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【田村秀男のお金は知っている】中国経済の未来は… 追い込まれた習近平氏になめられる?親中派に縛られた安倍政権

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 《一九四九年十月、中国・広東省の人民解放軍東江縦隊一万二千人の兵士が広州解放のあと香港との国境の深セン河に達し、対岸の英軍小部隊三百人とにらみ合った。だが、解放軍は渡河せず境界警備に徹した。実はその年の初め、国民党との内戦の勝利を確信していた毛沢東は対外関係・貿易のために香港を利用する考えをソ連のスターリンに伝えていた。周恩来は英国と交渉し、中国の香港駐在員の保護などを条件に香港の現状維持を約束した。英国は五〇年一月に西側の先頭を切って新中国を承認した。毛沢東と周恩来は国際金融都市、香港を奪還せずに「長期打算、充分利用」する路線を敷いたのだった》(以上、拙著『人民元・ドル・円』〈岩波新書〉から)

 同路線は北京の歴代政権に踏襲されてきた。最高実力者トウ小平氏とサッチャー英首相が合意した1984年12月の中英共同宣言によって97年7月の香港返還後も、「一国二制度」が適用され、香港の高度な自治が保証された。改革開放政策の中国は香港経由でドルと西側企業の投資を呼び込み、経済の急速な発展を遂げることができた。

 中国高度経済成長の方程式改竄(かいざん)の賭けに出たのが習近平国家主席である。先の中国共産党主導の疑似国会、全国人民代表大会(全人代)で決議した香港国家安全法は、香港を北京の強権のもとに監視し、取り締まる。一国二制度の約束はほごにされたとトランプ米政権は強く反発、香港への貿易、金融上の特権停止を柱とする制裁へ動く。

 香港は対中直接投資、中国の対外直接投資の各7割、6割を占め、アリババなど中国企業の新規株式上場による外貨資金調達の大半を提供する。この「充分利用」路線破壊の挙に出るとは、途方もなく強欲な共産党幹部たちの行動からして信じがたいが、それだけ習政権は追い込まれている。

 グラフを見ればよい。本欄で何度も触れているように、中国の通貨制度は事実上のドル本位制であり、貿易や投融資によって流入するドルに応じて中国人民銀行が人民元を発行し、経済成長に必要なカネを供給する。

 ところが、2015年に人民銀行のドル資産は前年比マイナス続きである。これに引きずられて人民元資金発行は前年比ゼロ%前後にとどまっている。コロナ恐慌対策で米欧日は大掛かりな金融緩和と財政出動に踏み出したが、習政権の方は新型コロナウイルス感染症が爆発した1月下旬以来、財政出動は一貫してしょぼく、金融の量は引き締めているのが実態だ(日本の親中メディアが流す中国の財政、金融拡大情報は北京の「大本営発表」に過ぎない)。

 外貨難の主因は資本逃避であり、そのメインルートは自由香港である。香港市場を北京の監視、統制下に置いて、カネの脱出口をふさいでしまうしか、中国経済の未来はないと習政権は判断したのだ。

 しかも、トランプ政権の対中制裁といっても、西側が結束する気配は弱い。特に親中派に縛られる安倍晋三政権が同調するはずはないとなめているだろう。 (産経新聞特別記者・田村秀男)

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