係者も「不法投棄に関する合意だとすれば、公序良俗に反する違法な契約であり、そもそも成立しない」と話している。

過去には経費節減で…

 なぜ、このような事態が起きたのか。前田建設は学園に対し、「工期短縮のためだった」と回答しているが、設計士の資格を持つある建設関係者は「短縮できる工期はかなり限定的。コスト圧縮のためだった可能性がある」と指摘する。

 この建設関係者によると、産廃である石膏ボードは、建設現場から出る他のごみと分けて、単独で処分する必要がある。

 「処理・運搬コストは一般のごみの10倍以上かかる。トラック1台分だけで数万円、今回の工事では1億円以上かかった可能性がある」とし、「通常の処理をせずに壁の隙間に入れてしまえば、その分のコストが浮くのは事実だ」と打ち明けた。

 実際、平成20年に松江市のホテルの地下室に廃石膏ボードなど計約30トンが不法投棄され、ホテルの前経営者が廃棄物処理法違反で有罪判決を受けた事件では、不法投棄が経費節減のためだったことが判明している。

 別の建設関係者は「今回ほどの規模ではないが、石膏ボードの端材や空になった弁当のゴミなどを現場に隠すことはよくある」とした上で「下請けが勝手にやることはあるが、元請けが実行するのはあまり例がない」と驚きを隠さない。

くすぶる不安

 今回の問題を受けて、株式市場には動揺が広がっている。

 前田建設は3月にグループ会社の前田道路を株式公開買い付け(TOB)で連結子会社にしたが、買い付けに利用した借入金の返済のため、9月3日に総額200億円の無担保社債を発行すると発表したばかりだった。

 問題が発覚し前田建設が事実を公表した7日には一時、株価が急落。現在は持ち直してはいるものの、建設業界も扱う投資コンサルタントの関係者は「不安はくすぶっている」と話す。

 この投資コンサル関係者は「(石膏ボードを不法投棄した)当時の前田建設が現在とは『隔たりのある問題意識』を持っていたとすれば、同様の不法投棄が他の工事施設でも行われていた可能性は否定できない」と指摘。

 平成30年にマンションの施工不良問題が発覚して赤字が膨らみ、社長が辞任する事態にまで発展したレオパレス21を例に挙げ、「不法投棄問題は会社の経営体質に関わる根深い問題。説明を尽くさなければ思わぬしっぺ返しが待っているかもしれない」と警告した。

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