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【ビジネス解読】サムスン、自慢のスマホ機種が不振 反転攻勢に誤算

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新型コロナウイルスの影響で韓国サムスン電子の最新スマートフォン「ギャラクシーS20」シリーズの販売が振るわない=2月11日、米サンフランシスコ(ロイター)
新型コロナウイルスの影響で韓国サムスン電子の最新スマートフォン「ギャラクシーS20」シリーズの販売が振るわない=2月11日、米サンフランシスコ(ロイター)

 韓国サムスン電子が狙う2020年の反転攻勢に誤算が生じ始めた。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、世界首位のスマートフォンの販売台数が数千万台落ち込むためだ。スマホは急成長の中国勢に押されているだけに、一段と苦戦を強いられる。足元の業績はスマホとともに2本柱の半導体が好調で支えているが、あてにしている高速大容量の第5世代(5G)移動通信システム向けの需要減少が顕著になり、半導体事業に影響が出かねない。

 スマホ事業で悩ましいのは、年初に発売した旗艦機種「ギャラクシーS20」が期待ほど売れていないことだ。中央日報(日本語電子版)によれば、サムスン関係者の間では歴代のギャラクシーSのうち、最悪の成績を出すのではないかとの懸念が出ている。

 新型コロナの影響で韓国国内の販売台数は今のところ、前機種「S10」の80%水準という。海外も同様、需要減とともに生産工場や販売店の休業が相次ぐ。

 こうしたことからS20の年間販売台数は、3500万台程度を維持してきた従来製品と比べて大幅に減少し、2000万台にとどまるとの見方が浮上する。

 韓国投資証券は、サムスンの今年の全スマホ販売台数を従来見通しより6.8%減の2億8000万台に下方修正した。19年の3億台弱から1000万~2000万台の幅で減ると予想する。

 中国華為技術(ファーウェイ)や米アップルなど競合他社も状況は似ているが、サムスンにとって今年を代表する新製品という点で相対的に打撃が大きい。

 そもそも、サムスンのスマホ事業の競争力が低下している、との指摘もある。世界最大のスマホ市場である中国は、ファーウェイなど自国メーカーが強く、サムスンのシェアは1%に満たない。世界シェアも13年の26.8%から16年に19.2%、19年は17.5%と下がり続けている。首位は堅持するものの、「ファーウェイにあごの下まで追撃されている」(中央日報)状況だ。

 一方、サムスンが4月上旬に発表した1~3月期の連結決算(速報値)は、本業のもうけを示す営業利益が前年同期比2.7%増の6兆4000億ウォン(約5700億円)にとどまった。在宅勤務やオンライン教育の拡大によりサーバー需要が増えて、主力の半導体メモリー価格が上昇し何とか利益を確保した。韓国メディアによれば、スマホを扱うIT・モバイル部門の割合は30%前後とみられる。世界シェアが20%を超えていた15年以前の営業利益に占める割合は60%台で、スマホの失速感は否めない。

 ここにサムスンの苦悩がある。世界で約8割のシェアを握るスマホ向けディスプレーに一層注力する戦略に転換していたからだ。

 サムスンは3月末、年内にテレビ向け大型液晶パネルから撤退する方針を明らかにした。中国勢との競争激化で赤字が続いてきたことが要因だが、不採算事業を切り離したうえ、スマホと、他社にも供給するスマホ向けディスプレーを合わせたスマホ関連事業への依存度を高めたといえる。だが、S20の不振により暗雲が立ち込めている。

 新型コロナの感染拡大がなければ、サムスンには2年ぶりの大幅増益が期待されていた。19年12月期の営業利益は、半導体が好調で過去最高となった18年12月期の反動から約半減。それでも終盤の10~12月期は半導体市況の好転を受け、前年同期と比べた減少幅を約30%に縮めた。市場予想を上回る改善で、韓国の証券アナリストは20年12月期の営業利益について、総じて40%前後伸びると期初に予想。1月には期待感からサムスン株は上場来最高値を更新した。しかし、新型コロナの感染拡大による経済停滞の影響は大きく、勢いは消滅。1~3月期は「持ちこたえただけだ」(サムスン幹部)。

 サムスンが頼みの綱とする半導体も、新型コロナで出鼻をくじかれた。今年の半導体業界は、5Gの本格商用化に伴い、対応スマホ向け製品の販売増や、データ通信量が増え、データセンター増設向け投資で製品の引き合いが強まることを需要拡大要因に挙げてきた。ところが、最近ではスペイン、フランス、ポルトガル、オーストリアなど欧州勢だけではなく、5G網拡大を計画した米国でも5G投資延期の表明が相次ぐ。

 サムスンにとって、新型コロナの終息を見据えた守りの戦略をいかに迅速に実行できるかが試されている。(経済本部 佐藤克史)

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