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【ビジネス解読】ファーウェイ「排除」の動き鈍く 韓国サムスンに誤算

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ファーウェイのロゴ(ロイター)
ファーウェイのロゴ(ロイター)
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 トランプ米政権の“封じ込め”策にもかからず、中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)が市場での存在感を強めている。スマートフォンの昨年の出荷台数で米アップルを抜いて世界2位に浮上、第5世代(5G)移動通信システムの核となる基地局インフラでも首位を維持しており、トランプ政権の圧力に乗じようとしていたライバル企業の目算は狂いそうな様相だ。

ファーウェイ2位に躍進

 米調査会社のIDCによると、2019年のスマホのメーカー別世界出荷台数は、韓国のサムスン電子が前年比1.2%増の2億9570万台(シェア21.6%)で首位を維持。前年2位だったアップルが8.5%減の1億9100万台(同13.9%)にとどまり、16.8%増の2億4060万台(同17.6)と大幅に伸びたファーウェイが逆転した。

 米政府は昨年5月、安全保障上の問題があるとして、ファーウェイを事実上の禁輸リスト「エンティティー・リスト(EL)」に指定。これ以降、ファーウェイには、米国製の高性能電子部品の調達や、スマホ向け基本ソフト(OS)で圧倒的なシェアを握る米グーグルのソフトサービスの利用などが制限される逆風が吹いている。

 にもかかわらず、首位サムスンとファーウェイの市場シェアの差は前年の6.1ポイントから4ポイントに縮小。スマホ市場のデータは、ファーウェイに自力で逆風を切り抜ける力があることを示した。

 これに脅威を感じているのは、2位の座を奪われたアップルより、むしろサムスンだろう。サムスンには、トランプ政権の「ファーウェイ排除」を好機とみて、5G移行のインフラ需要を取り込み、スマホにとどまらず、基地局でも覇権を狙う野心があるからだ。

 基地局の通信設備は、ファーウェイ、スウェーデンのエリクソン、フィンランドのノキアの世界大手3社がそれぞれ20~30%前後のシェアを握る3強の寡占市場だ。

 サムスンは、20年末にシェア20%を獲得する目標を掲げており、今年1月、トランプ政権のお膝元で5Gの構築サービスを手がける米テレワールドソリューションズ(バージニア州)を買収するなど攻勢をかけていた。

 だが、攻め込むはずの基地局では「ファーウェイ排除」の動きが鈍く、逆にファーウェイにスマホ首位の座を脅かされる事態に直面している。

 ファーウェイの通信機器を危険視するトランプ氏の意向に反し、英政府と欧州連合(EU)欧州委員会は1月下旬に相次いで、5Gシステムにファーウェイの機器を限定的に採用することを容認することを決定。EUは、ファーウェイを念頭に「国家が背後にいる企業」の安全保障上のリスクに懸念を示す一方、システムの非中核部分へのファーウェイ製品採用の是非の判断は加盟各国に委ねた。

 ロイター通信によると、すでにメルケル首相が率いるドイツの与党、キリスト教民主同盟(CDU)は、ファーウェイの完全排除を見送る5G政策の方針を策定している。英政府に続き、EUを主導するメルケル政権も「ファーウェイ容認」を打ち出せば、欧州の風向きは一気に容認に傾きかねない。

 ファーウェイは、参入を阻まれている米市場の5G整備に揺さぶりもかけ始めた。2月初め、米国で所有する特許12件を侵害されたとして、米テキサス州の連邦地裁に対し、米通信大手ベライゾン・コミュニケーションズへの賠償請求を提訴。知的財産戦略で「排除」に対抗する姿勢を見せており、ベライゾンを5G基地局の顧客とするサムスンも、ファーウェイの牽制(けんせい)を気にせずにはいられないとみられる。

 今後、サムスンの5G戦略がファーウェイに阻まれれば、輸出促進へ5Gを積極的に後押ししてきた韓国の文在寅政権にも痛手だ。

ブラックスワンの出現

 もっとも、ファーウェイにも死角はある。肺炎を引き起こす新型コロナウイルスの感染拡大という「ブラックスワン(黒い白鳥)」(想定外の異常事態)の出現だ。

 IDCは中国の1~3月期のスマホ出荷を前年同期比30%減と予測、別の米調査会社カナリスは前四半期比で最大50%減と試算しており、両社とも、ウイルス問題が長期化・深刻化すれば落ち込み幅はさらに大きくなる可能性があるとしている。

 新型肺炎のサプライチェーン(供給網)への影響は多くの企業に共通するリスクだが、中国市場はファーウェイの中核の収益基盤だけに打撃は大きい。中国での5Gの展開やスマホの販売計画への影響が見通せない新型肺炎問題に、ファーウェイは勢いをそがれるかもしれない。(経済本部 池田昇)

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