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【深層リポート】山梨発 富士山ハザードマップ 迫られる避難計画の大幅改定

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富士山ハザードマップの想定で溶岩流が2時間以内に到達するケースがあった山梨県富士吉田市の市街地(渡辺浩撮影)
富士山ハザードマップの想定で溶岩流が2時間以内に到達するケースがあった山梨県富士吉田市の市街地(渡辺浩撮影)

 山梨、静岡、神奈川県などでつくる富士山火山防災対策協議会は、富士山噴火の被害を想定したハザードマップ(災害予測地図)改定の中間報告を公表した。山梨県富士吉田市では、小規模噴火から約2時間で溶岩流が市街地に到達するケースがあることが判明。現在シミュレーション作業中の中規模、大規模噴火ではさらに影響範囲が拡大することが見込まれ、避難計画の大幅な見直しが迫られている。

2時間で市街地に

 現行のハザードマップは平成16年に国が策定し、協議会が今年度中の改定を目指している。協議会会長の長崎幸太郎山梨県知事と、改定作業を行った検討委員会の藤井敏嗣委員長(元火山噴火予知連絡会会長)が3月30日、山梨県庁で中間報告を発表した。

 火口からマグマが流れ出す溶岩流について、今回は小規模噴火で想定される92の火口から流れる時間や範囲を前回より詳細な地形データで分析した。

 このうち、新たに想定火口に加わった富士吉田市の「雁ノ穴火口」から発生した場合は、噴火間もなく道の駅富士吉田に達し、国道138号を越えて2時間以内に市立病院周辺に到達するケースがあった。現行のハザードマップより約10時間、到達が早い。

 溶岩流が冷えて固まるまでの6日以内に、北東に約10キロ離れた同県西桂町の富士急行三つ峠駅付近まで流れると想定している。

 静岡県側でも、富士宮市の「二子山火口」で発生した場合は2時間以内に市街地周辺に達し、国道139号を越えるケースがあった。

「適切に恐れる」

 「富士吉田の市街地に想像以上に早い時間で溶岩流が流れることに大きな衝撃を受けている」。長崎知事は中間報告内容に驚きを隠せず、「住民の避難時間の短縮と溶岩流の到達時間を長くするための工夫をしたい」と語った。

 県は4月1日、富士吉田庁舎の中に「火山防災対策室」を設置した。3人の職員のうち1人は全国で初めて採用した火山防災の専門職で、市町村や富士山科学研究所と連携して避難計画の立案などを進める。

 藤井委員長は「溶岩流の速さは人間が歩く速度か、それより遅い場合が多い。のみ込まれるという心配はしなくていい。整然と避難する体制を整えておくことが重要だ」と述べ、火山のことを知って「適切に恐れる」ことを強調した。

予知はできるのか

 今回の想定はあくまで小規模噴火で、協議会は大規模や中規模噴火の溶岩流の想定を今年度末までに計算する。マグマの噴出量が多くなれば当然、影響範囲が広がり、避難が必要な住民も増える。

 一方、中間報告では、時速100キロ以上で破壊力が大きい火砕流の到達想定も延びた。同時に発表された県の総合対策では、火砕流について「現象が発生してからの避難は極めて困難」とした。

 では、富士山の噴火は予知できるのか。藤井委員長はこう話した。

 「必ず起こるが、いつ起こるか分からない。過去の噴火と似たマグマの活動があった2018年のキラウエア火山(米ハワイ州)の噴火では、地震が起き始めて3日後には真っ赤な溶岩が噴き上げていた。同じようなことが富士山でも想定される」

記者の独り言】 富士山が噴火した際に溶岩流が2時間以内に到達するケースがあるとされた山梨県富士吉田市の市街地を歩いた。道の駅富士吉田は新型コロナウイルス感染拡大で休館中だが、普段は多くの観光客が訪れる。住宅や商業施設のほか、周辺には病院や学校もあり、下流には防災拠点となる市役所も見える。富士山は江戸中期の宝永4(1704)年以来、噴火していないものの、藤井委員長の「数百年休んだら次も来る」という言葉を心に刻んで備えたい。(渡辺浩)

富士山ハザードマップ】 富士山の噴火に備え、想定される火口範囲や溶岩流、火砕流などが到達する危険のある範囲を示した災害予測地図。現在のマップは平成12~13年に富士山直下で低周波の地震が多発したことをきっかけに、16年に策定され、山梨、静岡、神奈川3県の広域避難計画にも反映されている。新たな知見を踏まえた改定作業は30年度から始まり、令和2年度中の完成を目指している。

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