PR

テレワークの防災効果 都市機能分散で被害軽減

PR

 新型コロナウイルスの感染拡大で注目されたテレワーク。大規模災害時の企業や官公庁の事業継続や帰宅困難者数を軽減させる効果があるとし、国土交通省などはテレワークの普及を推奨してきた。さらに、テレワーク研究者からは「首都直下や南海トラフ地震など日本の心臓部を直撃する大災害を前に、都市機能を地方に分散するためにもテレワーク普及は喫緊の課題」との指摘もでている。(編集委員 北村理)

 4月中旬の厚生労働省の調査によると、新型コロナの感染防止策として在宅勤務が推奨された結果、オフィスワーカーのテレワーク実施率は全国平均で27%、最も多かった東京都では52%だった。また6月に内閣府が発表した調査結果では、テレワークを何らかの形で経験した就業者は全国で34・6%に上った。

 テレワークの実施率は大規模災害時に高まる傾向がある。国土交通省によると、東日本大震災が発生した平成23年度の在宅テレワーク人口は前年度比170万人増の490万人。また、首都直下地震の被害想定では、テレワーク人口の増加が帰宅困難者数を最大64万人減少させると推計しており、同省はテレワーク導入を推奨している。

 テレワーク研究者で米イエール大講師の河井容子氏(一級建築士)は「テレワークを普及させ、都市機能の分散を図ることが災害に強い国土づくりに結び付くという視点が必要だ」と指摘する。

 これまで日本人の職住は都市部を中心に形成されてきたが、テレワーク普及によって地方に分散されれば、人口と都市機能の集中が緩和され、災害による被害は軽減される。また、テレワーク普及の過程で地方の交通・通信インフラが整備され、都市機能のバックアップ効果も期待できる。

 実際、米国では1994年ノースリッジ地震の後、自宅やサテライトオフィスでのテレワーク導入により本社機能の分散化を図る企業が増えたが、こうした企業は「2001年の同時多発テロの際も事業再開が迅速だった」(国交省)。

 今後発生が懸念されている首都直下地震は首都圏を直撃し、南海トラフ地震の被災想定地域は首都圏から九州に及ぶ。これらの想定地域は沿岸部であり、日本の製造業出荷額の6割、自動車輸出の約9割を占めるとされているだけに、米国のようにテレワークの推進による都市機能の分散化への取り組みは不可欠だ。

 河井氏は平成23年度にテレワークの実施率が1位だった山梨と、3位だった沖縄に着目し、「テレワークが導入されたことで、地方でも職住を一致させることが可能になったのではないか」と分析。「人々が自然豊かな地方に生活の価値を見いだし、永続的に地方で職住を維持してこそ、テレワークによる都市機能の分散化が実現する」とみる。

 現在米国では、新型コロナ渦によるテレワークの普及を、地方での職住維持につなげる動きが顕在化しているという。河井氏は「テレワークを経験したことで、人々はワークライフバランスを志向し、都市生活の便利さよりも健康的で幸福感ある生活を求め始めた」と指摘。日本についても「自然災害の危機に直面している現実も受け止め、テレワーク普及による強い国土づくりを目指すべきだろう」と主張している。

この記事を共有する

おすすめ情報