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【ビジネス解読】新型コロナで利用者“爆増” 強まる巨大ITの市場支配 

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巨大IT企業の市場支配が強まっている(ロイター)
巨大IT企業の市場支配が強まっている(ロイター)
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 新型コロナウイルスの感染拡大との戦いで、アマゾン・コムやマイクロソフトなど巨大IT企業の存在感が高まっている。人との接触を避けられる各社のネットサービスの利用が急増、ライバル関係を越えた“ITドリームチーム”も結成し、ワクチン開発に向けた迅速なデータ解析も支援する。パンデミック(世界的大流行)を機に拡大するサービス利用の波は、巨大ITの市場支配力を強めそうだ。

 米政府は3月、新型コロナの治療薬やワクチンの開発を促進するため、米国が持つスーパーコンピューターの計算力を世界中の研究者に開放する産学官連携のプロジェクト「COVID-19 ハイパフォーマンス・コンピューティングコンソーシアム」を発足。ここに日頃、熾烈な顧客争奪戦を演じているアマゾン、グーグル、マイクロソフト、そしてスパコンの老舗IBMというIT業界の巨人がそろい踏みした。

 各社の提供する計算能力の合計は330ペタフロップス(1ペタフロップスは毎秒1000兆回の演算)以上。日本の理化学研究所が誇ったスパコン「京」の33倍というとてつもない性能だ。その実力の例を挙げると、中核を担う世界最速のIBM製スパコン「サミット」は、8000種類の化合物から新型コロナの治療薬開発に役立つ物質を見つけ出す、普通なら数カ月はかかる膨大な解析をわずか1~2日で終えたという。

 このプロジェクトが実現できるのは「クラウド」と呼ばれるネットサービスのインフラがあるからだ。

 身近なイメージでいえば、不特定多数と楽しめるオンラインゲームや動画共有などの環境だ。利用者が特別なシステムを整える必要はなく、インターネットにつながる端末環境があれば、水道の蛇口をひねるような手軽さで、ビデオ会議やデータ管理、人工知能(AI)など、さまざまなITサービスの提供を使いたい分の料金で受けられる仕組みだ。

 クラウドのサービスは既に多くの企業や個人が使っているが、新型コロナの感染拡大を受けて3月は利用が爆発的に増えている。ビデオ会議などに使われる代表的なサービスでは、マイクロソフトの「Teams(チームズ)」の月間利用者がイタリアで775%増、グーグルの「Hangouts Meet(ハングアウトミート)」の1日の世界の使用量は1月に比べ25倍という状況だ。

成長スピードは加速

 調査会社のカナリスによると、2019年のクラウドサービスの世界市場規模は、前年比37.6%増の1070億ドル(約11兆円)に達している。非常時を支援するため一部のサービスは無料で提供されており、クラウドの利便性や有用性を実感する人は広がっている。通信容量の制約がなければ利用増の勢いは当面続き、市場の成長スピードは一段と加速するだろう。

 その市場で5割超のシェアを握っているのが、首位のアマゾンはじめ、スパコンプロジェクトに集まった面々だ。

 各社はそれぞれのITサービスを新型コロナ対策に積極的に提供して社会的な貢献に努めているが、その活動は、結果的に潜在顧客の掘り起こしやサービス利用範囲の拡大など、世界レベルのビジネスチャンスにつながっている。

MSはサービス拡充

 実際、顧客層の広がりをにらんだ戦略も出てきた。

 マイクロソフト(MS)は3月30日、文書作成や表計算で知られる業務ソフトのクラウドサービス拡充を発表。簡潔な表現に書き換える候補を自動で提示してくれるなどのAI機能を追加したほか、企業や教育機関などの法人向けだった「チームズ」の機能を個人にも展開する方針を打ち出した。また、在宅勤務を意識して企業色を薄める狙いか、サービス名称も「オフィス365」から「マイクロソフト365」に改めた。

 パンデミックを経験したことで、働き方や学び方、危機管理など新たな社会の仕組みを探る投資が世界的に増えるのは確実だ。その際に、クラウドなど最新のITサービスの導入が検討されていくのは自然の流れ。技術力やコスト競争力に勝る巨大ITへの資本やデータの集中はさらに増す可能性が高く、自動運転やAIなど、次世代技術の覇権争いで巨大ITと対峙(たいじ)する日本企業は戦略の再考を迫られるかもしれない。

 一方で、クラウド市場の拡大と寡占化が強まれば新たな脅威も生まれる。サイバー攻撃やプログラムのバグ(欠陥)によるシステム障害のリスクが、大規模停電(ブラックアウト)のように巨大化する恐れだ。

 今は新型コロナに打ち勝つことが先決だが、事態の収束後のビジョンも重要だ。(経済本部 池田昇)

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